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真剣なのにトンチキな香り

 23,2008 18:50
パチンコにハマっている上司を持つわたしだが、馬に狂っている知人もちょこちょこ周りにいる。一口馬主として競馬場はもちろん、時に牧場まで「我が子」を見に行く人、北海道や沖縄などの在来馬を追いかける人、ただただ競馬に入れあげている人――。

馬好きな知人から馬のすばらしさを聞かされているせいか、この作品を読みながら、いろいろな思いが頭を駆け巡って大変だった。

傲慢君主の専属契約 (B-BOY NOVELS)傲慢君主の専属契約 (B-BOY NOVELS)
高尾 理一

リブレ出版 2007-12
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美貌のホースセラピスト・湊は、アメリカ屈指の大富豪・ジョッシュから、パロミノ種の馬・ゴルディのセラピーを依頼され、彼の牧場を訪れる。そこで湊は彼の傲慢な口ぶりに反発を覚えるが、専属契約をたてに半ば無理やり同居させられることに。しかしたまに見せられるジョッシュの優しさに、徐々に惹きつけられ、気づくと身も心も甘い悦楽に蕩かされて―。だが、次第に金や契約で束縛したがるジョッシュの愛が見えなくなり……!?

ストーリー自体もしっかりしていて楽しめたのだけど、何よりわたしの心を鷲掴みにしたのは、湊に向けられるゴルディや動物たちの感情。人間不信に陥っている誇り高いゴルディの哀れさ、いじらしさときたら……! ゴルディが湊にすがって「どこにもいかないで」と噛むシーンや、湊がかつて日本で感じたという、競走馬が廃用の恐怖に怯える感情に触れられているシーンは、ちょっと泣きそうになってしまった。食肉用の牛や豚も、屠畜のために移送される時は激しく抵抗すると聞いたことがある。とすれば、馬だって怯えて抵抗するのは容易に想像できるわけで――。

――まさか、BLで屠畜や馬の感情を想像させられるなんて思わなかった。恐るべし、BL。

ちなみに、パロミノ種の馬はこんな感じ。
5079565.jpg

日本では「月毛」と称されているらしい。ステキな字面だ…。

ところで、この作品を読んでいて感心したのは、

●舞台がアメリカのせいかもしれないが、ジョッシュと、湊の師匠・メアリーの会話が確かにアメリカ人チック
●なんだかエロがいやらしくて濃い。

ということだった。アメリカ人チックというのは、まあ、超個人的な感覚なのだけど、理詰めで進んでいく感じというか、英文翻訳されたような仰々しい硬さが感じられるというか……。深夜の通販番組や海外ドラマの、外国人の吹き替えを聞いている感じ、といってもいいかもしれない。ともかく、どういうわけか読んでいて「あ、この人たちはアメリカ人ね」と感じてしまったのだ。

そしてジョッシュは、湊に初めてキスをした時も理屈っぽい。偶然、湊が感じるところを触ってしまったのがきっかけとはいえ、「きみが、してほしそうな顔をしていたから」などとしれっと言うところなんて、なんですかその責任転嫁!? 訴訟で有利に立つための詭弁!? と、湊でなくても思ってしまいそうになったのはわたしだけかしら。それともこれは、攻めの新しい口説き方なのかしら――。

とはいえ、ジョッシュと湊のエロシーンは濃密な感じ。別にエロシーンが特別多いわけでもないし、ページが特に多いわけでもないのだけど、密度が濃いというか、ジョッシュが湊と初めて結ばれた時に言う「……ふ、俺のものだ、ミナト」などのセリフが絶妙というか――久々に「うわーっ」と思ってしまったのだった。そして、ジョッシュの傲慢さ、湊の一生懸命さが、エロシーンでさえもしっかり伝わってくるような。

――うーん、高尾理一さん、前から興味はあったけど、いいかも……。

さっそく作家買いのムシが動き出して次に手を出したのがこれ。方々のレビューを読んで、興味を持っていたので――。

龍と仔猫 (ショコラノベルス)龍と仔猫 (ショコラノベルス)
高尾 理一 櫻井 しゅしゅしゅ

心交社 2006-09-09
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母を亡くし、姉と共に健気に生きる芳丘雅人は、顔も知らぬ父が極道だったせいでヤクザが大嫌い。ある日、雅人は姉の働く店で姉のヒモであるチンピラと揉めているところを黒志会の会長・志堂嵩瑛に救われる。だが翌日、志堂に呼び出された雅人は姉が借金で破滅寸前だと知らされ、肩代わりを条件に「志堂が飽きるまで」彼の愛人としてお務めすることに。早く捨てられたいと願っていた雅人だが、無垢な身体に教え込まれる濃密な行為と、志堂の意外な優しさに心は揺れ始め―。

期待に違わず、最後まで楽しく読めた。そしてやっぱりエロかった。姉の借金の肩代わりをタテに、「俺のものだ」とあたりかまわず雅人への独占欲を示す志堂。最初は抵抗していたのに、志堂を慕うようになる雅人。ダメな男にヨワい愛されたがりの姉や、雅人の父であるヤクザの竹内に振り回されて、2人の絆はますます強まってしまうのがおかしくも微笑ましい。

――そう、読んでいて、何かおかしくて笑えるのだ。どこか滑稽。アラスカさんのレビューにあるように、18も年下の可愛い愛人を手に入れて舞い上がっているおっさん・志堂の様子が笑えるのだろうか……と思っていたのだが、この作品の同人誌を読んで、志堂にベタ惚れな雅人の真面目な様子も笑えるのだと気がついた。

P1200088.jpg

同人誌は現在、5冊まで発行されているけど、手元にあるのは4冊。売り切れの2冊目をどこかで手に入れたい!

父親や姉のことで志堂に迷惑をかけているとか、セックスが下手だとかで真剣に悩んだり、志堂への恩を返さなくてはと必死になったりと、雅人はいたって真面目で本気なのに、それが裏目に出まくって、結果的にストーリー全体にトンチキなムードが漂っているのだ。キャラたちは真剣そのものなのに読んでいると笑えるトンチキでバカバカしいこの感じ――去年ガッツリハマった「誓約の移り香」のチカ×南に似ている気がする。でもチカ×南の場合、南はチカを愛しているものの、SMの御主人様であるチカへの疑問もちょっとだけ抱えている(でも結局流されている)のに対し、雅人の場合、嫌悪していたヤクザだというのに、「好き好き志堂さん!」状態ですからね。同人誌では、雅人の志堂への思いがあふれまくっており、そしてもちろん、志堂の雅人へのメロメロぶりも健在で、ただのバカップルとしかいいようがない。――ゲンナリせずに、爆笑しながら読めるんだけども。

BLにおいて、攻めが受けを盲目的に愛するのはお約束であり、「言葉攻め」という言葉もあるぐらい、受けへの愛情あふれるセリフが垂れ流されているけど、受けが攻めを盲目的に愛している様子は、感情は細かく追われていても、セリフは――特にエロシーン以外では、暗黙の了解とばかりにあまり書かれていない気がする。その点雅人は、いつでもどこでも、志堂を想う気持ちを主張していますから。カワイイんだけど、ちょっとこのコは大丈夫なのかと心配しないでもない、素直で純粋な雅人なのだった。

チカ×南にしても、志堂×雅人にしても、「キャラたちもストーリーも至極真面目なのに、全体の雰囲気が滑稽でトンチキ」というのは、わたしの萌えツボの一つであることは間違いない。初めからコメディテイストで書かれている、というのとはちょっと違うんだよなぁ……意図せずしてコメディっぽくなってしまったというか、もしくは作者がコメディのつもりで書いていることが、モロにわからない感じがいいというか――。

そうそう、「傲慢君主の…」の中で、ジョッシュが毎朝、寝起きの悪い湊の乳首を吸って起こす、というくだりがあるのだけど、ここを読んだ時も思わずフキ出したっけね。どこにトンチキの地雷が埋め込まれているかわからない感じが、たまりません。

そんなわけで、昨年末からどっぷりハマり中の高尾理一作品。今年から作家買いの一人に文句なく仲間入りなのだった。
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Tags: 高尾理一 実相寺紫子 櫻井しゅしゅしゅ 秀香穂里 真剣トンチキ 馬ものBL 警検麻ヤ 複数レビュー

Comment 5

2008.01.24
Thu
12:11

もと #4pDgvQA2

URL

色付きの文字へぇ~~! なんやら面白そうですね! 感想だけでかなり読みたくなりました。
特に馬の方(馬の方って・・・)が気になりますね。
それにしても、これから作家買いしようかな?とかいいつつ、もうそんなの同人誌買ってるなんて、既にかなりはまってませんか?(笑)
ところで、外人はやっぱエッチすごいらしい。
昔、知り合いのお姉ちゃんちにステイしてたアメリカ人とその彼氏(休暇に追って来た)が、ラブホに行きたいというので、お姉ちゃんが送迎(!)したんですが、迎えに行った時、ラブホの人に「この人達の声がうるさすぎて、他所から苦情が来たんですよ!」と怒られちゃったんだって(^^;
まったくどんだけ~!(笑)

編集 | 返信 | 
2008.01.24
Thu
20:13

やけっと #-

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トンチキ風味がツボなのでした

いつもは読ませていただくばかりなのですが、今日はひとことお礼を申し上げたいと思って書き込ませていただきました。

私もつい最近「龍と仔猫」を読み、かな~りツボにはまって同人誌も買い揃えて読んでみたのですが、ツボへのはまり具合が、なんとなく過去にも似たような経験をしたような気がするのに、どうしても思い出せなかったのです・・・・。

今日、lucindaさんの記事を拝見してナゾが解けました!!そうです!チカ×南でドツボにはまったのと同じパターンだったのです!!一見マトモ(じゃないかな・・・?)な話に見える割に、中身はしっかりトンチキなんですよね!最後まで読める、読後感のよいトンチキなのです!

ああ・・・すっきりしました。ありがとうございました!早速、傲慢君主の~、も読んでみようと思います。

編集 | 返信 | 
2008.01.25
Fri
01:00

lucinda #-

URL

>もとさん
我ながら素早い行動ですね>同人誌購入。って、実は、たまたま馬の作品を冬コミ前に読んだので、同人誌購入が間に合ったというだけなんです。ははは。
馬の方、オススメですよ~。あ、でもこっちは、トンチキではないですよ! 乳首を吸って起こすところは、トンチキだけど(笑)。

外国人は、行為はともかく、声を抑えないっていう印象はありますね。鍼灸師の知り合いも、外国人の患者さんは声をめちゃくちゃ出すとか話してました。それだけでも「激しい」イメージはあるかもですねぇ。それにしてもその外国人のカップル……ほんとに、どんだけ~!

>やけっとさん
お礼だなんて、そんな!
でも、ちょっと似てますよね、チカ×南と、雅人×志堂。やけっとさんも、チカ×南にハマってらっしゃったんですね(笑)。そうそう、読後感のよいトンチキ。いいですよねぇ。

専制君主…の方は、そんなトンチキじゃないのですが、私は楽しんで読めました。よければぜひ。これに懲りず、またお気軽にコメントください。

編集 | 返信 | 
2008.01.25
Fri
06:01

アラスカ #JalddpaA

URL

ファンが増えて嬉しいです

パロミノってこういう馬だったのですね!。品の良さを感じます。
高尾さんを読み出したきっかけは、競馬BLがあると聞いたからです。やはり作者が好きなものは筆がのるようで、馬とオヤジBLに当りが多い気がします。

 >なんだかエロがいやらしくて濃い
そうそう!。なんかこう、ねちっこいの!。

編集 | 返信 | 
2008.01.25
Fri
20:24

lucinda #-

URL

高尾さんの馬系の作品、アラスカさんの記事を参考に書店などで探しているのですが、まだ見つかりません……でも根気よく探してまいります!

>>なんだかエロがいやらしくて濃い
>そうそう!。なんかこう、ねちっこいの!。
ああ、アラスカさんも、そう思われてたんですね。ですよね?ですよね!?

編集 | 返信 | 

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