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萎えない「記憶喪失」シチュ

 20,2008 14:44
小説でもマンガでも映画でも、わたしが萎える設定というのがあって――それは、

●すでに死んだ人が生き返って、残されていた者と限りある日々をすごす「切ない感動ストーリー」
●主要キャラが余命幾ばくもない難病に冒され、残される者と限りある日々を過ごす「泣ける感動ストーリー」

の2つだ。ま、どっちも「切ない」「泣ける」と謳われがちですな。

どっちも絶対ダメとはいわない。でも、安易に使われているのがわかると、たちまち萎える。だって「最初からズルい」んだもの。お互い思い合っている者同士が、締め切り目前のわずかな日々を一緒に過ごせば、そりゃいちいち気持ちが高ぶるでしょうよ。いってみれば、「感動ストーリー」のためにフライングしてるような、都合がよすぎるような感じがするというかなんというか。同じ生き返るなら、まだしもゾンビ映画の方がマシだよ。

そんな個人的萎え萎え設定基準に準じているのが「記憶喪失」。実は記憶喪失、わたしは「生き返り」や「余命幾ばくもない難病」に比べたら、はるかに好きなんだけど、それでも、安易に主要キャラが記憶喪失に陥ると

――それは都合がよすぎないか?――

と突っ込まずにはいられない。大体、そういう突っ込みをしたくなる作品は、ラストでうまーく記憶が戻ったりするんだよね。

しかし、この2冊の「記憶喪失」設定には萎えなかった。むしろストーリーのスパイスになっていたように思えて、けっこう好き。※ネタバレを含みます。

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事故で記憶を失った達也。唯一執着を憶えたのは、従兄弟の敦だけだったが、敦は達也を冷たくあしらう。寂しくて悲しくて――でも側にいたくて、縋るように敦との同居を続ける達也に、敦は残酷な過去を告げたのだが――。

萩野シロさんの文体は、ちょっとクセがあると思う。意識しているのかどうかはわからないけれど、わりと一文が短めのせいか、時にぶっきらぼうにも感じられることもあり、全体的にざらっとしていてハードボイルドっぽい。

この作品は、記憶を失った達也視点でストーリーが進むのだが、「どうして敦に冷たくあしらわれるのかわからない」「でも敦から離れたくないと思うのはなぜなんだ?」という達也の焦りと不安が、文体にうまくマッチしていたと思う。

そして敦が何を考えているのか、どうして達也に酷くあたるのかが読者にもわからないため、余計にハラハラしたりなんかして。どうやら、敦が達也に告げた「無理やり犯った。ハメ撮りの写真一枚でおまえを従えた」という過去がポイントらしいことはわかるのだが、それが現在の2人にどうつながるのか――「記憶喪失」をうまく使っているなぁ……と感心。

まあ、記憶を失っても敦から離れたがらなかった達也なので、達也は相当、敦に対して強い気持ちを抱いていたんだろうなぁ……とは、読んでいてもわかるのだけど――そういうからくりでしたか。達也が敦を犯って脅してたのね――。

結局、達也の記憶は最後まで戻らない。ただ達也は、記憶を失う前よりは素直に敦への気持ちを告げられるようになっていたので、ストーリーは丸く収まって終結。んー、敦と気持ちが通じてよかったね、達也――。

ところでこの作品、miriam先輩によると、リブレの携帯サイトで配信されているサイドストーリーがあって、それは攻めの敦視点で語られているらしい。「あのサイドストーリーも合わせて読んで、ようやくわかる、って感じなのよ。あれもまとめて一冊にしてほしかったわ」と、miriam先輩。ううう、気になるじゃないですか、そのサイドストーリー! これはリブレの陰謀なのか……!?

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大手飲料メーカーに勤める吉永諒一は、宅配便の誤送がきっかけで同じマンションに住む税理士の沖野司と知りあう。穏やかで芯が強い沖野に好感を持ち親しくなるが、ある日、彼が同性愛者だと知る。戸惑ったものの沖野への好意は変わらず、友人関係を続ける諒一はいつしか友情以上の想いを沖野に抱いている自分に気づき始め――。

この作品、裏表紙のあらすじを読んだだけでは、記憶喪失が絡むとは思えない。「友情以上の想いを沖野に抱いていると気付きながらも、無難な人生を望んでもいる諒一が、すったもんだの末、少しずつ心を開いていくストーリー」かと思いきや――まさか「すったもんだ」の内容が記憶喪失、しかも沖野の記憶喪失だったなんてね。

そう、この作品では、攻めが不慮の事故で記憶喪失になってしまうのだ。それも、ようやく結ばれた直後に。ある意味、ご都合主義っぽい設定ではあるのだけど、記憶喪失で混乱する沖野の様子に妙にリアリティが感じられて、ご都合主義疑惑は消えてしまう。意識が快復したら記憶が子ども時代まで退行していたとか、何かを食べていても「現実感がまったくない」と打ち明けたりとかね。

無難で平凡な人生を望んでいたはずの諒一だけど、沖野への気持ちを自覚し、記憶を失った沖野のために、あれこれと奮闘するところがいい。そして、諒一が奮闘しているからといって、たちどころに沖野がその頑張りに応えてまたすぐに恋人同士に戻るわけじゃないのもいい。こういうところ、難病や大怪我をした家族や恋人のために一緒にリハビリに励む「難病or大怪我格闘ストーリー」(勝手に命名)っぽい。実際、記憶を取り戻すためのあれこれは、リハビリに違いない。

そしてこの作品、ある種、ゲイ解説書(?)っぽく感じられる要素が満載で――たとえば、初めてゲイ(=沖野)に会ったノンケ(=諒一)に、ゲイの恋愛やセックス事情を丁寧に説明したり、BLではお約束の挿入アリなエッチは1回ぐらいしか登場しなかったり――ノンケの、ゲイに対する思い込みや偏見を解きほぐそうとするように、あれこれいろいろ、淡々と描写されているのだ。もしかしたら、これまで読んだ中で一番、リアルゲイに寄り添っているかも。鳩村センセイ、この意図は何だったんでしょうか……!?

この作品でも結局、沖野の記憶は戻らない。ただ、記憶を失っても本能的に諒一に親しみを感じ、諒一の熱意に突き動かされた沖野は、諒一と暮らすことに。幸せにね、沖野、諒一――最後の「じゃんけんで負けた方が荷物を全部運ぶ」というシチュに、ほっこりしてしまった。

キャラが記憶喪失になるというのが唯一ハデな要素で――ま、それがあれば十分かもしれないけど――、それ以外は、エモーショナルになることもなく、わりと日々地味に淡々と過ぎていくこのストーリー。もしかしたら、記憶喪失を入れずにそのまま、「ゲイの沖野が、諒一のゲイへの思い込みを解きほぐす」方向だけでストーリーを進めた方がまとまったのかもしれないけれど、それでもわたしは、かなり好きだな。

どっちの作品も、

失われた記憶は戻らない代わりに、2人の気持ちは新たな絆で結びついてハッピーエンド

なわけだけど、すんなり受け入れられたのは、「記憶喪失」という設定に都合のよさや、過剰な美化を感じずにすんだからだと思う。そう考えると、死人が生き返っても、キャラの命が数ヶ月しかなくても、別にいいんですよ。こっちをうまく騙して、納得させてくれさえすればね――。
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Tags: 萩野シロ 鳩村衣杏 円陣闇丸 櫻井しゅしゅしゅ 連作レビュー

Comment - 8

2008.03.21
Fri
10:31

もよ #tOFPvG2E

URL

はじめまして

どちらも好きなお話だったのでお邪魔しに参りました。
萩野シロさんはどのお話でも受け攻めに関係なく、最後までどちらも男として対等なところが好きです。lucindaさんがおっしゃるように、文章自体が乾いたざらっと感があるので、よけいにそう感じるのでしょうか?

「君の心を眠らせないで」は別カップルのお話が読みたいと期待して待っているのですが。番外編にちょろっと司と諒一のその後を入れて頂ければもう~大満足です。

ところで私もJ庭に行ったのですが、通りすがりの私にも「あれがvivian先輩?!」とわかるように薔薇の花を銜えていて頂きたかったです。次回はぜひアナウンスをお願い致します。

編集 | 返信 | 
2008.03.21
Fri
11:39

森 #KKCKsE6M

URL

ギリギリライン

lucindaさん、こんにちは。
過日はご丁寧にありがとうございました。
初コメントにドキドキです(笑。

さて、記憶喪失ネタ。これ私も嫌いじゃないです。でも確かに微妙なラインなんですよね。
この切なく哀しい萌ツボは、あからさまに見えてしまうと萎えるのはごもっとも。光があってこその影で、影があるからこそ光の渇望なんですよね~。その落差に涙したりしなかったり(笑。
そういった意味では私的には杉原理生著「世界の果て~」は、好きな萌ツボに嵌ってましたね。綺麗すぎる感は否めませんが。苦笑。
萩野さんのはまだ未読なので、早速ゲットしてみたいと思いますvv

編集 | 返信 | 
2008.03.22
Sat
01:43

シシィ #Q81HzREU

URL

記憶喪失!

はじめまして、lucindaさん。
以前よりこちらのブログは愛読させていただいておりましたが
今回大好物の記憶喪失ネタということで、しゃしゃり出てきてしまいました。
私が記憶喪失ネタを大好きなのは、記憶を失っていない側が
試されたり苦悩したりする姿に萌えるからみたいです。
上記2冊はもちろん、他に華藤えれなさんの「シナプスの柩」や
五百香ノエルさんの「ヒューマンレプリカ」もお気に入りです。
どちらも記憶喪失の他に○○○行設定もあるのと
後者はさらにちょっと読む人を選ぶ設定があるので
誰にでもお勧めできるわけではないのですが…

編集 | 返信 | 
2008.03.22
Sat
14:57

lucinda #-

URL

あ、なんか偶然にも初コメの方ばかりのような……。ありがとうございます! 今後ともよろしくです。

>もよさん
はじめまして~。コメントありがとうございます! 萩野作品は、「男」にこだわってる感じが、しますよね。
「君の心を…」の別カプ……って、やっぱりアレですか、 津田と幸央ですかね!?

vivian先輩には、今度は本当にバラの花を銜えて立っていただかなくてはならないかもですねぇ(笑)。恐らく現実は、バラを手にオロオロしてると思いますけどね、ええ(笑)

>森さん
こちらこそ、ありがとうございました! ちょっとバタバタで申し訳ないです。そしてコメントもありがとうございます。
光と影、なるほど……。杉原理生さん、わたし読んだことがないと気付きました。今度要チェックですね。

>シシィさん
コメントありがとうございます!
>記憶を失っていない側が試されたり苦悩したりする姿に萌えるから

なるほどねぇ……。たしかに記憶を失っていない側は、試されてる感、ありますよねぇ。記憶喪失の当事者には、そんなつもりはないでしょうけども。
五百香ノエルさんも、実は読んだことのない作家さんなんです。というか、なんか手を踏ん切りがつかないというか(笑)。読む人を選ぶ設定かぁ……チェ、チェックだけはします…!

編集 | 返信 | 
2008.03.24
Mon
00:56

miriam #SFo5/nok

URL

記憶喪失モノに求めるところって「記憶なんかなくたってオマエじゃなきゃダメだ」という純愛要素なんだと思います。で、結局は記憶喪失モノって最終的にみんな記憶を取り戻しますよね(笑)
萩野さんは文体が特徴的ですよね。不思議な文章のリズムですが大好きです♪

編集 | 返信 | 
2008.03.25
Tue
00:57

lucinda #-

URL

>記憶喪失モノに求めるところって「記憶なんかなくたってオマエじゃなきゃダメだ」という純愛要素

たしかにそうだと思います。今回とりあげた作品は、大なり小なり、その要素があった!…と思ってます。記憶も戻りませんですし。

「文体が独特」という人は数多くいるけど、それを好きかキライか…というのは分かれるところですよね。わたしも萩野さんの文体は、嫌いじゃないです。

編集 | 返信 | 
2008.03.25
Tue
23:15

シシィ #7RorUgFk

URL

五百香ノエルさんは

こんばんは。
レスありがとうございます。

五百香ノエルさんは、作品によって振り幅の大きい作家さんなので
最初に手を出した本がハマるかハマらないかによって
個人の評価が変わってくると思います。
木原音瀬さんを愛読される方が好むような作品群(実際昔はかぶってチェックしてる腐女子友が多かったです)と、
BLの中では世界観のしっかりしたファンタジーやSF、
その他トンデモ系などです。
最初にトンデモ系にあたってしまうと、引いてしまう方もいらっしゃるかも。

編集 | 返信 | 
2008.03.26
Wed
23:02

lucinda #-

URL

へぇぇ。振り幅の大きい作家さんだったんっですね、五百香さん。わたしのイメージは木原音瀬系というか、水原とおる系というか、とにかく「イタくて辛くて苦しくて切なくて」な感じの作風でした。
トンデモ系かぁ……トンデモ界にも、いろいろありますよねぇ……。

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