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今月の表紙買い5/つめたい、あなた・セルナンバー8・有罪

 20,2007 15:10
今回の「表紙買い」作品、どれもちょっぴりダークな雰囲気。なぜだ――!?

つめたい、あなたつめたい、あなた
松岡 なつき

心交社 2001-01
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ブリュッセルに本拠を置く新進気鋭のバレエ団に所属する陽嗣は、ある日、アルゼンチン・タンゴを男同士の喧嘩として描いた新作「エスパーダ」の主役の一人として抜擢されることに。競演するもう一人の主役は、アルゼンチン・タンゴ界の若き踊り手・ルディ。ルディの踊りに、陽嗣は惹きつけられるのだが――。

「表紙買い」だというのに、アマゾンではどうしたことか表紙が表示されていない――。そこで、急遽デジカメで撮影した表紙をアップしてみた。
P5200131.jpg

なんかちょっと、タカ●ヅカを思わせるような優美さというかなんというか。でも左側の黒髪の男・ルディは、男だとちゃんとわかるところが面白い。そしてブラックタイで2人がダンスのポーズを構えているところが、なかなかステキ……というわけで、いそいそと購入したこの作品。

何よりも感心したのは、作者の松岡なつきさんの、バレエへの情熱というかこだわり。「エスパーダ」の舞台構成は、そのまま本物の舞台に生かせるんじゃないかと思うぐらいしっかりとした作りで、舞台の情景も想像できそうなほど。いやわたし、「エスパーダ」の舞台があったら見たいと、真剣に思ったもの。舞台の緊張感や終幕後の高揚感が、とてもリアルに伝わってくるのだ。同時に、「エスパーダ」の構成や配役、ヨーロッパという地域にある、目には見えない無意識下の人種間の葛藤と偏見も絡ませているところが、技アリという感じ。

ストーリーとしては、反目と和解が交互に展開される、わりとオーソドックスな作りではあるのだけど、わたしとしては、ルディの、タンゴでのパートナー・ミレーヌが登場している時の方が、わりと緊張感が出ていて面白かった気がする。ミレーヌ、人妻なんだけど、ルディのことが好きでたまらないのだ。たとえルディがゲイだとわかっていても。なので、ルディが陽嗣にモーションをかけるのに気が気ではない様子。挿絵のミレーヌ、ちょっと中尾ミエに似ているんだけど、いえ、わたし、好きですよ、中尾ミエ。BLに登場する女性で、男前な女性は、好感度が高いような気がするな。

セルナンバー8セルナンバー8
石原 理

リブレ出版 2007-04-10
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凶暴なナギと知能犯のコージは、まったく気が合わない状態なのに、互いの感情を共有しあう脱走防止用”神経錠”で繋がれたまま、海上プリズン・アルカトラズJr.から脱走した。実は彼らは、最高の人工知能「最(サイ)」を作るための実験材料で、脱走さえも監視されている状況。だがそんな2人に、いつしか本当の絆が芽生え始め――。

表紙というより、リブレの作品紹介を見てものすごく惹かれた作品。互いの感情を共有しあう「神経錠」なんて、そんな設定、よく思いつくなぁ…と思ったのだ。

実際、ストーリーの構成も「よくこんなこと、考えるなぁ…」と思うことの連続。なんとなく、映画「ブレード・ランナー」や、ウィリアム・ギブソンのSF小説「ニューロマンサー(わたしが唯一読んだSFだ…)の世界観を思わせる。湿っぽくなくて、パンキッシュ。キャラの造詣とか関係性とかいう細かいことよりも、この世界観を楽しめ――そんなメッセージを感じるというか、なんというか。

たしかに、主人公のナギとコージの関係が、徐々に近づきお互いに求め合うという風に変化する様子は、この作品のひとつの柱ではあるのだが、それも、猛スピードで駆け抜けるストーリーに、グルグルッと取り込まれていくような――。ナギなんて、人体復刻の実験としてガン遺伝子を持つNO.8セルを移植されたり、人工知能「最」の実験に使われたりと、けっこう酷い目にあわされているのだけど、悲愴さがあまり感じられない。なにしろラストなんて、昏睡状態から復活したナギとコージが、2人で生きていこうと、未来と希望に向かってまた逃げちゃうんだもの。

作品中ほどにある「フリートーク」ページ(あとがきみたいなもの)を読んで初めて知ったのだが、作者の石原理さんは、長いことうつ病に苦しんでいらっしゃったとか。この作品も、以前、同人誌で発表したものをベースに連載されていたらしいのだけど、病気のために休止。病気の「最初の変調」から7年後に仕事に復帰されたということで、ああ、大変だよなぁ、でもよく復帰されたよなぁ…としみじみ思う。うつ病で苦しんでいる人は、わりと身近にもいるので、そのしんどさはいかばかりかと思ってしまうのだ。そんなつらい時期を経て完成されたと思うと、この作品の、明るい希望を思わせるラストに、また別の感慨を抱いてしまうのだった。

有罪―I’m in guilty有罪―I’m in guilty
内田 一奈

宙出版 2007-02
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ヤクザの時期組長である父親を目の前で殺された炯己(けいご)と、護衛につけられた側近の溝上。2人はお互いに、複雑な想いと秘密を持っていた――。表題作ほか4編を収めた作品集。

わたくし、決してヤクザスキーではないと思っているのだけど――この表紙の色使いや雰囲気に、妙に惹かれてしまったのだ。刺青の色使いが印象的だったというか――バックの黒と刺青の赤とタイトル文字の赤が、一つの世界を作り上げている感じがしたというか――。というか、やっぱり「赤」はポイントなのか!? 赤を効かせた表紙デザインに、わたしはフラフラと引き寄せられる傾向があるのかしら!?

表紙の雰囲気を裏切ることなく、内容も、かなり重くダークだった。表題作は親子の因縁が絡んでいる分、ちょっと重め。表紙のキミ、炯己、キミはまだ15歳だったんだね! とちょっとビックリした。そんな子どもに刺青を彫らせるなんて、悪い父親だ。いや、本当の父親じゃなかったけども。

個人的に一番強く印象に残ったのは、香港が舞台の「GARNET」。冷酷に人を殺す反面、過去に父を殺害されて以来幻覚に怯える、香港の大富豪・ブラッドと、彼を殺害するよう依頼を受けたものの、彼に惹かれていく殺し屋のレオンが主人公なのだが……。ブラッドが心から頼りにしている、日本人の宅間が、これがもうズルくてコスい、いけすかないヤツなのだ。あまりにいけすかないヤツなので、こんなヤツを最後まで頼るブラッドが可哀想で可哀想で……。できれば宅間の転落を見たかったのだが(わたしも大概酷い)、まあ仕方ない。

刑事と、彼をつけ狙うストーカーの話「トパーズの月 蜜の夜」は、最初に読んだ時は気づかなかったのだが、さらりとリバだった。というか、最初に気づけよ、わたし。商業誌でも、あるところにはあるんですね、リバ。

作者の内田一奈さんは鹿乃しうこさんのお姉さんだけど、現在、セラピストの勉強をなさっているのだという。
「過激さを求められる流れにのって、『有罪』や『トパーズの月 蜜の夜』のような作品も増えたけど、本来の自分からどんどん遠く感じられる気持ちもあったり、葛藤がまったくなかったわけではなかった」
とあとがきに書かれているのが、妙に胸に残った。「売れる作品」と「描きたい作品」のジレンマというのでしょうか――読む方は、「すごーい」「おもしろーい」などと好き勝手な感想を言っているけれど、作り手として、売れてはいても、作品を生み出しているのに消化不良を感じるというのは、しんどいだろうなぁ…と思う。そこの折り合いをつけられないと、あるいは、心を病んでいくんだろうなぁ。

作家さんたちに、「本当はどんな作品を書(描)きたいのか」聞いてみたら、驚くような答えばかりだったりしてね――。
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Tags: 松岡なつき 海老原由里 石原理 内田一奈 警検麻ヤ 表紙買い

Comment 4

2007.05.21
Mon
19:48

ぽーちゅらか #6Y5jgf3c

URL

セルナンバー8

石原理さん大好きです。セルナンバー8も再録編が出ていたのですね。古本のコミックスで読んだだけなので、ラストを知りませんでした。これは読まなくっちゃ。それにしても、石原さんがうつ病に苦しんでらっしゃったのは知りませんでした。寡作な方でなかなか続きが読めないのはそういう理由もあったんですね。現在は子育てもされていて、より忙しそうですが、少し回復されたのでしょうか。何かのインタビューでご本人はやおい萌えはした事がないとおっしゃられていたそうです。(私はその記事を未読なので、記憶違いだったらごめんなさい。)でも、とてもそう思えない位、ワンシーンとか一言のセリフにぞくぞくしてしまいます。石原さんの作品はラブシーンが全くなくても何だか萌えを感じます。

編集 | 返信 | 
2007.05.22
Tue
00:27

lucinda #-

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「セルナンバー8」、ぜひぜひ! わたしとしては、何回も読むたびに、いろいろ発見がある…という感じでした。ははは。

石原さんのマンガは、この「セル…」しか読んでいないのですが、タイトルとかあらすじを見て、読みたい!と思うものがすごく多いんですよね。でもやおい萌えはしたことない…とすると、それでもBLは描けるものなのねぇ…と興味深いです。萌えとBLを描くことは違うのか…考えてみれば、それもアリか、と改めて思ったりして。
「フリートーク」を読むと、結婚と出産が、復活の契機になったようです。復活後の石原作品を、ぜひ。

編集 | 返信 | 
2007.05.22
Tue
22:48

miriam #SFo5/nok

URL

セルナンバー8

石原作品はBL以外も良いですよ!ぜひ!
絶版になってるちょっと昔のビブロス系のSFモノがオススメです(ブックオフとかに100円で結構出てます)なんだったらうちにありますし(笑)
あとlucinda姉様にはぜひ同人誌版の「セルナンバー8」を読み比べて頂きたいです。

編集 | 返信 | 
2007.05.23
Wed
00:26

lucinda #-

URL

そうなのかー!! 「セルナンバー8」は、ビブロス系でも未完だったようですが、完結していた作品も、けっこう復刊され始めてますよね。
この前、ヲタ系書店で「あふれそうなプール」が文庫版になっていたのを発見。今はそれを購入予定です。

>同人誌版の「セルナンバー8」を読み比べて
ええええっ!? 同人誌版は、また何かが違うんでしょうか……読み比べたいです、ぜひとも。乞う合宿!ですかね。

編集 | 返信 | 

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