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あのひととここだけのおしゃべり(よしながふみ)

 16,2007 00:06
よしながふみさんの対談集。以前、「マンガ・エロティクス・エフ」で掲載されたものを読んで、ものすごく楽しみにしていた。

よしながふみ対談集 あのひととここだけのおしゃべりよしながふみ対談集 あのひととここだけのおしゃべり
よしなが ふみ

太田出版 2007-10-04
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対談相手は、

やまだないと、福田里香、三浦しをん、こだか和麻、羽海野チカ、志村貴子、萩尾望都

とかなり豪華。それにしても、対談相手は全員女性でも、表紙カバーの絵は男性同志ってのが、よしながさんの本という感じ。

読んでいる途中はもちろんだけど、読み終わってしみじみと思うのは、「よしながさんは本当にマンガが好きなんだなぁ」ということ。あらゆるジャンルのマンガを読んでいるゆえの情報量の多さと鋭い洞察力、そしてマンガへの愛がじんじんと伝わってくるのだ。

意外だったのは、よしながさんが同人誌を作るようになったのは高校卒業後だったということ。そして、少年マンガよりも専ら少女マンガばかり読んでいたということ。スラダンの同人誌のイメージがあまりにも強かったので、ちょっと驚いた。でもそういうベースがあるためか、対談中、とくに力を入れて語られていたのは少女マンガ、そしてBLマンガなのだった。

わたしがとくに印象に残っている対談相手は、三浦しをんさんと羽海野チカさん。

三浦さんとの対談は2回行われているのだが、なにしろ、BLを読むのが趣味と公言している三浦さんなので、BLへの思い入れや、BLに惹かれる理由、BLに対する一般的な見方や批判へのはがゆい思い、といったことが熱っぽく語られていて、読みながら「あー、そうだよねそうだよね」と思わず相づちを打ちたくなるような感じ。

「西洋骨董洋菓子店」の小野が、もともとは女の子の予定で、しかもダメ男とばかり付き合ってしまう設定にしようとしていたのだけど、「女の子に人気のなさそうなホンモノっぽいゲイでいこう」ということになった、というのが面白い。やっぱり、女の子だと女性読者の受けがよくないからなのかなぁ…などと思ったり。

三浦さんの言葉「特にBLを好きでない人がBLに絡めて何か評したいのであれば、まずはBLを読むべきだと言いたいですね」は、まさにその通り、という感じ。

羽海野さんとの対談は、「マンガを描く」という「仕事」に対する思いやスタンスが語られているのが印象的。どちらも人気マンガ家、どちらも自作品がドラマ化され、またどちらもかつては同ジャンルで同人誌を制作し、しかも何度か隣り同士のスペースでコミケに参加していた――というあたりの話も興味深い。

2人が親しくなったのは、どちらもプロデビューして以降らしいのだが、その仲の良さがページからムンムン伝わってくる感じというか何というか。微笑ましいのだ、とても。

よしながさんの論じるハチクロの魅力「キャラたちは恋がどんなにダメな時でも、仕事は絶対に完璧にやり遂げる」は、思わず「たしかに!」と叫びそうになった。わたしもハチクロ、好きだけど、「うーん、たしかに胸キュンな恋の様子もいいんだけど、でもわたしが好きなのはそこじゃないような気がする…」と思っていたもの。しかしそんなことを思いつつも、じゃあどこが好きなのか突き詰めたりしないのが、わたしの面倒くさがりの証拠だな。

しかしこの、「仕事は何が何でもやる!」という姿勢、ふと、安野モヨコさんの「働きマン」を連想してしまった。うーん、世の中は少しずつ、「24時間働けますか」的ムード賞賛モードに入っているのかしら……。

やまだないとさんと福田里香さんとは鼎談。よしながさんより「ちょいお姉さん」な2人だが、オタク文化に対する、彼女たちの世代とよしながさんの世代のスタンスの違いが興味深い。そしてここでは少女マンガが主に取り上げられ、BLはほとんど取り上げられていないのが特徴的。

こだか和麻さんとの対談は、もうもちろんBLマンガについて。BL作品が出始めたころの業界のエピソードや、BLマンガ作家を取り巻く環境といった話題が、面白かった。

志村貴子さんとは、こちらも(多分)同世代のマンガ家同士ということで、マンガを描く楽しみや苦労が語られている。でもなんだかお互い、「私ってマンガを描いてなかったらダメな人間だ」みたいな、謙虚でちょっとヘタれているような雰囲気が漂っている感じ。

萩尾望都さんは、もうよしながさんが大好きな「24年組」の代表的なマンガ家だからなのか、「大先生に恐れながら自分の思うところをお話しさせていただく」感じが微笑ましい。それにしてもよしながさんの、萩尾作品に対する洞察力の鋭さといったら。すごいなぁ、そこまで考えるなんて…と感心しっぱなし。

いや、萩尾さんとの対談にとどまらず、よしながさんは本当に、マンガだけでなく対人関係や世の中について、すごくよく考えている人なんだなぁとしみじみ感動してしまったのだ。そんなにいろいろと深く考えていたら、生きるのは大変なんじゃなかろうかと思うぐらい。うん、同じようなことを羽海野さんも言っていた。

これを読んだら、ますます、よしながさんの作品が好きになる。そして、会ったことはないけど、勝手によしながさんも好きになりそうなのだった。
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Tags: よしながふみ 三浦しをん 羽海野チカ 腐女子 少女マンガ ジェンダー フェミ?

Comment 6

2007.10.16
Tue
23:29

みち #akJVOkEc

URL

こんばんは、みちです。

私もこの本、出るのを楽しみにしていて、すぐに買って読みました。

「物語を作る側」にいる人のお話は、すごく面白いなあ…と、読みながらたくさんのことを、私も考えました。まだうまく整理してきれていないくらい。

こだかさんとの対話の中で「私、一棒一穴主義です」とよしながさんが言ってらしたのだけど(そして思わず、私は大ウケしてしまって、「私もそう!」と激しくうなずいてしまったのだけど・笑)、これ……何て読むのでしょうか? 「いちぼういっけつ」?「ひとぼうひとあな」? 
だけどこの単語、こだかさんもよしながさんも、「発音」したんだ…(ちょっと感動)。すごい男気! かっこいいです、よしながさん!
私も、書いたり読んだり、は結構スゴイ単語を使っているのだけど、「発音」する機会も勇気もなくて。いや、カマトトぶるわけじゃないけど(笑)

編集 | 返信 | 
2007.10.17
Wed
22:21

lucinda #-

URL

本当に、読みながらいろいろ考えさせられたり気付かされたりする本だったなぁと思います。同世代の人たちが語っているからかもしれませんが。

一棒一穴主義は、「いちぼういっけつ」じゃないかと。一穴主義という言葉や文字は、時々目や耳にするので、多分。時々目や耳にするって。いや、でもあんまり発音はしないかもですよ~。

編集 | 返信 | 
2007.10.21
Sun
20:10

aya-me #xlO/wHwY

URL

こんばんは、お久しぶりです。
ようやく読み終わって感想を書き終えたので、TBさせて頂きました。

よしながさんの観察力、洞察力は作品中で出てくる鋭さそのものでしたね。
それでそこここにひざを打ちたくなるような箇所があって、
ピックアップする箇所を迷ってしまいました。

特に三浦しをんさんとの対談はどれもこれも興味深くて…、
フェミニズムはBLを読む上で意識したことがないのですが(一応男だし)、
「抑圧ポイントが多いから萌えポイントが多い」や、取り上げられている、
「特にBLを~(略)~BLを読むべきだと言いたいですね」には納得させらました。

よしながさんの作品を買い続けてゆく決意を、さらに固くした今日この頃でした(笑)

それではまたお邪魔します~。

編集 | 返信 | 
2007.10.21
Sun
23:53

lucinda #-

URL

コメント&トラバありがとうございます。

いやほんと、よしながさんの観察力や洞察力の鋭さにはただただ感心するばかり…という感じでした。しかも、自分が言葉にしたかったことを言葉にされている、という感じが、余計に感動したような。

三浦しをんさんとの対談、やっぱり面白いですよね! 「抑圧ポイント」は、雑誌を読んだ時に「おお!」と思っていましたが、改めて読んでも、しみじみ納得したことです。なんだか、BLが好きだということを(一瞬)思わず叫びたくなるような力強さが、印象的だったなぁ…と思います。

編集 | 返信 | 
2007.10.22
Mon
00:38

相沢 #-

URL

この本は宝物です

この本ほんとに読み応えがありました。
私はとくによしながさんのハチクロ論にうなりました。

★恋愛には純情な登場人物たちが仕事にがっつり生きてる
★真山とリカさんがアンドレとオスカル

いやもう感心しきりでした。
語り下ろしが多かったのも嬉しかったなあ・・・・・

編集 | 返信 | 
2007.10.22
Mon
18:11

lucinda #-

URL

相沢さんのブログでこの本の発売日を知ったんです、じつは。ありがとうございます!

ほんと、ハチクロ論はなるほどなぁと唸ってしまいましたね。
>真山とリカさんがアンドレとオスカル
これも独特の喩えでしたねー。

奥付をみると、たしかに語り下ろしが多いのも驚きでした。でもほんと、面白かった…。わたしにとっても大切な本です。

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  •  『あのひととここだけのおしゃべり』/よしながふみ対談集
  • 女性マンガ家の対談集はどれくらいあるのでしょうか。少なくとも私は今までこれしか読んだことがありません。というか、マンガ家がまとめた対談集ってあんまり聞いた覚えがなく、買うのにすこし不安を感じました。手にとってみると1200円の表示がちょいと重いものですからし
  • 2007.10.21 (Sun) 20:01 | ゲイ&腐男子のBL読書ブログ

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