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カタルシス寸止め―「硝子の花束」「しもべと犬」

 03,2008 23:43
BL作品に求めることの一つは、読後の爽快感とか、ジーンと沁み入るような感慨とか、お約束だけどホッとする安心感だとか――つまり、ムリヤリひっくるめてまとめると、「カタルシス」を感じられることじゃないかと思っているのだけど。

立て続けに読んだこの2作は、どうもカタルシスに今一歩届かない、ちょっと不完全燃焼な気持ちに襲われてしまったのだった。

硝子の花束 (幻冬舎ルチル文庫 す 2-4)硝子の花束 (幻冬舎ルチル文庫 す 2-4)
杉原 理生

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(あらすじより)大学生の瑛は、兄の恋人だった脩一と一緒に暮らしている。数年前、兄・雅紀の死に落ち込む脩一と一時期関係を持っていたが、今はお互いそのことには触れられずにいた。昔から脩一を好きだった瑛は、脩一と恋人同士になりたいと願っていたが…。ある日、不思議な均衡を保ちながら暮らす二人の前に、雅紀がかつて家庭教師をしていたという青年・本宮が現れ―。

杉原作品、手に入るものはすべて読んでいるのだけど、この作品も、静謐な雰囲気の中、主役キャラ二人の思いが丁寧にコツコツと積み上げるように描かれていて、そこはさすが杉原作品――と思うのだが。

んー……今回は必要以上にジレジレさせすぎじゃないですか……?

瑛は、子どもの頃から幼なじみの修一が好き。だが修一は瑛の兄で、数年前に亡くなった雅紀の恋人だった。修一は、瑛のことを恋愛対象として見ようとしない。それでも修一をひたむきに想い続ける瑛。

――これがストーリーの中心。でもねぇ、読んでいると、修一の瑛に対するかなりの特別扱いぶりが(その最たるものは、瑛が望むことはすべて受け入れるということ)、なんだかクドく感じられてしまったのだ。そのくせ、「雅紀に申し訳ない」「瑛に償いたい」という思いにとらわれているので、ぐるぐる感倍増。修一、いい加減、瑛のことが好きだと気づきなさいよッ!? と呆れて叱りとばしたくなるような。

瑛は瑛で、兄・雅紀と修一以外にも、兄たちの友人・円城寺や、兄が家庭教師をしていた教え子・本宮からも好意を寄せられているのだが、修一以外は目に入らない様子。

ストーリー自体は完全に、瑛と修一の二人だけの世界なんだけど、そこがうまく調和していないために、雅紀や円城寺や本宮が踊らされている感じ。それが、

――必要以上に展開を焦らせすぎじゃないの?――

と感じさせたのかもしれない。

それにしても瑛、相当可愛らしいんだろうなぁ……と、思う。実は瑛のよさが、今ひとつピンとこなかったのも敗因だった。瑛、少女マンガ風にいえば、「とくに取り得はないのに愛されるヒロイン」風。というか、どうして瑛が男である必要があるのかもわからなかったのが、個人的に痛恨の極み。

ラストは瑛と修一、晴れて想いが通じ合うのだけど、あれほどすれ違って焦らされたんだから、もうちょっと粘りがほしかった――と、わたしの中のカタルシスは、イマイチ足踏み。胸の中で発散不良。うーん、スッキリしない……。

さて、タイトルに引かれたこの作品。
しもべと犬 (幻冬舎ルチル文庫 け 1-3)しもべと犬 (幻冬舎ルチル文庫 け 1-3)
玄上 八絹

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(あらすじより)警視庁の非公式な部署に属する刑事・奥村智重は、人間の細胞から作られた人型の「犬」と呼ばれる生命体・石凪信乃を与えられ、組むことに。自らが傷つけられることなどものともせず、危険の中に飛び込む信乃。「主人」である智重を恋い慕う信乃に、智重は冷たい。時には身体を繋ぎながらも、信乃は智重との距離に心を痛めているのだが…。

ああ、これも大概、焦れったい物語だったなぁ!

過去に傷を持つ智重は、自分を慕う人型の「犬」信乃に冷たくあたる。本当は、信乃のことを愛しく思っているのに。

かつて自分が愛した人間すべてが死んでしまったことが、智重を信乃に冷たく当たらせている所以なのだけど――智重は信乃が愛情不足で壊れそうになっているのを目の当たりにしても、なかなかやさしい一言をかけてやれない。そんな頑なさに思わず、

――智重、そこまでくると、独りよがりにしか見えないんですけど?――

と内心突っ込んでしまった。

ま、その後、信乃が重症で死にかけてから、さすがに素直に愛情を示すようになった智重だけど――その豹変ぶりが、またなぁ……変わりすぎだろ、つーか、人格変わってるだろ、つーか……。すまない、いろいろウルサイ読者で。

そんなわけで、せっかく智重と信乃が素直に愛し合うようになったというのに、わたしときたら、カタルシス不完全燃焼(カタルシスって燃焼するものなんだろうか?)でくすぶっていたのだった。

初読みの玄上さんだけど……独特な文体とリズムを持つ作家さん、だと思う。

「~で。」「~ながら。」「そこに。」などなど、接続詞や文節を句点で区切る文体は、BLを問わず、いろいろな作品で見受けられるけれど、あまりに乱発されているのは個人的に好みじゃない。

そしてナレーションが長いというか、言葉がたくさん詰め込まれていて、読んでいて時々、息切れしそうになるというか。このリズムにノれないのは、もうトシだからなの!? と、自分を叱咤してみたりして。

それでも。
この作品を、読みづらいと思いつつも、クドい毒づきながらも、最後まで読み通してしまったのは。

↑「犬としもべ」風な文体をマネしてみた。

その設定がとてもユニークで惹きつけられたからなのだ。

信乃は人型の「犬」。人工的に作られた生き物だ。彼を作った研究者・一水(いずみ)は人形師と呼ばれている。そういえば志水ゆきさんの「是」にも、人間のような「人形」が登場するよなぁ……。

そしてもう一つ忘れられないのが、信乃の一途さ。

犬なので、信乃は自分の飼い主・智重をひたすら慕い、どんなに冷たくされても耐え忍び、死をも恐れず智重を守ろうとする。その信乃の姿と、冷淡な智重に対する切ない気持ちには、じーんときた。どうしてこんな可愛いコにやさしくできないの、智重!?<また突っ込んでいる。

勝手なことをイロイロいっているが、物語の世界観が最後まで破綻せずに描かれているのは、すごいと思う。この後に読んだ「千流の願い」にも、一水と人形が登場したけど、このモチーフは、玄上さんにとって核のようなものなのかしら。

カタルシスが足りないとか、不完全燃焼とか、好き放題いいつつ、これでもどちらの作家さんも今後の作品に期待しているのだ。次こそは、カタルシスを感じさせてほしいなぁ。

もちろんカタルシスを感じられない云々は、超個人的な感想です。念のため――。
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Tags: 杉原理生 玄上八絹 佐倉ハイジ 竹美家らら 警検麻ヤ 複数レビュー

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