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エレベーターで君のとこまで。(鳩村衣杏)

 17,2007 01:44
「ドアをノックするのは誰?」を読んで以来、けっこう集中的に読んでいる鳩村衣杏さん。どれもなかなか面白く、満足度も高めではあるのだけど、この作品、それまで読んでいた鳩村作品のカラーとちょっと違うところに「おおっ!」と驚かされ、内容もかなりお気に入り。

エレベーターで君のとこまで。エレベーターで君のとこまで。
鳩村 衣杏 笹生 コーイチ

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長身に見合わぬ乙女心を持つ少女漫画家・能島平と、身体は華奢だが男前なIT会社のサラリーマン・窪田修里は高校時代の同級生で元親友同士。偶然にも職場が同じビル内にあることから、高校卒業時の「絶交」以来、7年ぶりに再会する。実は平は、高校時代から修里に片思いしており、修里をモデルにマンガを連載するほど。平は再開を機に、どうにか関係を修復したいと考えるのだが――。

乙女攻めですよ、乙女攻め! 平、なんだかどこかで見たことある気がする…と思ったら、「オトメン(乙男)」の飛鳥に、ちょこっと似ている感じ。ただし平は、自分自身が人気少女マンガ家ですけどね。

平の乙女っぷりはどんなものかというと――1)大好きな修里を前にすると、言いたいことがうまく伝えられない。2)修里と再会後、興奮のあまり鼻血を出し、マネージャーとアシスタントによってシャツを着替えさせられた。3)修里が社長の大庭に頭をクシャクシャと撫でられているのを目撃して、物陰で嫉妬のあまり呼吸困難に陥った。――と、こんな具合。まあ、最も「乙女やね…」と思ったのは、高校時代、修里との日常を「ちっちゃいちゃんとおっきいくん」という4コママンガに描いていたことかしら。しかも描かれている内容が、授業中に渡されたメモのことや、アイスキャンディに同時に「アタリ」が出たことなどなど、本当に他愛ないことばかりらしいのが、これまたカワイイ。なんだか、いかにも恋って感じだ。

でも平の乙女っぷりは、しょせん、「攻め」の乙女っぷり。実は受けの修里もかなりの乙女だと、わたしは見た。だって、「絶交」を言い渡した時の修里のセリフなんて、

「嘘つき…信じてたのに」

ですよ? 可愛すぎじゃなかろうか。しかも見た目が、「ちっこくて元気で熱血で、キラキラ涙目」(by平)らしく、これってまんま少女マンガのヒロインだとしか言いようがない。実際、平がひそかに自分をモデルにマンガを連載していると知った時も、怒るどころか、最新巻以外の全巻を大人買いして読みふけり、いたく感動して平のマンションまで駆けつけるなど、なかなか行動的。こういうところは、あらすじで紹介されている「男前」な部分といえるのだろうけど、読んでいる側としては、恋心にも押されて行動しているようにも見えるので、やっぱり「乙女」に感じてしまうのだ。

そんな乙女な2人が主役なので、当然、ストーリーも少女マンガチックな雰囲気に満ち満ちて、とってもラブリー。「2人のすれ違い」>「お互いに対する嫉妬」>「ヒロインのピンチを救うヒーロー」>「仲直りかつ思いが通じ合ってハッピーエンド」と、ストーリーの流れも、ラブコメな少女マンガの王道を突っ走っているのだった。

鳩村さんらしいなぁと思ったのは、同時収録されている、修里の会社の社長・大庭と、平のマネージャー・珠紀のカップリングを描いた「社長さんのお気に入り」。

珠紀は平の大学時代の漫研の先輩で、自分自身も漫画家を目指していたのだが、平の才能を前に自分の限界を悟り、裏で支えるマネージャーに徹しているという、ちょっと屈折したキャラ。しかもリアリストで、一見スキがなく有能そのもの。大庭は、そんな珠紀の性格に潜む子どもっぽい部分を見抜き、「無理するな。俺に甘えろよ」とばかりに珠紀の心に入り込む。ちょっと変わり者だけど、なかなかいい男だ、大庭。

なんというか――超個人的な印象ではあるのだけど、こういう、「しっかり者の受けの心の中にある、受け自身も気づかない『誰かにわかってほしい・甘えたい』という願望を感じ取ってくれる攻め」という組み合わせが、鳩村作品ならではという感じがするのだ。

ま、有能でしっかり者の珠紀も、暗所恐怖症という弱点があり、これもまた、乙女っぽい設定って感じがしますけどね。

まるまる1冊、乙女っぽいキラキラ感でいっぱい。読み終わってこれほど、良質な(※重要)少女マンガを読み終えた気持ちに似ていると実感した作品はない気がする。

そうそう、乱菊さんのブログの「ぷちもえ」で、「乙女攻め」と紹介されていた樹要さんの「ワガママだけど愛しくて」(1巻)を古本屋で見つけ、読んでみたのだが――いや、たしかにカワイイかったけど、個人的には、乙女攻め度の高さは、「エレベーター…」の方に軍配を挙げたいと思う。

ヘタレ攻めとワンコ攻めと乙女攻めの違いを、いつかじっくり考えてみたい――ヒマな時に。

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Tags: 鳩村衣杏 笹生コーイチ 乙女男子

Comment 7

2007.05.17
Thu
07:34

乱菊 #pMXl.iIs

URL

ヘタレ攻めとワンコ攻めと乙女攻めの違い・・・むむむ。
確かに似て非なるものですよね。
男度の違いかしら?
それとも従順度?
関係ないですが、オネエ(オカマ?笑)な人が攻めるときに男に豹変するのは好きです(*´∀`)
普通の男・恋のコーちゃんとか、西洋骨董同人誌の翔平さんとか~。
あれはナニ攻めでしょうか・・・オカマ攻め?
そのままですね・・・。

ワガママだけど~のナツは、巻を追うごとに乙女度を増してますよ♪
シャンプーハットやられた日にゃあグハッとなりました。
でも攻めるときはけっこうオトコだからツボ☆

編集 | 返信 | 
2007.05.17
Thu
20:31

ななみ #eDwyEylU

URL

Luchindaさんの感想読んで是非読みたいと思いました。鳩村さんの作品は5作品読みましたが、全部良かったです!Luchindaさんが言う通り受けの自分でも気付かない心のSOSをしっかり攻めが包んでくれる…みたいな所がすごく好きです。
こちらの乙女攻めいいですね。乙男の飛鳥も大好きですよ~
ヘタレでも乙女でもいざというときに見せる男気がギャップがあっていいのかな~(*^_^*)
Luchindaさんの分析楽しみにしてますね。

編集 | 返信 | 
2007.05.17
Thu
22:23

ようこ #onVA9wqc

URL

ヘタレ攻めは気弱で流されやすく人がよい
ワンコ攻めはおおらかでおっとりしている
乙女攻めは夢見がちな清純派

…というイメージがあります~。
ヘタレ攻めとワンコ攻めは被ってる部分もありそうですが(笑)
ワンコ攻めって、あまり吠えない大型犬のイメージです。

編集 | 返信 | 
2007.05.17
Thu
22:35

乱菊 #pMXl.iIs

URL

先ほど樹さんのコミックスを1冊読んだんですが、オカマ攻めでした。
本気のオカマでした。
オカマ高校生・・・(;´∀`)
でもそれについては周りは特に疑問を持ってない感じでした。
ああBLファンタジー。
樹要さんは攻めがもれなくオカマ臭ただよってます。
作者本人はオカマ攻めをすごく推しているようですが、マイナー過ぎてなかなか担当さんからもOKもらえないようですね。

ヘタレでもワンコでも乙女でも、ここぞという時には男なんですが、オカマ攻めは相手を押さえつけながらも「好きよ」って言ってました。
かなりフシギワールドです。
別枠ですね・・・。

編集 | 返信 | 
2007.05.18
Fri
01:07

lucinda #-

URL

>乱菊さん
大雑把に括ると、「決して強引じゃない感じの攻め」なのですが、乙女攻めだと、コトに至る時に、ヘタレよりも強引になるような。そう考えると、男度の違いなんですかね? 男度というか、強引度?
そしてオカマ攻め。たしか、「ワガママだけど…」の作者紹介のところにも出ていた言葉のような気がしますが、激しく気になるっ! でもいわれてみれば、「普通の男・恋」のコーちゃんは、そういう範疇なのかなぁ……。
いや、なんだか別枠にしたくない感じ(笑)。ヘタレ・ワンコ・乙女・オカマって、こうして言葉を並べると、けっこうインパクトあるなぁ…と感心しました。

>ななみさん
ななみさんも鳩村作品、お好きなんですね。なんだか安心して読める感じがしますよね。
>ヘタレでも乙女でもいざというときに見せる男気がギャップがあっていいのかな~
うん、たしかに、男気、感じますよね。男気の露出度の違いというセンでしょうかね……?

>ようこさん
なるほど~。うん、ワンコ攻めは、大型犬のイメージ、あります。ワンコとヘタレの違いが、一番想像がつかなかったので、なんか納得。
そしてたしかに、乙女攻めは妄想的夢が入ってますよね。

こうしてみると、「ヘタレ・ワンコ」と「乙女・オカマ」の括りでいけるのかしら………いろいろあるなぁ…。

編集 | 返信 | 
2007.05.20
Sun
19:43

miriam #SFo5/nok

URL

へたれとワンコと乙女

ヘタレ攻・・・普段は気弱だったり、受より弱い感じの攻め。ヘタレ攻めの場合、多くの場合ヘタレのくせに床上手だったり、いきなり強気になる傾向が。
ワンコ攻・・・受のことを盲目的に好き(イヌのように従順)でもワンコ攻めの場合、多くは濡れ場では狼の如く獣と化す。
乙女攻・・・夢見がちな想像力(妄想力?)豊かな攻め。ベッドの中でもオトメがキュン死するような台詞を散りばめる。

こんな感じでしょーか(笑)

ワンコ攻めは年下攻めが多いようですね。だいたい背が高くてガタイがよくて気が良くて力持ちタイプ。
ヘタレは同級生が多いかな。幼馴染とか。
乙女攻めは・・・うーん、なんだろう、すごく繊細な感じですかね?

編集 | 返信 | 
2007.05.22
Tue
00:21

lucinda #-

URL

うおぉぉぉ…わかりやすい解説、ありがとうございます! とくに、設定の部分が、さすが!
ヘタレとワンコの違いが、なんだかよくわかります。ワンコは盲目的に好き、ね。うんうん。盲目的ゆえ、受けに振り回されたりして、ヘタレに見えたりするのか――しかし何はともあれ、濡れ場はイケイケなのね……。

「乙女」って語感に惑わされちゃうなぁと思ったのは、「乙女」は決して、気弱じゃないんですよね。そこんとこ忘れないようにな>自分、と肝に銘じました。

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  • 2007.07.25 (Wed) 08:04 | BL小説 ハード系 おすすめ

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