FC2ブログ

「男伊達」シリーズ 【時代モノ de BL】

 09,2007 23:48
いつの間にか、偶然にも時代モノを立て続けに読んでいたのだけど、ちょっと意識して選んでみようかと思い立ったきっかけは、榎田尤利さんの「華の闇」だった。個人的感想だけど、わりと昔の吉原遊郭の慣わしとかシステムをきちっと調べて書かれている印象を受けて

――BL作品といえども、時代背景や当時の社会風潮、システムや文化をしっかり調べて書かれたと思える作品って、ほかにどのくらいあるんだろう――

と思ったのだ。「なんでもアリ」なイメージのBLだからこそ、そのあたりのこだわりを見てみたいというか、なんというか。

そんな好奇心から読んで心に残った作品が、ブログの左側にある「MY FAVORITE」で紹介している時代モノのBL作品。これを一作品ずつ、ランダムにレビューをアップするのが「時代モノ de BL」です。来月にかけて、のんびり進めてまいります。ええ、秋ですからね、積極的に企画に挑戦していく所存です。

1回目の今日は「男伊達」シリーズ。舞台は文化文政~天保にかけて(1800~1830年)の江戸。口入れ屋(奉公人の周旋・仲介)・江戸屋の若頭でイナセな伊達男・辰吉と、旗本の三男坊で天才的な絵の才能を持つおっとり純情な鏑木兵庫が主人公。3巻まで出ていて、今、どれも入手しにくい状況なのだけど、一応、発行順にG-toolで紹介してみましょう。

男伊達 恋のからくり男伊達 恋のからくり
神崎 竜乙 青海 竜乙

イーコネクション 2001-12
売り上げランキング : 549234

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


男伊達 恋の道行 (ジーン・ノベルス)男伊達 恋の道行 (ジーン・ノベルス)
神崎 竜乙

イーコネクション 2002-02
売り上げランキング : 550333

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


男伊達 恋の辻占 (ジーン・ノベルス)男伊達 恋の辻占 (ジーン・ノベルス)
神崎 竜乙

イーコネクション 2002-07
売り上げランキング : 495694

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


――「辻占」以外は画像も出てきやしない――ので、3冊一緒に撮影してみた。
PB070302.jpg

町人の辰吉と武士の兵庫、髷がきちんと描き分けられているのがポイント。なんてね。

このシリーズ、絵師を目指す兵庫が旗本の家から勘当同然になったり(からくり)、とある地方の藩のお家騒動にちょっぴり巻き込まれたり(道行)、辰吉と因縁の浅からぬ幼馴染が兵庫の兄を陥れようと企んだり(辻占)と、巻ごとにいろいろ事件が起こるのだが、どういうわけか、兵庫が裸に剥かれて縛られ、無体を強いられる率が高い気がする。兵庫、実は剣の達人で、身体つきもマッチョ、そしてアレも立派という設定なんだけども、なんだか知らないけど、辰吉はじめ、ほかの男たちに「……やりてぇ…」と思われるようなのだ。そう、兵庫は総受け。

この作品を知ったのはアラスカさんのブログなのだけど、アラスカさんによると、作者の神崎さんの萌えが「屈強な美丈夫をよがらせたい」ということなので、兵庫が受けなのは当たり前なのだ。でもその萌えに共感できない人は、もう読めないだろうなぁ、この作品……。

しかも「……読めない人、いるだろうなぁ」と思うポイントはほかにもある。

●三人称でストーリーは進むのだが、ナレーションが妙ちきりんな落語口調。
例:「なあんて、憎ったらしいことを平気で言うのですもの」、「こうっ……と、そうですね」などなど
●エッチとかヘアスタイルとか、通常はカタカナで表記されるものが、作品中はすべてひらがなで表記。おまけに、擬音語や擬態語(オノマトペ)もひらがな率高い。
●「辻占」では過去のいきさつを語る際、「たいむましーん」がいきなりナレーションに登場し、しかもご丁寧に、それが作動するところまで表現されている。
例:「かちっ、ぶぃいいいいーん あ、これは幻のたいむましーん作動する音です、念のため」

とにかくこんな調子でナレーションが独特なので、このノリについていけない人は、もうきっと読めないと思う。わたしも最初に読んだ時、ちょっとビックリしたものねぇ……。

しかし、マッチョがよがり、妙な落語ノリナレーションを受け入れられたら、けっこう面白い作品じゃないかと思う。ストーリーそのものは、起承転結がしっかりあって読みやすい。ナレーションのせいでダラダラしがちに見えるけど……。

読んでいてすごいなぁと思ったのは、江戸の町の距離感が、なんとなく想像できるところ。日本橋から赤坂迎賓館あたりまで早く移動するために船を使うとか、なるほどなぁという感じ。また、赤坂迎賓館のあるあたりは当時四谷仲町といって、武家屋敷が建ち並んでいたと説明されていると、へぇぇ!と感心してしまう。BLで学ぶうんちくって感じ。

「からくり」のあとがきによると、神崎さんがこのシリーズを書くきっかけになったのが、神保町の古本屋で見つけた江戸時代の古地図だったとか。もともと地図フリークだった神崎さんは、その地図の美しさに魅入られたのだという。「今とは違う失われた町並み、そこに生き、死んでいった人々の姿が、あたかも湧き出るかのようにゆらゆらと…」と幻覚というか妄想というかがたちまち広がっていったらしいのが微笑ましい。

また、正確かどうかはわからないけど、当時の生活の様子や、口入れ屋の仕事の様子、辰吉たち町人や兵庫たち武士の言葉使いの違い、芝居小屋や陰間茶屋、武家屋敷の中の描写などが、とてもイキイキと描かれていて、少なくともその時代の雰囲気やイメージが伝わる感じはする。人気の陰間が上方出身というのも、以前読んだ本の知識に合っていたのが、個人的にナイスポイント。

BL作品なので、今風にいうとゲイ寄りのバイ・辰吉がしょっちゅう陰間茶屋に行って陰間を、またあちこちで兵庫をアンアン言わせているのをはじめ、どこでもかしこでも、男同士の色恋沙汰が展開されている。とはいえ、総ホモ展開という感じではなく、「女も男も、どっちもいいじゃん?」的ゆるい雰囲気。ある意味、現在推測されている江戸時代の空気感といえるかも。

いなせでモテる辰吉だけど、おっちょこちょいで、事件をひっかきまわすのもこの人。でもいつも、兵庫が絵で、あるいは剣で活躍して、最後に丸く収める。そのパターンが――辰吉と兵庫の性格にもぴったりあてはまっているし、まるで時代劇のお決まりの決着を見るような安心感を感じるのだ。

青海信濃さんの、ちょっと骨太なイラストも、作品に合っていると思う――なにより、髪形や衣装が、突然現代にシンクロしていないのがいい。十二単着てるのに前髪が描かれてたりすると、個人的に萎えるんですよ、わたし。

そんなわけで、「男伊達」シリーズ、19世紀初頭の江戸時代の雰囲気は、なんとなくでも感じられるような気がする、としておきたい。少なくとも、いろいろ資料をあたって書かれている感じはする。

これ、面白いかも――と読みながら思い始めたら、なんちゃって落語っぽいナレーションのノリも気にならないはず――多分ね――。
関連記事

Tags: 時代モノdeBL 神崎竜乙 青海信濃 男色 連作レビュー 歴史/時代BL

Comment 4

2007.11.10
Sat
07:57

アラスカ #JalddpaA

URL

楽しい企画で期待しています!

 >「……読めない人、いるだろうなぁ」
神崎さんですからね。(笑)
でも、本当にこの独自の魅力は捨てがたいと思います。

そしてlucindaさんの指摘する、
メリハリのある起承転結
登場人物や周囲の状況がいきいきと描かれている
時代劇のお約束を踏まえている安心感
こういうのは、作者の長年にわたる漫画家としてのキャリアも影響しているのではと思います。はちゃめちゃなのに、気がつけば妙な魅力のトリコ?になっています。

編集 | 返信 | 
2007.11.11
Sun
01:14

lucinda #-

URL

なるほど…たしかに、マンガ家としてご活躍されたキャリア、影響しているのかもしれませんね。いや、実際、あのノリを受け入れられたら、けっこうヤミツキじゃないかと思うんですよね。なんかちょっと、少年漫画っぽいノリも感じられるような。

とかいいながら、男伊達シリーズ以外の神崎作品は読んでないのですが、多分、個人的にはイケそうな気がします……そんなことは読んでから言えって感じですけども……。

編集 | 返信 | 
2007.12.18
Tue
22:39

aya-me #xlO/wHwY

URL

こんばんは、コメントはお久しぶりです。
この記事を読み、ちょうど1巻を見つけたので
挑戦してみたのですが、面白かったです!
あのナレーションに笑い(時に苦笑いし)ながらも、
テンポが良かったですし、
何より兵庫さんが純なのに萌えました。
細かな描写が具体的に想像できないのが
ちょっと悔しいです…。

ご紹介ありがとうございました!
それではまたお邪魔します。
あ、TBさせて頂きました~。

編集 | 返信 | 
2007.12.19
Wed
02:19

lucinda #-

URL

コメント&トラバありがとうございます! aya-meさんに気に入っていただけてよかった……って、作者でもないのにアレですけど。
兵庫、カワイイですよねぇ。今はもう、想像するしかない江戸時代ですが、それがまた、ファンタジー色を強めているかもしれません。作品の中の世界は、なんだか楽しそうに見えますけどね……フフフ……。

編集 | 返信 | 

Trackback 1


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
  •  『男伊達 恋のからくり』/神崎竜乙(青海信濃)
  • えー、最近正統派と申しましょうか、BLに正統も生徒も ありゃしないんですが、学園ものはありますけれどもね、 まあ、そんな作品が続いてまして、とんと際物っぽいものを 読んでなかったんでげすが、その反動ってんですか、 好事家熱が高まっていたところに、この本が...
  • 2007.12.18 (Tue) 22:27 | ゲイ&腐男子のBL読書ブログ

Latest Posts