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女の敵は女なのか…

 04,2007 23:32
出先の中古書店で見つけた、紺野けい子さんの非BL作品。ああ、紺野さんの絵もストーリーも好きなんだよね…と思い、迷わず買ってしまった。

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青年実業家の愛人でありホステスの思いがけない恋、派遣先の高校生の息子にときめいてしまう家政婦(でも年は28)、二股をかけられていたカレシにふられホストを呼んでしまう女子大生など、いろいろな主人公が出てくる短編集。主人公は女性。そして、どれも男と女のラブストーリー。

面白かった。面白かったけど――この胸に残る、未消化の、それも永遠に消化されそうにないスッキリしないものは何なのか――。いや、「何なのか」とかうそぶかなくてもちゃんとわかっている。読みながら、「どうなんでしょう、こういう女…」と思っちゃったからだ。

たとえば、妻子ある青年実業家の愛人かつホステスの麻子は、誰が見ても「イイ男」の実業家・牧瀬と、牧瀬の会社の従業員・ガクの間で気持ちが揺れる。しかしその揺れ方が、単純に「牧瀬もガクもどっちも好き」というものではない。「牧瀬にはお手当をもらっているし恩もあるし…」「ガクは結婚を考えているカノジョがいるし…」と、打算的なのだ。ここ、大変現実的でリアルなんだろうけど……読んでいると、「うーん、なんかちょっとヤな女だな、麻子…」と思ってしまう。

読者がそう思うことはきっと作者の思うツボで、その証拠に、麻子のホステス仲間が、「麻子ちゃんってなんか余裕あるの。いい男に慣れてるし、自分が愛されるのにも慣れちゃってるでしょ。あたしも男に愛されて当然! て顔してみたいですよ」と、笑顔でチクリと言うシーンがある。あ、まさにそうね…と思って読み進めると、今度は麻子、その批判を思い返して、

「愛されることに慣れた女か…想像するだにゴーマンでヤな女だわ」と自嘲するのだ。

――ああ、ここで「それが何よ?」的な開き直りをされたなら、きっとマンガ的モテキャラの清々しい傲慢ぶり、ある意味ファンタジー設定ですんだのかもしれないのに……その自嘲が、これまたいい人ぶってる感じがして、ますますます、なんだかなぁ、麻子…と思ってしまうのだった。もちろん、他人にそんなことを言われるまで、自分が客観的にどう他人の目に映るかを麻子自身気付かないところが、「余裕」なところなんだけども。

こういう心理的に深い、時に皮肉っぽいセリフやモノローグ、展開は、紺野さんの作品の特徴だと思う。でもBLより若干辛めなのは気のせいですか。

高校生男子にヨロめく家政婦もどこか小ズルイというか打算的。ゆえにちょっとリアルで、よってイタい。片思いの上司に果敢にアタックするOLや、カレシの昔好きだった女性に対抗意識を持つ女子大生は、けなげといえるかもしれないけど、その意気込みがこれまたイタい。

――仮にこのイタいキャラたちが男で、これがBLだったらどうなのか。やっぱりイタいのか…と考えてみたが、多分ソレが男だというだけで、イタさは半分以下に減るような気がした。ゲンキンだな。でも女だと、知らず知らずのうちにキャラたちに同調しようとしてしまうみたい。批判的に見てしまうのは、嫉妬や羨望もあるかもしれないけど、やっぱり同性は一番キビしいということなのか、それとも認めるのはシャクだけど、女の敵は女ってことなのか…。

ちなみにわたしがこの作品の中でいいなと思った話は、1巻の、フラレてホストを呼んでしまう女子大生と、2巻のホステスと店の厨房担当者(調理師?)との束の間の関係を描いた話。よくよく冷静に見てみると、女子大生とホストは

女子大生は同じ大学の学生だったホストに惹かれてしまい、金を払うことで関係を続けるけども実はホストは前から女子大生が気になってました!

というオチがついているし、ホステスと調理師は、

ホステスはママの男だというウワサの調理師(生来の女たらしかも)と、興味本位で、しかも金をもらって関係してしまうけどいつの間にかちょっと調理師に惹かれてしまい、挙げ句2人の関係を問いただしたママに嫉妬をむき出ししてたしなめられて退散

と、小娘の敗北的ストーリーだし、どちらも打算度が少なめかも。しれない。

――ああ、わたしが少なくともマンガの恋愛モノで、どれだけファンタジーを求めているのかを思い知らされたような気がする。それともなんだか弱っているから、余計にファンタジーを追い求めているのか――でも、当分の間は、男女モノよりはBLで楽しく過ごしていくに違いないと思ったのだった。
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Tags: 紺野けい子 フェミ?

Comment 4

2007.12.05
Wed
12:07

もと #4pDgvQA2

URL

この2冊は私も持ってます。
そおかぁ、そういう視点で見る手もあるのかと思いました。
私はこれも、BL読むのと同じレベルで読んでましたね。
自分自身がもう、こういう立場になる事が多分ないと思って読んでるから突き放して読めたのかな。
ま、冒頭のホステス嬢の話は、結構キャラはみんなそれぞれ好きなんだけど、奥さんの立場になっちゃったから、オイオイオイオイと思いましたがね(笑)
あと、家政婦の話だと母に同調(^^;
視点が違うと、同調する立場も違うのかも。

この人もだけど、水城せとなさんとか、BLでいいもの描く人は観察眼が優れてるんでしょうね。
二人とも女子に対する描写によーしゃねーものを感じますよ(^^;
一番見たくない女のサガを見せられると言うか。
だからBLやってるのか?と思ったり。
少し優しい印象なのはよしながふみさんかな。
しかし、優しいように見せて実は結構・・・な時もあるから、やはりよーしゃねーのかなぁ?

編集 | 返信 | 
2007.12.05
Wed
20:49

lucinda #-

URL

ああ、人によって視点って違うんだなぁ…!
奥さんの立場とか母親の立場ってものに、わたしは同調しなかったので、いわれて見れば、たしかに、「おいっ!?」って思うなぁ。

そういえば、水城せとなさんもBL以外で描かれてますもんね。
紺野さんともども、観察眼が優れているという印象が強いです。
そうか、だからBLか…。
でもなんか、「女に厳しい」なんて感覚、女性だからこその気がします。
男はそのあたり、鈍感そうですもん(笑)

編集 | 返信 | 
2007.12.07
Fri
22:53

ななを #-

URL

同感

紺野作品の作品って男女の関係や恋愛に対してシビアなとこありますよね。そういうとこが好きだったり、勝手に傷付いたりするんですが( ̄▽ ̄;)
私も男女間では許せない感情も、ファンタジーのBLだったら多分普通に読めるんやろうなぁと改めて思いました。
気付けば、恋愛ものはもう九割はBL……BLにだいぶ救われてるなぁ(笑)

編集 | 返信 | 
2007.12.08
Sat
14:18

lucinda #-

URL

BLに救われているって感覚、共感しました。なんなんでしょう、男女なら許せないことも男男なら許せるというこの感じ(笑)。

紺野作品の、ほかの男女関係モノは読んだことがないのですが、BLでも、けっこうシビアなところはありますよね。でもそれがあるから面白いんですけどね。

編集 | 返信 | 

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