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言葉で真っ向勝負!な感じ―「臆病者が夢をみる」「恋愛依存症」(金丸マキ)

 24,2007 01:20
読みながら、「うわー、これって久々に『恋愛小説』って感じ!」と思った作品。

臆病者が夢をみる臆病者が夢をみる
金丸 マキ 明森 びびか

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官能マンガ家・昂の担当になったのは、一つ年下の、大手出版社のエリート編集者・真行寺。学術書から異動してきた彼は、新作のネタ打ち合わせには熱心だが、セックス描写の話になると、なぜか話題をそらしてばかり。ところが、不審に思っていたある夜「あなたは経験豊富なんでしょうね」と不意打ちでキスされて……。

あらすじだけ読むと、BLのオーソドックスなストーリーなのかと思うのだが、出だしから、ゲイだと自覚した高校生時代の不安と絶望が、昴のモノローグで訥々と綴られていて、おお!? と思ってしまう。この不安や絶望は、ゲイだろうがノンケだろうが、覚えのある人もいるのでは…と思わせられるような。その後の、昴が編集者・真行寺の告白にためらったり、初めての恋人・上総との再会にうろたえたりする様子や感情も、どこか共感できる感じ。

昴を挟んでの真行寺と上総の三角関係も、まさに恋愛小説の王道を行くようで楽しかった。よく、小説でもマンガでも映画でも、三角関係の中心(頂点?)にいるキャラについて、「……いい加減にしろッ!」と毒づきたくなる衝動に駆られることがあるけど、昴の場合、そんな衝動に駆られることも、反感を感じることもなかったのだった。――これってやっぱり、BLだから!? みんな男だから!?

――と思わないでもないのだけど、昴に反感を覚えない最大の理由は、彼が真摯に仕事に取り組んでいる様子が、これまたしっかりと書かれているからじゃないかと思う。官能マンガ家として、昴は真行寺と、「少年誌に掲載するエロマンガ」にふさわしいシチュエーションや、キャラとその関係性、作品全体のトーンについて何度も考え、話し合う。これがけっこう面白いのは、やはり著者の金丸さんのダンナさんがマンガ家だからこそなのかしら。

恋愛に苦悩する昴が、同じくらい仕事にも苦悩する。この作品のテーマは、まさに「恋愛と仕事」なのだけど、個人的に新鮮だったのは、「恋愛と仕事は似ている」という主張。えー…、自慢じゃないけど非恋愛体質のわたしには、かなり新鮮な主張だ。作中、昴のアシスタント・和田くんが「恋愛も仕事も、基本は人間関係でしょ。先にモーションをかけたほうが、立場は弱いんですよ!」と言う言葉、なるほどねぇ…と妙に感心してしまったのだった。

そうそう、失恋に落ち込む昴に言う、和田くんの言葉

「なんだかなぁ、恋愛体質の人って。自分がしたくて恋愛してるんだから、失敗したってそれなりに有意義じゃないんですか?」

も、かなり個人的にヒットだ。いつかどこかで使ってみたーい……その機会は、刻々と激減しているのだけど。ちなみに和田くん、22歳で、自称「メイドコスチュームフェチの二次元コンプレックス」でイラストレーター志望らしい。お兄さんがゲイらしい。なのでカミングアウトされる前から、昴のことはうすうす気づいていたらしい――気になるキャラだ、和田くん。和田くんなら、将来BLのイラストレーターもできそうな気がする。

その反面、真行寺がいま一つ得たいが知れず、上総がなんとなくキャラの造形として薄っぺらい気がするのが残念。どっちも悪くないキャラなので、もっと書き込んでがっつり激しい三角関係を展開してほしかった、気がする……。

さて、これはそのものずばりなタイトル。

恋愛依存症恋愛依存症
金丸 マキ

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男子校・立花学園の化学講師である立花大和が、勢いに流されて生徒の原島璃一と恋人関係に。気まぐれで遊び慣れてる大和は、コドモの璃一を何とか振りまわすが、自分を慕う彼の素直な気持ちに、次第に惹かれていく――。

生徒×先生。7歳年上だけど子どもっぽいところのある先生・大和と、子どもだけど包容力があってひたすら先生を慕う生徒・璃一。うん、わたしの好きな設定ですな。

璃一は、2人の関係はずっと続くと純真に信じている。けれど大和は、年上ということもあって、璃一の将来を考えたり、過去に両親を事故で突然亡くしたことがトラウマになっていたりで、2人の関係はいつか終わる、終わらないはずがないと恐れている。とはいいながらも、大和はつきあうほどに璃一がいない生活など考えられなくなって――恋愛依存症、というわけ。

全体的にほのぼのとしたトーンなのだけど、この作品も、恋愛についての大和と璃一の感情が深ーく書き込まれている。これも、共感したり、「そういうことかぁ…」と改めて思い返したり、させられる。させられるのだけど――。

金丸さんの作品は――これまで4冊読んでいるのだけど――どれも文章はテンポよく綴られ、言葉も練られている感じを受ける。ちょっと笑えるシーンも、しんみりするシーンもキッチリ盛り込まれている。文章上手だなぁ――と心底感心するのだけど、僭越ながら超個人的に、「これ、『萌える』というのとは、また別なんだよなぁ…」と思うのだ。いえ、ホントに超個人的ですよ!

作品を読んで、「面白かった!」と、必ず思うのは間違いない。でも「BLって雰囲気を感じないのはなぜなのか…」と、ふと考えてしまうわたし。なんというか、「感覚で書いちゃった」みたいな雰囲気はあまり感じない。いえ、感覚で書くのがいいというわけではもちろんなく、むしろそうじゃないからこそプロなんだと思うのだけど――悪く言えば理屈っぽいのかしら。金丸さん、コバルト文庫からけっこう著作を出されているのだけど、コバルト(かつてわたしの知る時代の)とBLレーベルの間にある感じ、なのかなぁ……。

いや、なんだかんだいって、そんな金丸さんの作品、好きなんですけどね。
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Tags: 金丸マキ 明森びびか 山田ユギ 複数レビュー

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