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こゆるぎ探偵シリーズ【時代モノ de BL】

 06,2007 22:08
「時代モノ de BL」、最後は「こゆるぎ探偵シリーズ」。大正時代(恐らく関東大震災以前)の神奈川県小田原が舞台。小田原ってところ、ポイントですね。これが東京とか京都とか大阪とか、あるいは同じ神奈川の横浜だったら、ありがちな感じがしたにちがいない。
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このシリーズもまた、手に入りにくい状態になっていて、本の画像はナシ。そのため、例によって3冊並べた画像がこれ。

PC060228.jpg

イラストは今市子さん。このシリーズ、全体的にのほほん&飄々、かつ、端正で上品な雰囲気なのだけど、今市子さんの麗しいイラストは、まさにそのイメージ通り。

主人公は酒造会社の御曹司・小由留木楓(こゆるぎかえで)。旧制小田原中学校4年生で17才。美少年でちょっと体が弱い。その彼が中心となっている仲間たちの集まりが、名づけて「こゆるぎ探偵倶楽部」。

メンバーは、楓のことを思い続けている大工の若棟梁・一色祐太朗(いっしきゆうたろう・何でも器用で遊び人)、楓の同級生で剣道道場の跡継ぎ・加納斉彬(かのうなりあき・でも剣道苦手で詩人希望な堅物)、鳥屋の若旦那・邑居郁(むらいいく・バランス感覚のすぐれた大の鳥好き)、写真館の3代目・設楽塙衛(したらはなえ・写真の腕はピカ一だけどこれも遊び人)、荒物屋の跡継ぎ・善田太郎(ぜんだたろう・生真面目な職人肌)。6人が6人とも坊ちゃんで、しかも家を継ぐことを期待されている若旦那=長男なのだ。それにしても、善田太郎以外、みなさん、風流な字面の名前だなぁ…。いや、善田太郎くんは、それはそれで彼の実直で真面目人となりにピッタリ合ってるんだけどね。

素人の「探偵倶楽部」だけど、「解決の比率が高い」のが特徴。というわけで、1巻につき2話ずつ、探偵倶楽部の面々は事件を解決していく。事件といっても、殺人事件のような深刻なものではなく、小田原中の名物先生の浮気調査や、茶問屋の茶葉横領事件、楓の誘拐事件といったもの。――あれ、けっこう深刻に見えますね。うーん、たしかに深刻な面はあるけど、のんびりと、時にユーモラスにストーリーが綴られているのと、事件が前向きな方向に解決するため、あんまりシリアスな印象を受けないのだ。

また、事件に絡めてメンバーの誰かがクローズアップされ、そのメンバーをほかの面々が助けるという友情物語としても楽しめる。この助け合う感じの距離感が、ムダにベタベタと暑苦しくなく、ほどほどな感じで気持ちいい。読みながら、この距離感、仕事を持った幼馴染の男同士の友人関係って感じだなぁと思った。何かあれば集まるけど、普段はお互いの近況をよく知らない、知らなくても平気な感じといいましょうか。

そんな関係の例外は楓と祐太朗。シリーズが進むごとに関係は深まり、けっこういちゃついてます。ちなみに、祐太朗×楓。祐太朗という男、写真の腕前もプロの塙衛が「玄人はだし」と称し、自動車の運転や飛行機の操縦も、その道のプロが「ぜひ一緒に」と誘うほどの腕前。本職の大工としても、祖父に「たった一年でも真面目に修行すれば相模一の大工になれるのに」と嘆かれるぐらい。なのにどれも極めず、すぐに新しく興味を持ったものに飛びついてしまう器用貧乏の典型。だけどこれ、BLの攻めの、ある種の典型じゃなかろうか。もちろん、女にもモテモテの祐太朗がただ一人、楓にだけはメロメロだというのもお約束。

楓は、祐太朗と関係を結んでからどんどん色気を増し、探偵倶楽部の面々から可愛いと愛されるだけにとどまらず、エリート外交官やら奔放な詩人やら父親の友人の元男爵やらをトリコにしまくる。おまけに酒を飲むと誘いまくるくせに翌日は覚えていないという酒乱。うーむ、魔性の受けなのか、楓――。

この2人の関係は、ほかの探偵倶楽部のメンバーにもうすうす知られており、鳥屋の郁なんか、シリーズ最後のあたりは祐太朗に

「親に結婚のことを言われたくないなら、楓とのことを打ち明けた方がいいんじゃないのか? いずれ楓にも結婚話が出るだろう。その時楓は、祐太朗のことを思って独り身のまま養子を取るというかもしれない。それを楓の父親や周囲は納得すると思うのか? 楓が本当に困った時、お前が表に立って楓を守ってやれるのか!?」

という感じで、こんこんと諭しちゃうのだ。この郁の思いやり、ジーンときた。今の時代でも、そこまで言える人ってあんまりいないと思うもの…。

郁だけでなく、加納や塙衛、善田もしっかりキャラが立っているのがいい。それに学生の楓と加納以外、仕事をキッチリこなしているのもよし。その中で、こんな人がそばにいたらヤダ…と思いつつ、笑えるのが塙衛。もう、全然人の話は聞いてないし、自分勝手で極度の犬嫌い。それでも「はなちゃんだから仕方ないか」と思ってもらえるトクな人。

でも、一番インパクトのあるキャラは、もしかしたら、小由留木家の「最強のお手伝い」サトかもしれない。サト、元武家の生まれでハンパじゃないしっかり者。よく気がつき、若様の楓だろうが楓の友達だろうがガンガン叱り飛ばす。どうやら楓の父親もサトには敵わない様子。楓が誘拐された時は、芸者に化けて楓を救う手助けをする度胸を持ち、当然、楓と祐太朗の関係にも気がついている。美人で縁談の話もいろいろあるというのに、美男だと苦労するからイヤだとか、塙衛にプロポーズされたら

「夫婦になったあとも、実家代わりとして楓坊ちゃまが何かと気を遣われる羽目になります。サトは人様の心配のタネになりたくはありません!」

などといって断るのだ。いや、ごもっともですけどね。楓に、小由留木家に真心を尽くして仕えている忠義者だとわかりますけどね――読みながら、どうにもサトに負け犬のにおいを嗅ぎつけてクラクラしたのだった。サトは負け犬体質だと思うなぁ…超個人的に。

ストーリーも退屈することなく展開するし、キャラもステキに描かれているこのシリーズだけど、やっぱり背景が「大正時代の小田原」というのが、シリーズの魅力を引き立てていると思う。

時代の情景や風俗の様子だけでなく、当時の小田原の地理的な描写もしっかり書かれているのがすばらしい。作者のたけうちりうとさんご自身が小田原出身のようで、たけうちさんの土地勘も反映されているんじゃないかな。小田原、わたしの中では「お城があって、かまぼこが有名で、箱根に近くて、新幹線が停まる」ぐらいの認識しかなかったのだが、この作品を読んで、なんだか地どりしたくなったほど。そうそう、「小由留木」という言葉は、それが草書体で書かれたものが読み間違われ、「小田原」という地名になった由来があるらしい。そんなウンチクも楽しい。
koyurugi-b.jpg

ちなみにこれ、小田原駅の「デラックスこゆるぎ弁当」。「こゆるぎ」という名称、生きてるのね…。

丁寧な雰囲気の文章はたけうちさんの特徴らしく、特にこのシリーズに合わせたというわけではなさそう。でも、この文章の言葉遣いやリズムも、クラシックなシリーズのイメージにあっていると思う。「祝砲は三発」という表現はフいたけど。

ところで、このシリーズには番外編があり、それがこの作品。
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主人公は楓の小田原中学の後輩で、ひそかに楓を慕っている廼原偲(のはらしのぶ)。また難しくも風流な名前だ…。実家である箱根の旅館の経営危機に、新しい板前の斗志(とし)とともに奮戦するのだけども。

この子もなんだかポワーンしていて、斗志の以前の男性の恋人・国見の悪事も、楓と祐太朗に指摘されて気がつくほど。おまけに、「旅館を存続させるため」と半玉やら女将やらに変装し、危うく落籍されそうになったり、その件で父親に怒られたりしてもどこ吹く風。危なっかしくて、思い込んだら一直線で、斗志やエリート外交官(この人は楓にもヨロめいていた)をトリコにする。楓も楓同様、受けの典型なのだった。

それにしても強烈なのは国見で――ゲイとして初めてつきあった男の恋人(=斗志)を離すまいとする深情けと嫉妬が怖かった……。国見も斗志もお互いに妻子のある不倫だったというのが、これまた壮絶。ままま、最後は斗志を吹っ切れたようだけどね。

この作品、旅館を再建させようとする偲と板前の斗志の意欲と絆がまぶしい。実際、2人の苦労は実って旅館はなんとか存続できるようになるのだが、この雰囲気、たけうちさんのほかの作品「優しくて冷たい果実」とちょっと似ているかもしれない。


以上で「時代モノ de BL」は終了。ほかにもいろいろ、時代モノの作品はあると思うけど、今回ピックアップした作品のレビューを書いていてふと思ったのは、どれもちょっとロマンチックな雰囲気か、または人情が厚く描かれているということ。現代ではないからこそ、そういう演出がしやすいということかもしれない。

考えてみれば、和泉桂さんの「清澗寺家シリーズ」も大正時代が舞台だし、時代モノだといえるのよね。あの昼メロなムードを演出するのは、現代だとやりにくいかもしれないなぁ…。

これからも、面白そうな時代モノは読んでいきたいと思う。はてさて、第2回目の「時代モノ de BL」が実施されますかどうか――。
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Tags: 時代モノdeBL たけうちりうと 今市子 歴史/時代BL 連作レビュー

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