ああ、これは何の試練なのでしょうか

 28,2008 20:17
仕事の打ち合わせで向かった客先でのことだ。

「そうそう、知ってます? 『蟹工船』がマンガ化されてるんですよ! あと、『カラマーゾフの兄弟』とか。ほらこれ!」

と、女性スタッフのOさん(20代)が言いながら、ドサドサと文庫本サイズのマンガを積み上げた。それは、イーストプレスから出ている「マンガで読破」シリーズ。前出の2作品以外にも9作品出ているとかで、「結構売れてるらしいんですよ」とOさんの説明を聞きながら、へぇ……とパラパラと中身をめくってみる。でも、「蟹工船」とか「カラマーゾフの兄弟」とか「人間失格」とか、なんだかラインナップが暗いなぁ……シリアスすぎるからマンガにでもして読ませようって狙いなのかしら……などと思っていたら、さらに1冊、「ついでに、はい」と目の前に差し出された本を見て、わたしは固まりそうになった。

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ニッコリ笑っているOさんを呆然と見つめつつ……あの、なぜここでBL?と内心激しく動揺してしまうわたし。もしかして、わたしが腐女子だって、バレてるんでしょうか……? いやいや、周りにオタクが多いことや(というか、ここのスタッフ全員も、なんらかのヲタクかマニアなんだけど)、「コミケに行ったことはある」と話したことはあるものの、ディープにBLにハマっているとは、話してない、はず……記憶が確かであれば……だけど……。

「おー、どれどれ」と、男性のKさん(40代)が手を差し出してページをめくり始め、もう一人、男性のIさん(30代)ものぞきこむ。その様子を、ドキドキと見守りながら、

――ここで黙っていては余計に怪しまれるかも!――

と思い直し、「今度、KさんとIさんのBLを読んだ感想を聞かせてくださいよ!」と精一杯の笑顔で言ってみたのだが。何を思ったのか、「じゃあ…」と、Kさんは本文の冒頭を音読し始め、Iさんは「もっと面白そうなところを読んでよ」などと突っ込むではないか。

Iさん(挿絵を指差しながら)「この絵さぁ……きれいなねーちゃんと2人で歩いているのって、むしろフツーじゃん? なんでそれをこの男は恨めしそうに見てるんだろう…」
わたし「それはBLだから……じゃないでしょうか…」
Kさん(不意に指で何かを数え)「うわ、この絵の男、14頭身だぜ? 頭が小さすぎるって。もうこの世の人間じゃないよなぁ……」
わたし「いや、あの、少女マンガみたいなもの、だと思いますし……」
Oさん「うわ、ち●こでかっ!」
Kさん「14頭身でもち●こはデカいのか…」
わたし「び、BLだし……」

なんだか隠れキリシタンならぬ、隠れ腐女子を暴かれんとされているみたいじゃなかろうか。転ばされようとしてる? もしかしてわたし、転ばされようとしてる!?

でも、まだ読んだことのない作品、作家さんでよかった……これが好きな作家さんや読んだことのある作品だったら、もっとあたふたしていたかもしれない。

とかいいながらも、徹頭徹尾シラを切り通すことはできず、

「まぁ、その、BLも、面白い作品は面白いですよ?ものすごく数が出ているから、当たりハズレはあるみたいですけど」

と、結果的に若干、転んでしまったわたしなのだけど。ああ、ヨワいわたしだ。スパイなんて、死んでもなれないね。拷問にかけられそうになったとたん、なんでも白状するタイプだよ……。

「まぁ、BLは少女マンガみたいなもんだって、いわれてるもんなぁ…」
「ええ。それに不況の出版業界の中で、景気がいいジャンルみたいですしね」
「らしいね。イーストプレスなんか、儲かってるらしいってどこかで聞いたよ」

そうなのか、イーストプレス。しかしなんで、BLも買ったのかなぁ、Oさん…。しかもなんでその作品?――いやいや、そんなことはどうでもいい。あのひとときを振り返るに、冷や汗とあぶら汗が入り混じったイヤな汗がにじんで、背中が寒かった……。笑顔のつもりだったけど、すごく引きつってたかも……。面白がっている3人の笑顔を、目も泳がせながら見ていたかもしれないわ……。

まさか客先でこんなアクシデントに遭遇するとはね。誠に人生、一寸前は闇だ<ちょっと意味が違う

やっぱりあれは、以前のわたしの発言を覚えていてのフリだったのかもしれない。そしてひょっとすると、このブログがバレてるのかもしれない――と、あとからツラツラと考えつつ、中古書店に立ち寄って、懲りずにBLの棚をチェックして帰宅したのだった(少しは懲りろ)

まあね、あそこのみなさんには、別にバレてもいいんですよ。いいけど、でももし、本当にバレてるのなら、今度そうおっしゃってください、Iさん、Kさん、Oさん……!
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Comment 4

2008.01.28
Mon
23:40

4da #5Qkd.16Y

URL

「私もあるある~!」と笑いつつ、嫌な汗を脇に書きつつ読ませて頂きました。
相手にはそんなつもりがなくてもlucindaさんのように『隠れキリシタンならぬ、隠れ腐女子を暴かれんとしているのでは…』と勘ぐってしまうのは、やはり私に後ろめたさがあるからでしょうか?(笑)

私の場合、ビックサイトで開催された○○博に行って来たという話から、「実は以前同人アンソロを作っている出版社に勤めていました」という知り合いのカミングアウトに始まり、「娘のコスプレ衣装を作ってました」という母親の告白という処まで話が発展してしまいました。
もう脇汗どころの話じゃないですよ。。。

自分から話を振ったとは言え、もの凄くテンパってしまい、「ビックサイト」と素直に言えず、「国際展示場」と正式名称を口に出してしまったり。よっぽど怪しいですよね(笑)

編集 | 返信 | 
2008.01.29
Tue
01:30

lucinda #-

URL

やっぱり、なんか後ろめたさがあるんですかねぇ<イヤな汗。ここでスッパリ、腐女子であることをカミングアウトすれば解消されるのか……?(いや、それは違うだろうけど)

4daさんの遭遇されたそのカミングアウト合戦。ノせられて、うっかりカミングアウトしそうで、想像するだけでハラハラします。「言ってもいいのか? よすべきか?」と、ものすごく葛藤しそうです。会場の正式名称を出されるあたり、それが伺えます(笑)。

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2008.01.30
Wed
09:30

みち #akJVOkEc

URL

イヤな汗……ああ、それは私にも覚えのある体験です。隠れ腐女子には「ああ、その話題を私にふらないで! 思わず踊りそうになってしまうから!」というのがあるものですよ。……

実は、イーストプレスという出版社、まったく知らなくて、このたび検索してみました。
で、出てきたトップ画面のBLの「カテゴリ」を見て、「あららら」と思ってしまいました。いや、ここまで臆面もなくやられるとなあ。いやいやいや(苦笑)

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2008.01.31
Thu
17:12

lucinda #-

URL

>「ああ、その話題を私にふらないで! 思わず踊りそうになってしまうから!」

その地雷があることこそ、隠れ腐女子の証といいましょうか…。

カテトリ、いわれてみて初めて気付きました。あらら……(笑) 「特殊産業もの」に興味を抱きましたが、うーむ……極道とかチャイナマフィアに入れるわけにはいかなかったのね……と妙に感心してしまいました。

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