ある意味アグレッシブなやおい論

 29,2006 21:57
タナトスの子供たち―過剰適応の生態学タナトスの子供たち―過剰適応の生態学
中島 梓

筑摩書房 2005-05
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「やおい」とは何か? なぜ「やおい」が少女たち(年齢的に少女ではない人も多いけど…たとえばわたしとか)に支持されるのか?

わたし自身、ハマりつつも常に疑問に感じているところなのだが、これは「やおいの創始者・開拓者」栗本薫こと中島梓のやおいについての評論。うみりすさんのブログを読んで興味を持ち、ちょっと身構えて読み始めたのだが……。

フェミニズムやジェンダー、アダルトチルドレン、多重人格障害、摂食障害、依存症などへどんどん飛び火しながら語られて、なんだか「やおい」はものすごく深淵なことになっていた。いや、深いとは思っていたけど、ここで論述されるそれは、ずいぶんシリアスで深刻な感じだ。

とはいえ、語り口調はわかりやすい。わかりやすいのだが、壮大かつエモーショナルで、読み終わってえらく疲れてしまった。中島氏自身のパワーにあてられたという感じ。この人は自分自身を信頼しており、自分に自信があるんだな――というのも、率直な感想のひとつで、それが人によっては、「上からの目線で物事を見る」などという批評に繋がるんじゃなかろうか。

なぜレイプから始まっても必ずイッて最後にはラブラブなのか、なぜカップリングが成立すると一夫一婦制なのか(つまり、ほとんど浮気しないのか)などなどなどなど、日ごろちょっと引っかかっていたことがズバリ書かれているところには、思わず「やっぱり!」と、膝を打ってしまった。やおいで描かれているセックスを含むラブシーンは、書き手のセックスファンタジーを投影していて、読み手も自分の好きなセックスファンタジーを求めて作品を選ぶ、というのも、そうだろうと思う。

やおいとは、「男なのに」あるいは「男なんだけど」、「君が君自身だから愛している」と主張する作品である――なるほど。「男なのに」「男なんだけど」には、男性理論社会の中で性の商品として扱われる女性が突き付けた、最高の皮肉、つまり「女でさえない」ということが紐づいているらしい。そうなのか…そこまで考えたことはなかった。そんなやおいにハマる少女たちは、少年マンガやアニメのヒーロー=少年になりたかったというのだな……なんだか女の反逆、というか報復みたいな様相だ。わたし個人としては、少年や男になりたいと思ったことはないけど、ほかの人は、案外、そういう願望を持っているものなんだろうか。

男同士、つまり同性同士なのは、同質・同類であることによって、「言わなくてもわかりあえる」ディスコミュニケーションが成り立つから、という論述は新鮮だった。それから、少女マンガやハーレクイン小説は、「恋愛未満」を描いた作品であるという主張も。確かに、おっしゃるとおりかも。

この評論の初出は1998年。その8年後の現在、インターネットはますます普及し、多彩な情報を手軽に手に入れられるという中で、やおいやBLの内容も、取り巻く環境も、変わってきているはずだ。だから、違和感を感じるところもけっこうある。たとえば、中島氏のいうところの「ゴールデン・パターン」(最初に受けが1回イッて、攻めがイク)はまだあるけど、必ずしもそれが主流とはいえなくなってきたんじゃないかな。

てか、今でも「ゴールデン・パターン」一辺倒だったら、多分わたしは、ここまでハマっていない――。

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Tags: 中島梓 腐女子本 オタク論 やおい ジェンダー フェミ?

Comment 2

2006.09.01
Fri
08:24

こんにちは。お久しぶりです。
この本は読んだことがなかったので大変興味深く拝見しました。私は幼い頃から「男の子で生まれてきて欲しかった」と、周囲に言われるほど男子誕生を悲願した家庭に育ちましたので、男子(ヒーロー)になりたかった女性・・のくだりでは、そうなのかもしれない・・と想いました。今は、男子になりたいとは想いませんが、潜在的な何かがあるのかもしれませんね・・。
書き手のセックスファンタジーの投影。そうだ!!と頷きます。読んでくださる方から、もっともっといやらしくして!!といわれることもありますが、それも好きなセックスファンタジーを求めるあまりなのでしょう。
私もゴールデンパターン一辺倒なら、書くほど・はまらなかったと思いました。
長々とすみません。

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2006.09.02
Sat
00:57

lucinda #-

URL

>柊リンゴさま

どうも、こちらこそごぶさたです。
コメント、ありがとうございます。

この本、いろいろ考えさせられるという意味では、おすすめです。時にツッコミを入れたくなることもありますが、どこでツッコミを入れたくなるか、もしかしたら読む人によって違うかもしれません。もし柊さんが読まれたら、ぜひそのあたり、うかがいたいです。

>幼い頃から「男の子で生まれてきて欲しかった」と

そうなんですね……。大人には他意はないのかもしれませんが、子どもにしてみれば、そんなこと言われてもなぁ…と、複雑な気持ちになるんじゃないかなと思います。なんにせよ、「男子誕生万歳」な風潮って、根強いですよねぇ。老後は娘に見て欲しいとか、勝手なことを言うくせに(笑)。

セックスファンタジーの投影、実感されているんですね。なんだか、それを知るのは面白いけど、ちょっとこっぱずかしいような。ははは…はは…。

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