FC2ブログ

真夜中の相棒(テリー・ホワイト)

 09,2007 13:00
ぽーちゅらかさんに教えていただいた「真夜中の相棒」。お互いに「相棒」がいる殺し屋と刑事の物語。女より、妻子より、家族より、「相棒」を思い「相棒」のために行動する男たちの物語。

真夜中の相棒真夜中の相棒
テリー・ホワイト 小菅 正夫

文芸春秋 1984-01
売り上げランキング : 97219

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ジョニーとマックは元ベトナム兵士。マックはギャンブルをやめられず、借金を清算するため、マフィアから持ちかけられた人殺しの依頼を受けてしまう。以来、マックが仕事を取ってきて、相棒のジョニーが人を殺すように。ある時、初めて、予定になかった男を殺してしまった。男は警官で、彼にはサイモンという相棒がいた。サイモンは、相棒を殺したマックとジョニーを追い始めるが――。

元ベトナム兵士、マフィア、殺し屋、刑事…映画にもなりそうなこのキーワード、どれひとつとっても重く、ダークでシリアスなイメージ。おまけに主要キャラのマックとジョニーのお互いを庇いあい思いやる様子や、サイモンが亡くなった相棒・マイクを思う気持ちがあまりに真っ直ぐで純粋なため、悲しさというか切なさも漂っているのだ。

ジョニーはベトナムで、アメリカ軍による村落無差別攻撃を目撃して以来、自閉症のようになってしまう。そんなジョニーが唯一信頼し、心から縋っているのがマック。マックはポーカーを止められず、有り金すべてを注ぎ込んでしまうダメ男だが、そんな自分を一度も責めず信頼してくれるジョニーに恐れや不気味さを感じながらも、彼から離れることができない。

共依存的な二人の関係は、セクシャルな雰囲気が漂うけれど、あくまでも「友人」。しかし物語の終盤、マックは、行きずりの女性とセックスをしている最中、その女性が一瞬、ジョニーに見えたことでひどくうろたえる。しかもジョニーが、自分を追っているサイモンと、それとは知らずにしゃべっているのを見て嫉妬まで覚えてしまうのだ。――ああ、とうとう二人の関係に、性愛が入り込むのかしら……と思ったところで、マックは死んでしまう。

まあ、そんな関係にならずとも十分濃い、マックとジョニーの関係なんですけどね。

さて、もう一人の主要キャラ・サイモンの相棒への気持ちも、マック&ジョニーに負けず劣らず濃い。妻子に棄てられても、仕事を追われても、相棒を殺した犯人を追いかけずにはいられないほどに。ところが亡くなった相棒・マイクは、サイモンへの気持ちに温度差があったようで――サイモンについて「あまりにも極端に走りすぎる。いつか限界を踏み越えるんじゃないか」と懸念していたと知った時のサイモンの驚きと、「マイクは自分と同じ気持ちではなかった」というショックときたら。ちょっと可哀想になってしまった。

二組の、相棒を持つ男たちの明暗――というわけじゃないけど、サイモンはいつしか、どういうわけかマイクを殺したジョニーへの思い入れを深めてしまい、新たな殺人を決行しようとしていたマックとジョニーの前に現れ、マックを殺し、ジョニーとともに逃亡してしまう。ここでもし、ジョニーも死んでいれば、恐らくジョニーにとっては幸せだったのだろうけど――サイモンがジョニーと一緒に逃げようとしたのは、自分の孤独さをジョニーに知らしめたかったのか、分かち合いたかったからなのか――。

ジョニーはマックを思って抜け殻のようになり、そんなジョニーが自分の言葉にまったく反応しないことにサイモンは焦燥感にとらわれ、なんだか「孤独」の深度が3段階くらい深まって物語は終わる。さらにいえば、ジョニー、マック、サイモンは3人とも、なぜか子ども時代に親や周りから愛されたという実感がないまま大人になっていることを思うと、作品に漂う孤独感は、さらに2段階くらい深まって、はっきりいって、救いがない感じ。まあ逆に、清々しいといえば清々しいといえるかもしれません。

シリアスで重い作品だけど、わたしはこれ、嫌いじゃない。だけど――ただ一点、どうにもイマイチだったのは、翻訳で使われている言葉がしっくりこなかったこと。「おみこしをあげる」とか、ちょっと言い回しが古くさい感じ。わたしが普段慣れ親しみ、使っている言葉や言い回しが、くだけすぎ・乱暴気味なのかもしれないけれど。

ふと、これを書きながら、「相棒」を「伴侶」という言葉に置き換えて考えてみたのだが、どうも座りが悪い。――気のせい?
関連記事

Tags: テリー・ホワイト 海外小説 警検麻ヤ ゲイ

Comment 2

2007.07.10
Tue
20:54

ぽーちゅらか #6Y5jgf3c

URL

lucindaさん、こんにちは。この本、もう読んでくれたんですね。
私がこれを初版で読んだ時は、知らなかっただけかもしれませんがまだBLというジャンルが確立してなかったような記憶があります。なので、やおい的なものを、こういう普通の本に求めていた時に出会って表紙買いしたら(腐女子を狙っていたかのように”真夜中の”と来たらやおい臭ありでした)、期待以上で吃驚しました。今でいうアメリカの高村薫さん?な感じでしょうか。後年、再読した時わたしも少し古臭い印象がありましたが、原因は言い回しだったんですね。「おみこしをあげる」は無いですよね~(笑)。これ原題はズバリ、トライアングルですが、邦題の相棒は当ってますね。伴侶に近いのですが、共犯とか相棒がしっくりくると思います。この方の本はほぼ全部読みました。どれもそれっぽいですが、暗さも切なさもこれが一番濃かったです。この本を読んだ頃はベトナム戦争ものがマイブームで映画でも「ディア・ハンター」とか「バーディ」とかに萌えておりました。生死を潜り抜けたもの同志の濃い絆とか共感が萌えを呼んだのかもしれません。

編集 | 返信 | 
2007.07.10
Tue
21:18

lucinda #-

URL

訳語に突っ込みつつも、最後まで読まずにはいられませんでした。教えてくださって、ほんと、ありがとうございます! それにしても…

>やおい的なものを、こういう普通の本に求めていた時に出会って表紙買いしたら…
これはすごい嗅覚じゃないかと。さすがです!

原題は「トライアングル」ですか。まさにそうですよね。そして、伴侶ではなく相棒という言葉がしっくりくるというのも、ぽーちゅらかさんのコメントを読んで納得しました。うん、「共犯」って感じ、します。

やっぱり、戦場は濃い絆が生まれやすいということなんでしょうかね。この作品を読んで、あんまり似てないと思いつつ、なんだか「タクシー・ドライバー」を思い出したわたしです。「バーディ」は途中までしか観てなくて……そのうちきちんと、また観てみますね。

編集 | 返信 | 

Latest Posts