男の子育て/「コンティニュー?」「龍と竜」「保育士さんはパパに夢中」

 15,2007 12:08
主役キャラに子どもがいるという設定のBL作品の割合って、多めなんだろうか? あるいは、だんだん増えてきているのかしら?
コンティニュー?コンティニュー?
いつき 朔夜 金 ひかる

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妻に逃げられ、赤ん坊の娘・美里を抱えてリストラされた絢人。再就職もうまくいかない中、ゲームソフト会社を経営する藤堂から、「月30万でどうだ」と誘われたのが、彼の愛人になることだった。生活のため、やむなく契約した絢人だったが……。

冒頭で、絢人は妻から一方的に三行半を突きつけられるのだが、その方法がすごい。だって、仕事から深夜帰宅した絢人に宛てて、「離婚届は封筒の中です」と置き手紙が残されているんですよ! いきなりかよ…って、絢人じゃなくても思った。でも、こういうことをやる女性って、想像できないことはないなぁ…。

それまで育児にノータッチだった絢人は、元妻の身寄りにも自分の身寄りにも縁が薄く、美里の育児すべてが自分に降りかかり、結果、欠勤や早退、遅刻が続いて会社をクビになる。ちょっとこのあたり、読んでいて切ない。子どもが突然熱を出すとか、発疹するとかって、周りでもよく聞くけど、会社はそんなことはわかっちゃくれないのよね。

とはいえ……いきなり、男の愛人になることで月30万、という仕事があるものなのか……。仮に百歩譲ってあったとて、そんな仕事をたとえ子どものいる生活のためとはいえ受け入れて、ずっと続けられるものなのか……。よーく考えたら疑問でいっぱいなのだが、わりと淡々とストーリーが展開していくせいか、「ありえん!」と投げ出したくならないのは、作者のいつき朔夜さんの文章力ゆえかもしれない。

いつしかお互いへの愛情を自覚して、一緒に暮らし始める絢人と藤堂。いろいろなトラブルやアクシデントに見舞われるが、そのうちの7割くらいは、美里絡み。そして美里は、物語の冒頭では赤ん坊だったのに、終盤には小学生に成長しているのだ。娘なくしては考えられない、絢人と藤堂の愛の歴史。

とかいいながら、わたしが一番読んでいてハラハラしたトラブルは、美里はあんまり関係ない、絢人と新しい上司の、人気マンガ家原作のゲームソフト制作をめぐっての対立だったんですけどね。

美里は、本当の父親である絢人と、藤堂、そして母親の再婚相手と、3人の父親を持つという、ちょっとぜいたくな境遇だ。こういう娘さんは、どんな風に成長するんだろう……なんだかおじさんに大人気の娘さんになりそうだなぁ…などと、読みながら思うわたしだった。そして、歯医者で出会ったママ友(?)で実は人気マンガ家・梶谷さんのカッコよさが、やたらと印象的に感じられたのだった。

龍と竜龍と竜
綺月 陣 亜樹良 のりかず

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両親を亡くし、幼い弟・颯太と二人暮しの乙部竜城は、生活のため、昼はカフェで、夜はホストクラブでバイトをしている。カフェの常連客が、一ノ瀬組幹部・石神龍一郎だと知ったのは、ホストクラブでトラブルに巻き込まれたのがきっかけ。怪我をした竜城を自宅まで送ってくれた龍一郎は、以来、何かと理由をつけては竜城のアパートにやってくるのだが…。

ヤクザに幼児かぁ…と思いつつ、予想以上に面白いと思ったのはなぜなのか。いろいろ考えるに、龍一郎のヤクザっぷりがあまり目立たず、その言動と行動に筋が通っているように感じられたのと、保育園児の颯太が、複雑な生育環境のせいでちょっと人見知りなところに、思わず肩入れしたくなったからかも。

竜城も若いのに、真直ぐで前向きでいいコなんだけど、ちょっと肩に力が入っている感じ。それを、龍一郎がうまく解してあげるところが……いいですね。

颯太の可愛さは、ここで取り上げた作品に登場した子どもの中では図抜けていて、そりゃあ、龍一郎もメロメロになるよね…と思っていたら――

龍と竜~白露龍と竜~白露
綺月 陣

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極道ながら子ども好きな龍一郎をいつしか愛するようになった竜城は、龍一郎と暮らすように。ある日、組同士のいざこざで、龍一郎の身に危険が迫る。

最近出た続巻の中では、なんだかちょっと小悪魔っぽくなっている颯太なのだった。この子は将来、どんな子になるんだか……。

続巻は、「『極妻』になった竜城」という面がやたらと強調され、ピンチはあったもののお2人とも幸せそうで何よりっすね――という感じ。龍一郎のヤクザの顔も、前巻より強く打ち出されている気がするし。そうだなぁ……続巻だから当たり前といえば当たり前なんだけど、これ、まさに前巻の「その後」というか「後日譚」という雰囲気。前巻のような緊張感は望めなかったのが、個人的には物足りない感じ。

保育士さんはパパに夢中保育士さんはパパに夢中
森本 あき 大和 名瀬

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保育士・及川海晴の好きな人は、園児のパパでバツイチのサラリーマンの高村有吾。エリートでカッコいい高村は、保育園でも先生やママに人気だ。ある日、忘れ物を届けに高村宅に行った海晴は、普段と全然違う不器用な高村を目の当たりにする――。

なんだこのいかにも甘そうな絵は――! と思いつつも、レビューでわりと好評だったよなぁ…とつい買ってしまったのだけど。

――案外ノッて読んでいる自分がいた。いや、こう言っちゃナンなんだけど、とくに好きなキャラがいるというわけでもないし、ストーリーも、ひたすら「海晴の恋愛が成就するまで」を追っている感じで、ハデな事件が起きたとか、重大なトラブルに巻き込まれたとかいう起伏があるわけでもない。それでもキライじゃないのは――うーん、やはり、海晴の片思い中の苦しみや戸惑いが、少女マンガチックだけど丁寧に描かれているところなのかしら……断言できないけど、それしか思い浮かびません。

保育士さんはパパのもの保育士さんはパパのもの
森本 あき

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恋人同士になった海晴と高村だが、まだセックスはしていない。いざという時に、なぜか高村の子どもの有也が入ってくるのだ。そんなある日、保育園のお泊り会で、高村と二人きりになれるチャンスがやってくる。

この作品も今年の春に続巻が出た。「片思いの相手・高村も、実は海晴が好きでした<キャッ」と、まさに少女マンガの王道みたいなストーリーだった前巻だけど、続巻では「男同士だけど家族(=有也)に認められたい」と、海晴が奮闘する。というか、有也が、海晴と高村がイチャつくたびに目を覚ましたり熱を出したりする――というシチュエーションは、実はほかの2作品にも登場するのだ。これ、けっこうよくある現実的状況、ということなのかもしれないですね。

続巻も、「なかなか最後までセックスできない」という悩み以外には、これといった起伏はない。相変わらず保育園児とは思えないしっかり者の有也が、海晴が家族になることを喜んでハッピーエンド。そういえば、この作品だけ、受けではなく攻めに子どもがいる設定。ほかの作品より「ニ人の関係」が重点的に書かれているのも、そのせいなんだろうか。

ところで作品には関係ないけど、この続巻を読みたくて書店を3件ハシゴしてまで買い求めた自分に、我ながら呆然としたことを付け加えておく。オタク系じゃない書店のレジに、「いかにもBL」な表紙のこの本を差し出しながら、とうとうヤキがまわったか、わたし――と、ちょっと思ったのだった。ああ…。

どの作品も、自分の子どもじゃないのに、恋人の子どもを溺愛する攻め(「保育士…」は受けだけど)が登場する設定が、ロマンだなぁと思う。おまけに、お約束の床上手。なかなかいないと思うんですよ、そういうデキた人。でも、これが「BL」というのが、ある意味シニカルというかなんというか。「理想の家庭」は、男女よりも男同士の方が、素直に夢を見られるってことなのか――。

主人公たちの育児の様子はかなりリアルで、これはやっぱり、実際の経験が生かされているんでしょうかね。男の育児、という印象が一番強かったのは、「保育士さん…」の高村だけど、それはやっぱり、高村が攻めだから?

子どものいる方の感想は、また違うかもしれないですね。
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Tags: いつき朔夜 綺月陣 森本あき 金ひかる 亜樹良のりかず 大和名瀬 擬似家族 警検麻ヤ 複数レビュー

Comment 6

2007.06.16
Sat
22:46

kitkat #tHX44QXM

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育児ものって昔からあるような気がします。古くは、斑鳩サハラさんの「先生と先生のロマンス」とか越智千文さんのマンガにも、保育士さんと離婚されたパパ(題名忘れました)っていうのも古かったと思います。
最近、また流行ってきてるのは、主腐が増えてるって事でしょうか?(笑)

編集 | 返信 | 
2007.06.16
Sat
23:18

miriam #SFo5/nok

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こどもとパパ

自分の父親が母親と別れて男性と付き合うって、どんな心境なのかな・・・?
とそんな話ありました、マンガですが。今市子さんの「大人の問題」。こちらはすでに成長しきっている子供ですが。

子供好き=ワル(ヤクザ)ぶってるけどに意外とイイやつ・・・という少女漫画の王道的な感じがしますがどうなんでしょう?

男性が子育てを積極的にするって、世の中の男性がなかなかしてくれない(できない)点ですよね。だからやっぱりこれも女性が心の底で望んでいる理想の男性像の一部なんじゃないかな~と思います。
床上手はお約束ですよね!(笑)

編集 | 返信 | 
2007.06.17
Sun
01:27

もと #4pDgvQA2

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現役子持ち主腐ですけど、そういや、子供がいるBLって、マンガで「水温む」読んだくらいかなぁ?
しかし、どんなの読んでも一度として子供がホンモノだった事がないので、あれはファンタジーの子供だからと、スルーしてますけどね。
正直どうでもいい。単なる脇役。
ただ、子供いる人がそんなに夢見れる?ってのは感じてしまうかな~。そこが男と女の違い?
子供のいる家で至るとか、なんか想像つかないんだけどね~(笑)

全然関係ないんですけど、マンガで一度だけその子供のリアルさに舌を巻いたのは「愛してるぜ★ベイベ」という、りぼん掲載だった少女マンガのみですね。
幼稚園児とそれの世話を申し付かった男子高校生の話なんだけど、やたらにナチュラルで、関係性にかなり萌えちゃいましたね。

編集 | 返信 | 
2007.06.18
Mon
05:09

lucinda #-

URL

コメントレスが遅れ気味ですみません。ちょっと体力のなさを実感する日々です……実感するのは、今年何回目なんだか…。

>kitkatさん
育児モノ増加というより、主腐増加、の方に現実味を感じますね、いわれてみれば。
保育士さんと離婚したパパは、けっこうグッとくるシチュなのかもですね。

>miriam先輩
「大人の問題」、そういうお話だったんですね。
>少女漫画の王道的な感じ
うんうん。とくにそれが攻め様の場合は、その雰囲気が濃厚な気がします。
男性が育児に超積極的に携わる、妻と子どもを溺愛するというのは、わたしも、女性の願望の表れかなぁと思いますね。

>もとさん
お待ちしていました(笑)。
>一度として子供がホンモノだった事がない
深い……深いコメントです。でき過ぎだよなぁ…こんな子ども……と、読んでいて思わないでもないのですが、そういうことなんですかね。
やっぱり、ファンタジーなBLの、さらにファンタジーなジャンル(?)かもしれませんね、育児モノ。

「愛してるぜ★ベイベ」、知らなかったんですが……「りぼん」掲載なんですね。そういえば、「赤ちゃんとぼく」とかいうマンガもありましたよね。それもたしか、男の子が小さな弟だか妹だかを世話する話だったような……。赤ちゃんとそれを世話する男の子、も、グッとくるシチュのひとつなのか……。

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2007.06.21
Thu
01:07

もと #4pDgvQA2

URL

「赤ちゃんと僕」、あれも微妙にホンモノじゃなかったかな~。でもかなりいい線行ってました。
「愛してるぜ★ベイベ」は、いちいち子供の行動が実に子供だったんですよね。で、そのせいで起こる事件もかなりリアル。
よく知ってるな!なんで!?って思ったんですよ。多分作者は20才そこそこの頃の作品のはずなんだけど。あれは不思議。
そうそう、子供を世話する男子ってのはいいですよ、しかも頑張ってやってるんだぞ!って感じじゃなく、ナチュラルにそういう事を始めるんだとポイント高いな。
ベイベでは、男子高校生がそれは必死で幼稚園児のお弁当を作るんですけど、それが徐々にレベルアップしていくのが非常に萌えた!(笑)
あれは男子高校生もリアルだったな、うん。でもって、非常にかわいかった。ああいうの欲しかったな。

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2007.06.21
Thu
18:49

lucinda #-

URL

子どもの行動が子ども。わかるような、でもやっぱり想像できないような…。周りに子どもがいても、四六時中一緒にいるわけではないので、そのあたりの想像力に限界がありますね、わたし。
でも20歳そこそこの人がそんなにリアルな子どもを描けるってのは興味深いですね。男子高校生もリアルってことですし…うーむ。

子どもを世話する男子、なんとなく、料理をはじめとした家事が得意な男子とちょっと似たような「よさ」を感じるなぁ…。

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