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あのマンガで知ったロシア革命とこの小説で知ったソ連の闇

 28,2007 01:05
…長いタイトルですみません。

「オリガ・モリソヴナの反語法」が、あまりにも素晴らしく、過酷で数奇な運命を乗り越える人間のしなやかさとしたたかさに、ただただ圧倒されてしまったのだ。

オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫)オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫)
米原 万里

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1960年、チェコのプラハ・ソビエト学校に入った志摩は、舞踊教師オリガ・モリソヴナに魅了された。老女だが踊りは天才的。彼女が濁声で「美の極致!」と叫んだら、それは強烈な罵倒。だが、その行動には謎も多かった。あれから30数年、翻訳者となった志摩はモスクワに赴きオリガの半生を辿る。苛酷なスターリン時代を、伝説の踊子はどう生き抜いたのか、志摩と、プラハ・ソビエト学校の親友、そしてモスクワで出会った人々とで解き明かされる。

この作品はフィクションだ。とはいえ、実際にチェコのプラハ・ソビエト学校で学び、ロシア語同時通訳者として活躍した著者の経験も盛り込まれているようで、だからこそ、フィクションなのにフィクションじゃないような錯覚を起こしそうになるのかもしれない。主人公の志摩が追うオリガ・モリソヴナとその友人・エレオノーラ・ミハイロヴナをはじめとした、スターリンの「大粛清」の犠牲になった人々を襲った理不尽で不可抗力な仕打ちに、ただただ、呆然としてしまう。そしてそんな中でも、どうにか生きようとする人たちの姿に涙が出そうになる。

スターリンって結局何がしたかったんだろう?
あの粛清は何だったんだろう?
なぜ、あんな恐怖の時代を人々は耐えられたのだろう?

読んでいるうちに、そんな疑問で頭がいっぱいになる。こんな、歴史への高ぶった気持ちは久しぶり――そう、ソ連、いえロシアといえば、あの作品を読んだ時もこんなあふれだしそうな気持ち(<おい)に戸惑ったっけ――。

あの作品とは――「オルフェウスの窓」。ロシア革命を軸に繰り広げられる一大ロマン。

オルフェウスの窓 (1) (集英社文庫―コミック版)オルフェウスの窓 (1) (集英社文庫―コミック版)
池田 理代子

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全9巻(文庫版)。実際、オリモリ(勝手に省略)を読み終わると同時に、「ああ、オル窓のクラウスたちの苦労ってなんだったんだろう…」などと思ってしまったのだ。

だって――

アレクセイ(クラウス)は、貴族の地位を投げ出して革命運動に没頭していたんですよ?
それゆえ、アレクセイとユリウスは、想いあっていたというのになかなか添い遂げられなかったんですよ?
そして添い遂げられたと思ったら、やっぱり革命運動が理由でアレクセイはユリウスの目の前で殺されちゃうんですよ?

さらにいえば、記憶喪失のユリウスを匿っていたロシアの侯爵かつ軍人のレオニードだって、革命運動に巻き込まれてユリウスを手放すし、せっかくドイツに帰国したユリウス自身、ロシア皇女がらみで何者かに追われる。もっといえば、ユリウスをずっと想っていたイザークは、ユリウスがアレクセイを愛していると知ったからロシアに送り出したわけだ。

――こんなに誰もが苦しい思いを呑み込んで達成された革命のはずなのに!

……って、フィクションだから! オル窓。

いやいや、そこまで思い込みそうなほど、感情に訴え迫りまくる作品だったよなぁ…オル窓。それに、それまで「歴史の一事項」としてしか認識していなかったロシア革命に、俄然興味を掻きたてられただけでなく、読んだ当時はすでに崩壊していた「東側」諸国への関心を抱いた作品でもあった。そういえば、米原万里さんの著作を読むと、やっぱりロシアや東欧諸国への関心が高まる気がする。

オル窓とオリモリを読めば、なんとなくロシア革命とその後のソ連がわかる気になるのがすごいところ。マンガの持つ力って偉大だ。今回は小説にヤられたので、小説の持つ力にも感じ入ってしまう。

実はオル窓以前に、ベルバラで「フランス革命」というものを知ったんですけどね。個人的にはオル窓の方が好み。ベルバラよりも入り組み、そしてちょっと重厚な感じが好きなのかも。
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Tags: 米原万里 池田理代子 ロシア革命 少女マンガ

Comment 6

2007.11.28
Wed
05:49

アラスカ #-

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私もオリモリは以前から読もうとチェックしていました。ただ、「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」が衝撃的(でも良かった)で、あの重い読後感にまた襲われるかと思うと、ついつい後回しにしています。ライトノベルズばかり読まず、たまにはきちんと読書をしなきゃいけないのですが。

編集 | 返信 | 
2007.11.28
Wed
08:38

lucinda #-

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たしかに、オリモリにも「嘘つきアーニャ…」のような重さはありますが…もしかしたら、スターリン時代に触れられているので、それ以上のものがあるかもしれませんが…、読後感はなんだか爽快なのです。たとえ一瞬でも、明日からがんばっていこう!という気持ちにさせられるというか、心が洗われるというか。

わたしも、ラノベばかり読んでいて、久々に読んだ(ひょっとしたら聖黒以来かも…)小説でしたが、もうぜひ読んでいただきたいです! 読み始めると、恐らくとまりません…そして「オリガ・モリソヴナ」とか、「名前+父性」形式の名前に、ちょっと酔いしれます…フフフ…。

編集 | 返信 | 
2007.11.30
Fri
00:56

相沢 #-

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オル窓

オル窓って略すのかあ――

嬉しい。私もベルばらよりオル窓のほうが好みです。

自己チューなユリウスや、ストイックなアレクセイにはなかなか感情移入できなかったんですよね
軍人のレオニード・ユスーポフのほうがクールななかにも人間味ある感じがうまく描かれてあって切なかったな。
イザークの後半みじめになってく感じも好きでした。

池田理代子さんは 宝塚劇場でお見かけしたことがあるんですけどとてもお綺麗な方ですよ。





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2007.11.30
Fri
02:03

lucinda #-

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オル窓ですよ

わたしも、初めて「オル窓」の略を見た時にはちょっとビビリました。「ベルバラ」は受け入れていたくせに。

レオニード、わたしも、オル窓の中で一番心に残っているキャラですね。ユリウスやアレクセイは、主人公なだけに、なんだか書き手や読み手の理想をつっぱしってる感じ。
イザークが出会うピアニスト、バックハウスはわたしも好きなので、その名前を見た時には感動しましたが……イザークのあの苦労ぶりは、地味に心に響きます。

>池田理代子さんは 宝塚劇場でお見かけしたことがあるんですけどとてもお綺麗な方ですよ。
そうなんですねぇ! 今でも作品を出されるバイタリティに、心からすごいと思います。

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2007.12.21
Fri
14:01

アラスカ #JalddpaA

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スターリンの粛清では2000万人が犠牲になったそうですが、本書にあった多くの人たちが無実の罪だったという記述に、やはりそうだろうなと複雑な思いがしました。疑心暗鬼になった独裁者ほど恐ろしいものはありませんね・・・。

本当に、あんな絶望の日々をよく生き抜けるものだと思います。フィクションだけど、限りなくノンフィクションなのが辛く切ないです。

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2007.12.22
Sat
15:27

lucinda #-

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あ、お読みになりましたか。
皇帝は必要ないと革命を起こしたのに、別の形で独裁者が君臨する因果というかなんというか……。政敵はともかくとして、無罪で粛清されたという人々の恐怖を思うと、本当に複雑な気持ちになります。
でも、なんかオリモリ、ラストは爽やかな気がするんです。だから切ないのかもしれませんが…。

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