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絵になる大人になれなくても(崎谷はるひ)

 22,2007 21:41
崎谷はるひさんは、わたしにとって、いおかいつきさんのように、なぜかこれまでいまひとつノリきれない作家の一人。しかしこの作品は、悪くないと思ったのだった。

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電子機器メーカーの営業・坂上真弓は、新しく入ったアルバイトの井原峻之に驚く。坂上と井原は、高校時代、親友だったのだが、井原は「真弓といると、しんどいんだよね」と言葉を残し、卒業と同時に坂上の前から姿を消したのだ。そのことに傷つき、いまだ引きずっている坂上は八年ぶりの再会に戸惑う。「あのころから俺のこと、好きだっただろ? だから離れたのに」と言う井原に坂上は…。

なんというか……とにかく、坂上の井原への屈託、自意識過剰気味な気持ちが、丁寧に、細かく、ねっとりと描写されているのが印象的。でもその坂上の気持ち、わからなくもないんだなぁ…。中学・高校時代の同性の友人に対して、見方を変えればそれは恋なんじゃないかと思うような気持ちを抱くことがあるけど、そんな気持ちを思い出し、それが破られてしまう絶望感を思い出した。

坂上の生真面目で不器用な様子が、仕事風景の描写にもよく表れていて、なんだか読んでいて、坂上を応援したくなってしまう。

その一方井原といえば、坂上視点でストーリーは進むので、彼の真意がどうにもわからない。掴めない。のらりくらりとしていて、坂上でなくてもイライラしてしまいそう。おまけに、高校を卒業後に姿を消したのも、坂上が自分のことを好きという気持ちを、坂上自身は受け入れられないと思ったから、とかなんとか言っちゃって、ちょっとあてつけがましい感じなのだ。それがやさしさと言えなくはないかもしれないけど、でもねぇ……坂上が決死の覚悟で告白するまで自分の気持ちをはっきり言わないのは、ずるい男だと思ってしまう。

崎谷さんもストーリー中、井原のことを、「嘘つき」なんて描写していたりして、井原のずるさというのは狙いどおりなのかもしれません。

まあ、井原は、高校時代に最初に出会った時から坂上が好きだったといBLらしいオチを隠し持っているんだけども。それでも、やっぱり井原よりは坂上のひたむきさ、生真面目さが光っている作品のような気がする。

晴れてお互いの気持ちが通じ合った後のラブシーンも、崎谷さんらしく長く、長く、ひたすら長く……そして粘っこく…――数えてみたら、39ページありました。さすが崎谷さん。アレコレしながら、ソレとは関係ない会話をするのが、なんかちょっとリアルに思えたのだった。

井原はもう、坂上をずっとそばにおくつもりらしいし、坂上は、結婚して子どもをもうけるということはできないと母親に心中で謝っているし、まあ、末永くお幸せに――という感じだ。でも坂上、そんな決意をしているなら、タイミングを見計らって、井原のことを母親に打ち明けてもいいと思うけどね。
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Tags: 崎谷はるひ ヤマダサクラコ

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