先月の作家買い1
お気に入りの作家さんがいる限り、完全にBL系の買い物がなくなることはない。その作家さんが複数いればなおさら――。先月の「作家買い」した本を見つめながら、そんな思いをしみじみ噛み締めるわたしなのだった。
そういうわけで、作家買いした本の簡単な感想をまとめてアップする「先月の作家買い」を、今月からスタート。これでなかなかアップできないレビューもアップできるに違いないと睨んでいるのだけど……はてさて。
なにはともあれ、先月買った、作家買いの本は全部で6冊。
宮本佳野「ラバーズ・ソウルズ 完全版」
新田祐克「オトダマ 音霊 1」
英田サキ「すべてはこの夜に」
英田サキ「素直じゃねぇな」
小林典雅「老舗旅館に嫁に来い!」
鳩村衣杏「恋に命を賭けるのさ」
この中で印象的だったのが、新田さんの「オトダマ」。BLじゃないのに! BLじゃないけど面白かったんだよ!
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かつて「警察の耳」といわれた、天才音響捜査官・音無要。彼の耳は、どんな音も、死者の声さえも聴きとってしまう。その要に厄介ごとを持ち込むのは、元刑事のヒデ。ふたりの前には、次々に死体があらわれ、さまざまな霊の叫びが要の耳を突き抜ける。新田祐克がイロコイを封じて挑む、美しきオトコたちの本格ホラーミステリー、開幕。
ストーリーはもちろんなのだけど、やっぱりキャラ形成がうまい。冷静で、時に事実というか根拠を重視するゆえに冷徹にも見える兄と、熱血でポジティブな双子の弟で元刑事のヒデ。そしてちょっと厭世的だけど様々な音を真摯に聴いて分析する要。あ、それから、捜査上何かと兄と対立する女性警視・唯敷や、毎回容疑者リストに挙がる古玉も印象的。どれもありがちな、お約束っぽいキャラに見えるかもしれないけど、薄っぺらくない。キャラたちの思惑や意図が絡み合うさまが、さすが!という感じなのだ。
わたしは第一話の「音感過敏症」がよかった。第二話の「歪んだ音叉」もそうだけど、真犯人が、「どこにでもいそうな善良そうな人物」というところが、いまどきっぽい。しかしかといって、早々簡単に真犯人はわかりません。そこもいい。
イロコイは封じられているけど、腐女子なら多分、たやすくカップリングできるに違いありません。ヒデ×要(逆でもいいかな)はまんまだけど、わたし、お兄さんと唯敷さんの関係が、なんだかやおいっぽくて目が離せないのだ。唯敷さん、なんだか山口小夜子みたいな長髪でミステリアス。あんまり女くさくない。このヒトが男性なら、速攻、唯敷×兄なのに~!
次に面白かったのは、やっぱり待望の2冊目、小林典雅さんの「老舗旅館に嫁に来い!」かしら。待ってたよ、ホントに。
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日本に留学中のアメリカ人のジューナは、旅行代理店に勤める柊一郎と将来を誓い合った恋人同士。しかし、突如柊一郎が実家の老舗旅館を継ぐことになり、さらには親同士が決めた許婚まで登場する始末。突然の事態に困惑するジューナだったが、愛する柊一郎のため妻の座をかけ女将修行をすることに…。
小林さんといえば、コミカルでテンポのよい会話が特長の一つだと思うのだけど、この作品でも遺憾なく発揮されている。ジューナも面白いけど、ジューナにあれこれ余計な知識を刷り込んでいるらしいドイツ人のフランツに大爆笑。フランツ、作品の中ではジューナの伝聞にしか登場しない、謎のキャラなのだ。ああ、フランツ……できれば何事にも几帳面なイメージのドイツ人らしく、メガネをかけて理屈っぽそうだといい……。
愛する柊一郎を自分の元に引き留めるために、慣れない旅館の仕事を一生懸命こなすジューナ。ほかのブログのレビューにも書かれていたけど、ジューナと、ジューナをしごく柊一郎の父・龍之介とのやりとりが、また笑える。とにかくジューナ、めげない。しょげない。そしてけなげで前向き。不器用だけど。
そうそう、元NOVA講師で突然仕事がなくなったアメリカ人講師のブログを読んでいて、ちょっとジューナを連想してしまった……(ブログは「日本に来ていきなりNOVAなくなっちゃた」で検索してみてください)。なんかね、やっぱり文面から発せられるポジティブさが、そう思わせるのかも……。
タイトルの「嫁に来い」が、もしかしたら「男なのに、嫁~?」という拒絶感を生むかもしれないけど、まあ、ジューナの、柊一郎を他の女と結婚させたくない!という気持ちの表れだと思えば……。最後は、どうやら柊一郎の結婚は回避できたようだけど、ジューナの女将修行は続きそうなのだった。この作品の続きがあるかどうかはわからないけど、小林さん、もっと本を出してくださーい!…と切に願わずにはいられません。
そのほかの作品は、簡単にまとめました。長いので、折りたたみます。
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3編収録。表題作の「すべてはこの夜に」は、もしかして受けの加持が死ぬのか――!? と思わせるラストで、なんだか珍しい気持ちがしたのだけど、これ、もともとは英田さんのデビュー前の同人誌作品だったんですね。結局、3編目の「春宵一刻」では、加持は湊と幸せそうなのだった。でもわたしが気に入ったのは、湊の側近・武井が主役の「夏の花」。ひたすら静かな雰囲気がいい。小冊子を読めば、感慨も倍増な気がする。ネットで注文してよかった……。
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これは一転してコミカルな作品。一応若い男性への連続暴行事件も絡んでいるけど、ミステリ色はあまり強くない。軽快に読める感じ。デレデレしている刑事の久門とちょっと意地っ張りな真路に、ふと、「エス」の永倉と小鳥遊真生を思い出してしまった。全然関係ないんだけどね。でも年齢的には似てるかも。しかし久門、相羽の気持ちに気付いてやれよ…。
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宮本さんの作品には、いつも静かでしっとりとした雰囲気を感じる。そしてどこかかすかに切ない。これもそう。「RULES」で掴みどころのない、奔放に見えるキャラ・トオルの、先輩との話が印象的。先輩を失って初めて、トオルが自分の気持ちに向き合うところ、そして先輩の死後、トオルに届いた先輩からの宅急便に、ちょっとホロリときた。けっして甘くない、ホロリ、だけどね。
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うーん、なんでしょう……悪くないんだけど、なんかちょっと物足りない。すごく早足でストーリーが進んでいった感が残る。前作「愛と仁義に生きるのさ」の主人公・悠の弟で、女にモテまくりのイケメン・透と、クールでサドっぽい新海という組み合わせは悪くないんだけども。ちょっと、透と新海の2人のシーンが少ないのかしら。なんだか二人が無事まとまった後、新海が三佐和クリーニングに「嫁」として挨拶しに来るところが、滑稽だけどちょっとノリきれないというか……。そうね、男なのに嫁といわれてもねぇ…というしっくりこなさを感じてしまったのだ。もしかしたら「新海、嫁ってガラじゃないだろ」と思ったからかも。家計はしっかり管理してくれそうだけどね。
