ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

 31,2008 23:40
出演俳優の男性率が高いと、勝手に脳内で誰かと誰かをくっつけて萌え萌えすることが往々にしてあるのだけど。

この作品は男性ばかり出ているにも関わらず、どうしたことか、萌えもやおい脳も発動しなかった。ある意味稀有な作品、かもしれない。

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドゼア・ウィル・ビー・ブラッド
ダニエル・デイ=ルイス, ポール・ダノ, ケヴィン・J・オコナー, キアラン・ハインズ, ポール・トーマス・アンダーソン

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(あらすじより)石油ブームに沸く20世紀初頭のカリフォルニア。鉱山労働者のプレインビュー(ダニエル・デイ=ルイス)は、石油が沸く源泉があるという情報を耳にする。息子(ディロン・フリーシャー)とともに石油採掘事業に乗り出したプレインビューは、異様なまでの欲望で富と権力を手にしていく(シネマトゥデイ)。

ダニエル・デイ=ルイス演じるプレインビューの、誰も信じず、しかし誰をも利用しようとする野心の凄まじさは、見ていて胸焼けしそうになる。なにしろ、“最愛の”息子の聴力が油井の火事で失われたというのに、その息子の利用価値がなくなったとたん、聾唖学校(多分…)に送り込んで“置き去り”にしてしまうほどなのだ。なんという身勝手さ。なんという情け容赦のなさ。
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「家族を大切にしている」と言ってたくせに……。

おまけに最初から最後まで、演じているダニエルの目が完全にイッちゃって怖い。あのヒゲが、なんだかス●ーリンを連想させるような……そんな気がしないでもないような。

しかし、そんなダニエルに拮抗する「イッちゃってる」演技を披露するのが、牧師・イーライを演じるポール・ダノ。「悪魔よ、去れ!」と、カルト宗教の教祖のように絶叫するその姿。そしていついかなるときでも、本当は嫌っているであろうダニエルに、「教会への支援を」と穏やかに要求する白々しい表情。このヒトは、本当にイッてる人かもしれない……と、映画を見ながら何度思っただろう。

――やおい視点的には、この超目立っているダニエルとイーライが絡むか、お互い別のところにハニー(あるいはダーリン)がいて当人同士は対立を続け、時にわかりあう瞬間があると萌え発動なんだよなぁ……と考えたくなるのだが、実際は、まったくといっていいほど、なーんにも、さーっぱり、ちらりとも萌えを感じられなかった。

思えばどちらも「自分は正しい」と強く自己を信じて疑わないキャラクター。他人の意見など聞く耳持たない。自分の利益のためなら、多少強引なことには目をつぶる。そして自分の利益に関係ないなら、他人のことなどどうでもいいと思っている。

これ以上ないほど利己的で、目的のためなら手段を選ばない狡猾さを持つ、ギラギラと野心的なキャラ二人――キャラ的には、けっしてBLにいないはずではないけど、あまりに自己主張が強すぎて、お互いが絡むどころじゃないよなぁ……と思う。それに二人があまりに強烈すぎて、彼ら以外のキャラがかすんじゃったのかもなぁ……だからあれだけ女の匂いがしない作品なのに、萌えややおい視点はぴくりとも動かなかったのかもねぇ……とも思う。

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作品には、不安を誘うような、不吉さを予兆するような不協和音で構成された音楽がずっと流れているのだが、ダニエルとイーライの、まったく調和しない人柄や関係も表現されていたのかも。

さてさて、ダニエル・デイ=ルイスももう51歳らしいのだけど、スクリーンの中の彼は、あまり年齢を感じさせない。アカデミー賞も取ってすっかり演技派俳優として知られているけど、はるか昔出演したこの作品でも、すごく気取ったいけすかない上流階級の男になりきっていたっけね。

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彼の出演作品、実はあんまり見ていないことに気がついた。作品自体は知っているし興味があったはずなのに、どういうわけか見ていない。多分あの、演じる役柄になりきっているダニエルの、ちょっと“やりすぎ感”に腰が引けていたんじゃなかろうか。

この作品も、クィア作品だというのに、残念ながら未見の一つ。

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ダニエルともう一人の主演俳優、ゴードン・ウォーネックが、二人並んで瞳孔が開いてるんじゃないかと思うほど目を見開いて写っているパッケージに、ついつい腰が引けていた若かったわたし――ダニエル、やっぱりなりきって演じていたんだろうなぁ……。

――それにしても、イギリス人の演技派俳優は、もしかして一度はゲイの役を演じなくちゃいけないキマリでもあるのかと勘ぐりたくなるほど、日本でよく知られている俳優のフィルモグラフィにはクィア映画作品が入っている。イギリスという社会は、同性愛者なしでは語れないということの証なんでしょうかね。

でもなぁ……クィア映画を見たいと、時にレンタルショップをさまよい、時にネットをうろついているというのに、どうしてすぐ手の届くところにある「マイ・ビューティフル・ランドレット」に触手が伸びないままなのかしら――ダニエルの“イッちゃってる”演技を予測して、及び腰なのかしらね……。
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Tags: 過去の出演クィア映画

Comment 4

2008.09.01
Mon
21:17

空美 #-

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lucindaさん、こんにちは(*^∀^*)/ 
「マイビューティフルランドレット」わぁぁ~なつかしいです♪
この時代、JUNEにのめり込んでいた私は「アナザーカントリー」や「モーリス」等も見ました。
今でこそゲイを扱うメディアは増えましたが、たぶんあの頃は、これらの映画や海外小説だけが、同性愛の世界を知る手がかりだったのかもしれませんね。

>イギリスという社会は、同性愛者なしでは語れない
かもしれませんよね…。昔、NHKで「バーナビー警部」という、英国のミッドサマーを舞台にしたミステリードラマを放映していたんですが、男同士のベッドシーン(といってもそこはNHK、チラッとです(^_^;))が出てきたときは、さすがイギリス!と思いました。
アガサ・クリスティのドラマもよく見るんですが、やはり同性愛のモチーフをよく使いますよね。
英語ができれば読みたい洋書もあるのですが、日本語さえ使いこなせない私には、夢また夢です。

それではまた遊びに来ます!季節の変わり目、お身体にはお気をつけください。長文失礼しました~

編集 | 返信 | 
2008.09.02
Tue
00:16

lucinda #-

URL

空美さんは「マイビューテフル…」をご覧になってるんですねぇ。よかったですか、よかったですか!? ……いや、いいだろうと思うんだけども。

あのころの美青年ブームを思うと、ほんと、ゲイを扱うメディアが今より少なかったからなのかなぁと思います。

イギリスのテレビドラマは、同性愛のモチーフがさらっと使われていると、どこかで読んだ気がします。そこまでいくのは大変だったのかもしれませんが、「ものすごく特別なこと」という扱いではないところは、すごいなぁと思ってしまいます。

また遊びにいらしてください!

編集 | 返信 | 
2008.09.05
Fri
10:58

月読 #-

URL

ワタシ、これみました。「マイビューティフル・・」
でもあまりに昔に見すぎてよかったのかどうか全然覚えてないのです。
ただ、コインランドリーの奥の部屋だっかなあ?そこでなんだか夢中で抱き合うふたり・・っていうシーンが印象に残ってんですけど、それが確かにあったシーンなのかどうかそれも怪しい・・・。
ただ見てる間中妙に息苦しかった・・・閉塞感?そんなのを感じながら見ていた気がします・・。

編集 | 返信 | 
2008.09.07
Sun
01:45

lucinda #-

URL

月読さん、レスが遅くなってすみません。
「マイ・ビューティフル…」、ご覧になってましたか! いや、そんな気はしてました。
息苦しい、閉塞感、って、なんだか意外な気がしました。でも考えてみれば、この映画のころのイギリスって、不景気で大変だった頃ですもんね……そういうのが影響しているのかなぁ…と思ったことでした。

編集 | 返信 | 

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