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「1限めはやる気の民法」(よしながふみ) から連想する非モテ

 17,2008 22:04
新装版で出た「1限めはやる気の民法」。昨年、vivian先輩から2巻だけ借りて読み、「あああ、1巻も読みたいーッ!」と思っていたのだけど、ここでようやく、念願が叶ったのだった。

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良家の子女が集う名門・帝能大学で、田宮は藤堂と出会った。現役司法試験合格を目指す田宮と、付属高出身でちゃらい男の見本みたいな藤堂。正反対の二人だが、ちょっと奇妙な友人関係が結ばれ…。

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軽薄(そう)な藤堂と真面目(すぎ)な田宮。衝突しつつも卒業間近、二人はやっと恋人と呼べる関係に。その後、同棲生活を始めた彼らだが……。

いやぁ……いいですね、「やる民」。昨年2巻を読んだ時は、エロが激しめな印象を受けたけど、1巻はそれほどでもないのが意外だった。

でも、自分のセクシャリティに戸惑っている真面目な田宮が、藤堂への気持ちを認識し、彼の気持ちを受け入れるには、このくらい時間はかかるよな……と納得してしまう。

正義感が強く一本筋の通っている男前な田宮だけど、藤堂から「同類だと思ったんだけど」と同性愛指向を指摘されたり、代講の池田先生への気持ちに翻弄されたり、スキャンダルに襲われた藤堂や寺田から、彼らと仲が良いかに思えた友人たちが打算的に離れていく様子を目の当たりにしたりと、まっすぐな気質の田宮にとっては、いっぱいいっぱいな出来事が続く

けれども、そんな田宮のそばには、常に藤堂がいた。うーん、なんてロマンチックなんでしょう。

軽薄そうに見えて、藤堂は田宮の気持ちを思いやり、強引なことはしない。親のスキャンダルのせいで、ゼミ仲間や友達が離れていっても、「彼らの気分も分かるからさ」と達観している。

そして2巻では、理工学部に入り直して自分の人生を自分の足で歩き始める姿に、「男」を感じた。田宮の前ではヘタレでも、弟のヒロちゃんに「本質が乙女」と評されようとも、従業員の足立にうっとおしがられようとも、藤堂、イイ男だよ――。

2巻だけ読んだ時も面白いと思ったけど、1巻を読んでこそ、ツンデレ(しかも”デレ”少なめ!)田宮とヘタレ藤堂の絆の深さがわかるというもの。

そして今回改めて読みながら、藤堂×田宮、「きのう何食べた?」の、シロさんとケンジを思わせるなぁ…と、ふと思った。シロさんも”デレ”少なめなツンデレだし、ケンジもヘタレ気味というか、物腰が柔らかい。

「きのう何食べた?」はBLではないので、受け攻め(てか、タチネコ?)は明確にされていないけど、シロさんが、「俺は”どっちかといえばネコ”ってぐらいのネコだ」と言うシーンがあることだし。

そういえば、デビュー作の「月とサンダル」も、東洋は”デレ”少なめなツンデレ受けだったかもしれない……小林はヘタレ攻めではなかったけど。

そして、やる民でも「月とサンダル」でも、日常生活に必要不可欠な、でもなんだかとってもおいしそうな食事と料理の描写がたびたび描かれるのが、これまた「きのう何食べた?」との共通性を思わせるような。

うーん、ヘタレ攻めはともかく、ツンデレ受けはよしなが作品の原点なのかしら……。

そして、日常の「食」をテーマに据えている「きのう何たべた?」は、対談集「あのひととここだけのおしゃべり」でよしながさんが発言していた、「いろんな人がいる中でのゲイを描くのが好き」(※本が現在手元にないので正確ではありません)という萌えの実現でもあるということかしら――。

ところでやる民2巻には、藤堂の弟・ヒロちゃんこと宏明が登場し、主役の藤堂×田宮を食いそうな勢いで活躍するのも見逃せない。
「フケ専」のヒロちゃんの「つくづく好みのタイプ」・伊藤先生との関係も微笑ましいし、高校時代の陸上部の先輩・佐々木との関係を描いた「彼は美しい人だった」は、10代特有の痛ましさというか残酷さ、もどかしさがうまく描かれているような気がして、かなり印象深い。

しかし今回、ある意味一番印象に残ったのは、伊藤先生が田宮と話していて

「何かかなりセックスの虜って感じ……」

と恥ずかしそうに顔を覆うシーン。先日、友人・Jくんが話していたことを思い出してしまったのだ。

Jくんはコンピュータ系のオタクだが、とっくの昔に結婚している人づきあいのうまいしっかり者。

その彼がよく飲みに行くお店は、「非モテ&童貞な男の溜まり場」なのだそうで、Jくんによると、「モテない男はさー、なんで自分がモテないかっていう理由や原因を分析して追及して、あーだこーだと議論したりするだろ? そんなことしてるからモテないんだっつーのが、わかってないんだよな」ということらしい。

「この前、話してて思わず笑ったのがさ。初めてセックスを経験して『こんなに気持ちイイのは、なんかどっかおかしいんじゃないか』って、本気で心配して真剣に議論してるわけよ。なんつーか、そういうバカバカしさ加減が、男だなぁって、思ったわけ」

――なんだかわかるような気がする。音楽にしろ車にしろコンピュータにしろ、とにかくジャンルは何であれ、好きなものや興味があるものに対して、男性は女性に比べて深く、狭く、徹底的にマニアック突き詰めていくような気が、以前からしていた。Jくんの言う「モテない理由を分析・追及して議論する」傾向は、そんなマニアックさに連なっているようにも思える。

やる民の伊藤先生が童貞だったかどうかはわからないけど(でも童貞確率が高そうだ…)、「セックスの虜って感じ……」と、悩ましげに告白するシーンは、「ヒロちゃんとは恋愛関係じゃないのに(この時点ではそう思い込んでいる)、カレとのセックスがイイのってマズいんじゃなかろうか」という、わからないでもないけどちょっぴりバカバカしくもカワイイ堂々巡りな物思いに見え、それが、Jくんの言葉を連想させたのだった。

伊藤先生、ヒロちゃんには愛されてるから、全然ダイジョウブですよ!――と背中を叩いてあげたい。

それにしても、Jくんの話を聞きながら思ったことは、童貞であることやセックスのことなど、男の人はわりとあっけらかんと自分の体験を絡めて話すよなぁ…ということ。そりゃ、深刻に悩んでいれば話すどころじゃないかもしれないけど、女の人に比べるとその辺り、かなり大らかな感じはする。

ちょっと前の童貞ブームなんて、わりとネタ的・自虐的に、時として真剣に童貞であることを論じてたけど、これが処女の場合だったら、わけのわからない深刻度が増大して、あんなブームにはならないに違いない。――そんなことを言うと、Jくんはうなずきながら言ったのだった。

「オレが前から言ってることなんだけど、男のハダカは笑えるけど、女のハダカは笑えない。エロいって思っちゃうもん。そのあたりも関係してるんじゃないかな?」

――なるほどねぇ……。しかし、Jくん行きつけのお店に集まるという、「非モテ&童貞な男」たちは、結局、どうしてモテないのか結論は出てるのかしら?

「そんなわけないじゃん(笑)。だからいつもモテない原因を議論してて、それゆえにモテないっていう負のスパイラルをグルグルしてんだからさ。でも実はヤツらはけっこう見た目に気を遣ってて、服とか顔とか、そんなに悪いわけじゃないんだよね。ほら、いかにもモテなさそうなヤツっているじゃん? どーでもよさそうな服を着て、デカいリュック背負って――っていう感じのヤツ。外見が”いかにも”って感じじゃないから、オレもあの空間で居心地のよさを感じてるのかもしれない」

「ふーん……。けど、見た目が悪くないのにモテないって……? もしかしてその人たち、オタクとか?」

「んー、ま、確かにオタクかもな」

――その時、わたしの頭に咄嗟に閃いたのは、以前、先輩ズがしみじみと話していた「わたしたちのこの趣味を隠して誰かとつきあうってのはもうムリ。だったら、今度つきあう相手はオタクならいいと思わない? 好きなモノへのこだわりについては、お互い理解できるだろうし」という言葉だった。

こ、これはJくんに、非モテなオタクらしい彼らとの合コンのアレンジを、相談した方がいいかしら!?

しかしそれを相談するには、このわたしこそがオタクであり腐女子であることを打ち明けずにいることは難しいだろう……。別にカミングアウトしてもいいや…と思うそばから、Jくんの腐女子に対するコメントにどこか辛辣な響きが含まれているような気がして(あくまでも気がしているだけ)、怯んでしまう。……うーん、合コンについては、ちょっと様子をうかがってから持ち出そう――。

ヘタレだなぁ、わたし――。
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Tags: よしながふみ 非モテ

Comment 8

2008.01.18
Fri
13:50

月読 #-

URL

いつも思うんですが、lucindaさんの記事にどうしてこんなにうんうんと頷いちゃうワタシなんでしょ。(笑)
ものすごく頷いて読んでました。
「やる民」についてもそうだし、
<童貞であることやセックスのことなど、男の人はわりとあっけらかんと自分の体験を絡めて話すよなぁ
↑この部分とか、頷きまくっていました。
ワタシなんかも実は男の人のようにあっけらかんと実体験交えて話すことが多くて、女友達には引かれることもしばしばあります。
でもね、どんな話をするときでも、こちらの伝えたい気持ちに共感してほしいなあ~と思うときには食か性に例えたり交えたりするとすごく効率よくわかってもらえるんだよなあ~とワタシは思うのね。女友達がえ~と引くと素振りをする時思うのは、「女ってイキモノはこういう時引くべき態度が正しい」と思っているんだな~と感じます。童貞君の自虐ネタなんてまさに男間で、「オレだけじゃない感」を共有するものすごく手軽で有効なコミニュケーション手段では?なんて思いました。
だからそのお店に集まる非モテ君たちはけっこう楽しいんじゃないかしらん?とうらやましく思う月読でした。

編集 | 返信 | 
2008.01.18
Fri
15:52

lucinda #-

URL

頷いて下さって、大変光栄です(笑)。わたしも、月読さんの記事に頷くこと、多々アリなんですが、ああ、コメントしなくちゃ意味がない……。

それはさておき、月読さんは、あっけらかんとセックスについて話されるタイプなんですね。別に話したっていいんだけど……なんだろう、自分を含めて、時になぜか引く素振りをすることがあるなぁ……と改めて思いました。どこかで、セックスについて話すなんてはしたないと思うべき、という気持ちとともに、そんなことを話せる人への嫉妬と羨望があるからかも…フクザツです。

>こちらの伝えたい気持ちに共感してほしいなあ~と思うときには食か性に例えたり交えたりするとすごく効率よくわかってもらえるんだよなあ

鋭い! さすがです。童貞君の自虐ネタ=「オレだけじゃない感」の共有は、Jくんの話を聞いてても楽しそうでしたよ(笑)。けど、女性がその域まで達するのは、遠そうなきがします。……難しいなぁ…。

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2008.01.20
Sun
01:58

もと #4pDgvQA2

URL

モテたいという話はよく聞くけど、じゃあその人には好きな人はいるのか?って聞くといなかったりしませんか?
「あ~、どこでもいいから大学に入りたい」じゃ上手くいかないのと同じで、「○○大学の××学部に入りたい!」ってのがあれば、対策も練れると思うんだけど・・・漠然ともてるのは、やはり稀な才能なんじゃないかなぁと思いますね~。
って、若い頃は「うっとおしいほどもててみたいもんだなぁ」なんて考えてしまう時もありますよね(笑)

そういや以前、友達が、高校の時の同級生で、結婚願望の強い男の人が「おれ、『らいおんハート』の歌詞にスゲー感動したよ!」と興奮気味に訴えてきたから、「だから貴様は結婚できねーんだ!」とぺしゃっと言っちゃったと言ってたな(^^;
でも、友達の言い分は正しいと思う(笑)

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2008.01.20
Sun
16:10

みち #akJVOkEc

URL

今日、密林から玉手箱が届いて、中に入ってた「やる民」1・2を、今、読み終えたところなんですよ…(新装版が出たのをこの記事で初めて知りました、ありがとうございます!)(…ついでに言うと、コレを読んでしまったので、もう商業でのよしなが作品はコンプしてしまったの…もう読むものがない……涙)
あああ! よかったよーlucindaさんっ、私は今、涙ちょちょ切れていますよー(感涙!)
よしなが作品の男たちが麗しいのはもう言うまでもないのだけど、田宮くんが自分のセクシャリティを認めていく過程、藤堂がそこにいつもいてくれるような関係性、それと、「彼は美しい人だった」の綺麗な悲しい読後感ときたら……ああ神様、私は日本の腐女子として生まれて本当に幸せ! そして、この漫画を読める楽しさを味わえて幸せ!(うっううっ感涙)

(すみません、今、興奮してて……・笑)





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2008.01.20
Sun
21:57

相沢 #-

URL

ジュリスト

やる民いいですよね~
lucindaさんの記事今回も読み応えありました。

でもまだうかつにも新装版を手に入れていないんですよ。

私はやる民を読んだあと、しばらくやる民病から抜けられず、イトキューの論文が載ったという法曹界の雑誌「ジュリスト」を某書店で探し求めました。
ジュリストの表紙をよしながさんが描いてくれたらいいなと当時私のブログにコメントしてくれたおかたがいまして、しばらく私もジュリストの表紙をよしながさんが描いてくれたら・・・なんてアホな妄想をしておりました。

貴明おにーちゃまと田宮は相性ぴったりで、なんつーか この先ゆるぎないような気がしますが
ヒロちゃんとイトキューはなんかどうにもあぶなっかしくて心配なんですよね。
二人ともけっこう繊細だからな・・・

「彼は美しい人だった」は私も大好きで、よく読み返します。
私みたいな年寄りおねえさんは佐々木正彦に共感するんだなこれが。






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2008.01.20
Sun
22:26

lucinda #-

URL

>もとさん
「漠然とモテるのは才能」、これ、すごーく頷いてしまいました。かつて、わたしの周りにいた女友達は尋常じゃなくモテて……もちろん、彼女は魅力的でしたが、あれが彼女の才能だったのかも……なんてね。
「らいおんハート」の歌詞のエピソード、爆笑です。うーん、鋭いなぁ、お友達!

>みちさん
あー、その感動、わかりますね。それはやる民を読んだ直後のわたしの感動ですもん。しばらくはその感動で飯が食えそうなというか(食えないけど)。
この作品は、なんだかものすごく心理描写が丁寧に辿られているような気がします。

>相沢さん
新装版を手に入れられていないとは……! いや、ブログに出てこないなぁと思っていたのですが、ジュリストまで探し求められていたなんて! なんか久々に聞きましたよ、ジュリスト……。

>ヒロちゃんとイトキューはなんかどうにもあぶなっかしくて心配
ああ、いわれて見ればたしかにそんな気が。相手の気持ちを思い合いすぎて、消滅しそうな危険性も感じられるような。
佐々木の葛藤と矛盾と屈折こそ、オトナじゃないとわからないと思えます…。

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2008.01.22
Tue
13:46

miriam #SFo5/nok

URL

女子と男子の違い

実は「やる民」の初版当初は全くその良さがわからずさっさと売ってしまっていたのですが、今読むとまた当時とは違う感想を持ちました。うーん、大人になったのかなあ(笑)

男子と女子の違いといえば、昔何かの本で
男子→性的なものを共有したい。すげえ!オレこんなのしちゃったよ的なことを好奇心的に持っている反面、身体的なものは具体的には比べたくない(つまるところ局所比べはしたくなしい(笑))

女子→性的なものは隠すというのが慣習的にあるので男性ほどオープンに話さないけど、身体的(胸のサイズとか)はわりとオープン。

と、あるのを読んで妙に納得しました。
男子は体験談は共有したいけど、アソコを具体的に比べたくないのはきっと男性的な象徴を否定されたくないからでしょうね。女子は胸小さくたってそこまでコンプレックス持たない気がします。

非モテヲタ男子くん達とぜひ合コンしたいですhttp://blog70.fc2.com/image/icon/i/F961.gif" alt="" width="12" height="12">(笑)

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2008.01.22
Tue
23:04

lucinda #-

URL

昔ピンとこなかったものが、今はそうでもないっての、ありますよね。その逆もありますけど。
お話の男女の違い、なるほどなぁって感じです。男子のアソコに比べて、女子の胸はけっこうおおっぴらに話されるのは、たしかにありますねぇ。でも女子の胸って、男子がことさらあげつらうので女子も気になっている、という部分、あるような気がします。あと、出産・育児に関わるので、わりとおおっぴらに話せる雰囲気もあるかも。
非モテヲタ男子との合コン、タイミングを見計らって提案してみますね(笑)

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