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ドアをノックするのは誰?(鳩村衣杏)&Charade vol.80

lucinda

あちこちで絶賛されている作品は、やはり面白かった。

ドアをノックするのは誰?ドアをノックするのは誰?
鳩村 衣杏

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大学教授でかなりの遊び人・甲田は、興味本位で美貌のサラリーマン・頼久に交際を申し込むが、すべてを捧げ尽くしてくれる頼久にメロメロに。しかし浮気にも怒らず、むしろ奨めてくれるなど、「三歩下がって、三つ指突いて家を守る」、まるで「妻の鑑」のような頼久と、何かがどんどんズレていき……

頼久は、17歳の時点で両親を亡くし、10歳離れている双子の弟妹を育ててきたという人。でも弟妹はそれぞれに独立して結婚相手を見つけたり就職したりして、いつの間にか自立している。弟妹はもう、子どもの時のように頼久を求めていないし必要としていない。そこへ現れた甲田は、頼久を求め、必要だと口説いてきた。いや、弟妹たちとは違う意味で求めているんだけど――頼久がそこに気づかないというところがおかしい。

頼久が、本の裏表紙にあるあらすじのように、本当に「三歩下がって、三つ指突いて、女遊びに文句ひとつ言わずに、家を守る」風なのが、ひたすらおかしい。甲田の前でずっと丁寧語で控えめな態度なのも、その雰囲気を際立たせているような。甲田と接する頼久だけしか描かれていなかったら、頼久が男だということを忘れそうなほどだ。職場の上司や部下に接するシーンがあるのだけど、そこだけ、まるで別人のように、リーマンな頼久なのだった。

甲田も、「かなりの遊び人」なのに、頼久の前では「かなりのヘタレ」。情事の後、あれほど反省し、あれこれ思い巡らす攻め様は初めてです。個人的にはここで、「甲田、いい人じゃん…」と、甲田の株が上がった。

恋という気持ちに気づいていない時の頼久は、甲田の求めに対して、どうすれば甲田が喜ぶのか、けっこう冷静に考えながら振舞う。頼久に惚れてしまって、頼久の言葉や態度に一喜一憂している甲田とは、かなりの温度差があるのだ。だけどラストで、甲田への恋情に気づいてから、頼久の感情から「冷静」の二文字が消え去ってしまう。その変化に、しみじみと「よかったなぁ…」と思った。一度は投げ出しかけたものの、頼久のことを根気よく待つと決めた甲田も、とてもいい。この作品、けっこう「恋愛」の部分を丁寧に描いているんじゃないかなと思う。

それにしても、冷静な時も、恋に気づいてからも、変わりなく甲田を振り回す頼久は、たしかに「最強の受け」に違いない。

さて、この作品の番外編というか、その後のSSが「Charade vol.80」に載っていた。ここではひたすらラブイチャな甲田と頼久で、まあ、幸せそうで何よりです。念願の墓参りにも行けたしね。

「Charade」には、大好きな「許可証をください!」シリーズの最新作と、小林典雅さんの作品も掲載されていて、個人的にはかなりオイシかった。満腹。「許可証をください!」の新作「放水開始!」は、いよいよISO取得に向けての現場のドタバタが描かれていたのだけど――今回は仕事よりも、前原の母親との絡みの方が大変そうだった。前作で宣言したように、前原は弘との関係を母親に打ち明けたのだけど、母親はまだそれについて自分の中で折り合いがつけられない模様。同性同士でつきあうということを家族や周りへカミングアウトするという、現実生活でも非常に重要な事柄が取り上げられている作品って、あまりないんじゃないかしら。続きが待ち遠しいわ。

小林典雅さんの作品「嘘と誤解は恋のせい」は、もう……! なんというんですか、エッチよりも、そこに至るまでがやっぱりかなりおかしいのだ。タイトルはちょっと、あまりにも「まんま」な感じでアレですけど、まさに、嘘と誤解から恋に発展する様子が笑える。主人公の大学生・結哉が、片思い中のアパートの隣人・和久井に、嘘のアンケートを行うのだが、それに真面目に答えた和久井の回答が、その後のストーリー展開にちょこちょこ反映されていて、クスクス笑ってしまった。

ああ、小林さんの新作、出ないのかしらねぇ……こういう短編を集めた短編集でもいいのよ。出たら速攻買うわ、絶対に。

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Comments 2

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アラスカ
同感です!

 >情事の後、あれほど反省し、あれこれ思い巡らす攻め様
現実の男性も多少は同じだと思うけど、BL小説では珍しい気がします。「起こしてもらうというオプション」に笑いました。

そして小林典雅さんには早く本を出して欲しいです。他にも雑誌掲載作品はあるので、ず~っと待っています。

  • 2007/04/20 (Fri) 09:41
  • REPLY
lucinda

アラスカさんのレビューを、ガマンして読まずに作品を読み、その後、レビューを拝見しました。そして「そうねそうね」とニンマリしていたわたしです。あ、その後紹介されていた「追憶のキスを君は奪う」も、昨日の乙女の街の本屋で見つけたので、買っちゃいました。

>BL小説では珍しい気がします
そうですよね、そうですよね。なんかちょっと、人間味がある……って言い方はヘンかもしれませんが、でもそんな感じがして、わたしは好きです。あら、けっこうわたし、早いとかテクなしとか、そういう攻め様が好きなのかしら……あれ…?

「起こしてもらうというオプション」、そんな言い方があったかと、わたしも笑いました。
小林典雅さんの本、出してほしいですよねぇ。祭りがしたいのに、1冊じゃできません(涙)。ほかの雑誌掲載作品も興味大アリですが…待ちましょう、新作……。

  • 2007/04/21 (Sat) 02:32
  • REPLY