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作家の書く「作家」

 25,2008 23:19
1~2月にかけて買ったものに、「作家あるいはシナリオライターが攻め」という作品が3つもあった。しかも、どれも個人的「作家買い」リストに入っている作家の新作。

BLに限らないのかもしれないけれど、なぜか似たような設定・ストーリー展開の新作が続くことって、ちょこちょこあるような気がする。しかもこの3作は、攻めの「作家あるいはシナリオライター」が、みんなロクデナシの香りを漂わせているのだった。

ライク・ファーザー・ライク・サン (SHY NOVELS 198)ライク・ファーザー・ライク・サン (SHY NOVELS 198)
英田 サキ ヤマダ サクラコ

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高校3年生の相崎志真は、隣家に暮らす幼馴染み・昂の父親であり、人気脚本家である灰島康征に恋をしている。だが、康征は男女問わず万年入れ食い男のくせに、志真のことはまるで娘(!?)のように可愛がり、いつまでも子供扱い。酔っ払った康征からキスされ喜んだのも束の間、相手を間違えたと謝られてしまう。康征の態度に傷ついた志真は、自分にも男の恋人がいると嘘をついてしまうのだが…。

まずは英田サキさんの作品。康征は38歳。志真とは実に20歳差。あらすじの通り、男女問わず節操ないし(バイってそういうイメージよね……)、息子と暮らしているが家事能力は一切ない。でも、仕事では一定の評価を得ている男。

うーん、志真はどうして康征を好きになっちゃったんだろうねぇ……? いや、全然わからないわけじゃないけど、なんだか18歳にしては包容力と理解力のある志真がまぶしすぎる(そしてヤマダサクラコさんの描く志真がキュートすぎる!)。若さゆえの一途さっていうんですか!? いつか魔法が解けて、康征に愛想が尽きるんじゃないかという、余計な危惧が浮かんだり浮かばなかったり。

逆に康征の、イイ年をして未だ「寂しがりやだけど、べったりした人間関係は苦手。誰とも本気につきあわない」という性格は、妙にリアルな気がしないでもない。こういう30代後半の独身男性(バツイチ含む)、けっこう周りにいる……もしかしたら女性もそうかも……。

年の割りに達観している志真と、年の割りに青臭い康征は、それなりにお似合いのカップルなのかもしれない。いくら男もイケるからって、息子の幼馴染に手を出すのかよ!と、内心激しく突っ込んだけどもね。

しかしこの2人より強烈に印象に残っているのは、康征の元妻で女優の凉香だ。最初からパワフルだったけど、何しろ、ただ一人の息子・昂の下半身の暴走に危機感を抱いて、パイプカットしちゃうのだ。その思い切りは何!? いくら早熟とはいえ、まだローティーンの息子に対して、そこまで割り切れないよなぁ……。でもなぜか憎めない。嫌いになれない。康征が昴に対して父親らしさを発揮しない中、凉香の過激な母親ぶりが際立っている。「姐さん!」って感じで、わたしは彼女のエキセントリックな行動と言動に触れられただけで、この作品が好きになったのだった。バカだけどカワイイ昴も、きっと母親の元で成長するに違いない。

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秀 香穂里

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コンシェルジュとして働く篝貢継(かがりみつぐ)のホテルに、憧れていた人気小説家・守谷雅晴がVIP客として滞在することに。しかしそこへ現れたのは兄の友人で、かつて貢継を散々苛めた古谷有司だった。VIP客であることを振りかざし、古谷の意地の悪さやわがままはどんどんエスカレート。ところが何とかして担当を外れようとした途端、「俺の専属になるなら小説の続きを書く」なんてファン心理を見透かしたような脅しと共に身体を求められ!?

秀香穂里さんの作品。古谷は32歳の人気小説家。しかしメディア嫌いで、年齢も顔も公表していない。いかにも偏屈そう。対する貢継は27歳。貢継、名前にもう、「人のために何かしてあげたい」という気持ちがぎゅうぎゅうに込められているようで、ちょっと笑ってしまった。

古谷のわがまま・傲慢っぷりは、何というか想定内。なぜメイドやハウスキパーではなく、コンシェルジュの貢継に電球の交換や風呂の用意をさせるのかなんて、そりゃ貢継が好きだからだろう……と、読んでいてまるわかり。案外カワイイ奴じゃん、古谷。おまけに、気持ちいいほど大金持ち。自宅の掃除や管理は家政婦や業者に頼んでいるということなので、彼に家事処理能力があるかどうかは不明。

しかし、わたしが「うーん……?」と思ったのは、貢継の仕事への姿勢。念願のコンシェルジュになったにも関わらず、古谷に「まるっきり受け身でいて、相手の要求がわかるわけねえだろ。一歩突っ込んだ仕事をしてみろよ」と言われるまで、客からの問い合わせにだけ対応していたなんて――。仮にも一流ホテルのコンシェルジュなのに、そんなもんなのかよ!?、と内心突っ込んでしまったのだ。まあ、貢継は古谷の指摘に素直に反省して、仕事へのモチベーションを自ら上げていくのだけど。

古谷がツテを使って情報誌で貢継を紹介したり、貢継に脱稿した新作を読ませたりするのが、いかにも作家の恋人の特権、という感じで華々しい。現実感があるかどうかはおいといて、夢があるじゃないですか! そして全体的に、読んでいてストーリーの展開を予想できるものの、投げ出さずに読みきれるのは、秀さんのなせる業。ところで、古谷は高校時代から貢継のことが好きでした、という「ずっと昔から想ってました」オチ、最近の秀作品の傾向なのかしら?

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砂原 糖子

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ホテルマンの多和田はゲイである己に罪悪感を抱き、29歳になるこの年まで恋愛経験がなかった。ある日、親友の石野から紹介で待ち合わせ場所に現れた男に多和田は一目で惹かれるが、実はそれは別人。来られなくなった相手の代わりに伝言を頼まれた石野の従兄弟・新山が、美貌なのに初心な多和田に興味を覚え、ゲイのふりで話を合わせていたのだ……。

最後に、砂原糖子さんの作品。新山は28歳。売れっ子のシナリオライター。はい、彼も家事能力があるとはいえなさそうです。傲慢です。うぶな多和田をさんざんに振り回します。ゲイでもないのに、多和田に興味を覚えてから「仕事に使えるかも…」と、自作品に本当に多和田をモデルにしたゲイを登場させ、おまけにそのドラマをヒットさせてしまった、なんだか「デキるんだろうけどちょっと鬼畜よね」的キャラ。

新山の鬼畜ぶりが浮き立つのも、多和田があまりにゲイであることに罪悪感を感じ、恋愛にはまるで免疫がないのが、読んでいてよーくよーーーくわかるため。しかも、恋愛に腰が引けていても仕事はバリバリこなしている、そのギャップが、ちょっといじらしい。多和田を騙すな! 多和田を傷つけるな!と、読みながら何度そう思ったことか。そして、いくら興味があるとはいえ、その時点では恋愛対象として好きだとは思っていなかった多和田と、興味本位だけでデキるのかよ、新山!……と、内心突っ込んだり。

それでも次第に、新山は多和田に惹かれていく。それがあまりにわかりやすすぎてちょっと笑えるのだが、前編のラスト、新山が多和田の自宅を訪れるシーンは、よかった。傲慢な男の目に涙。多和田はグラッとくるだろうなぁ……。

多和田の初恋の人であり、新山の従兄弟である石野が、もう気持ちいいくらい鈍い男。だからこそ、多和田はずっと友人としてつきあえたのだろうし、新山は、多和田との関係をいつまでも疑うハメになったのだと思う。ある意味、罪な男なのだけど、多和田と新山が幸せに続いていくためのスパイスともいえるかも。


さてさて、こうして偶然にも、立て続けに「作家orシナリオライター」が登場する作品を読んだのだけど、なぜか全員攻めで、部屋が汚い、料理できないなど、生活能力もない(守谷はナゾだけど)。売れっ子なのは、BLなのでお約束のようなものでしょう。とどめは、全員ワガママというか傍若無人というか、とにかく間違っても「いい人」なんかじゃないところが、ちょっと笑える。何しろ、作家が書く「作家」だもの――自らの姿が自嘲的に反映された結果なのか、それとも、

「ああー、ワタシもこのくらい、編集者や周りに、ワガママに振舞いたい!」

という願望の形なのか――ちょっと興味深い。逆に「売れない作家」なんて、BL的に絵になるように書くのは難しいのかなぁ…と思う以前に、きっと書いててウツウツしちゃうんだろうなぁ……と、勝手に勘繰ってしまうのだった。

書く方も夢を見たいよね、なんてね。
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Tags: 英田サキ 秀香穂里 砂原糖子 ヤマダサクラコ 陸裕千景子 高久尚子 複数レビュー

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