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よしながふみさんの対談集に期待

 10,2007 03:03
「マンガエロティクスf vol.44」で、よしながふみさんと三浦しをんさんの対談が掲載されていると、ようこさんのブログで知り、早速チェックしてみた。

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「よしながふみ×三浦しをん 私たちのマンガ道」が、その対談のタイトル。三浦しをんさんは、BLマンガについてのエッセー「シュミじゃないんだ」を出版するなど、BL好きとして知られている直木賞作家。「シュミじゃないんだ」はまだ読んでいないのだけど、これ、けっこう人気ですよね。ともかく、ようこさんのブログのリンク先に、非常に素晴らしいレビューが掲載されているのだけど、どうしても全文読みたくなって、買ってしまったのだった、マンガエロティクスf。

そして期待は裏切られず――かなり面白かった、この対談。

読み進めると、よしながさんならではの考え方というか、ものの見方を表す印象的な言葉(事柄)が3つほどある。それは「萌え≒抑圧ポイント」「やおいの定義」「二次創作作品≒学説」。

■萌え≒抑圧ポイント
「男の人はね、お前は早く一人前になって金を稼いで妻子を養えと言われる、それ以外の抑圧ってないんですよ。一本道なんです」として、「一本の道と抑圧に矛盾がない」が、それに比べて女性は、「親から受ける抑圧さえ一本道ではない」と話す。おしゃれに関心がなくても関心がありすぎても、彼氏がいいてもなくても、「どうしたのか、なんとかしろ」と言われる。勉強しろと言われつつも、東大まで行かなくてもいいと言われたりもする。「周囲の言うことを全部聞いていると、女の子は頭がおかしくなっちゃうんですよ」というよしながさんのコメントは、「わかるわかるわかります!」という感じ。

「だから、女の子は人によって萌えポイント、つまり抑圧のポイントがみんな違うんですよね。抑圧ポイントがたくさんあるからこそ、女の子はものを考える機会がたくさんあるんだと思います」

日ごろ萌えるだの、どうしただのといろいろ喋り散らし、書き散らしているけど、そうか、萌えポイントは抑圧のポイントか……その見方に、眼からウロコが落ちる思いだった。好きな相手にカワイくなれないツンデレ受け設定や、ひどい仕打ちをしても結局愛がある鬼畜設定なども、その設定に萌える人にとっては、そこがすなわち抑圧ポイントだということかしら。深い――。

この部分を読みながら、かつて「女は男よりも選択しないといけないことが多すぎる」と思っていたことを思い出した。まあ、高校までは一緒だと仮に想定したとしても――卒業後、大学か短大か専門学校か就職か。16で結婚できるのでいきなり結婚という選択をする人もいる。就職活動では、総合職かそうでないか、就職したら結婚するか否か、結婚したら働き続けるか辞めるか、子どもを生むか否か、etc.――もちろん、自分の意思より、周りの状況に即して選択することもあると思う。でもともかく、自身の人生ばかりか、ひょっとしたら他人の人生にも大きく関わる事柄について選択を迫られる機会は、圧倒的に女性の方が多いんじゃないか――と考え、あーあ…なんて思っていたのだ。

男性は男性で大変だということは、もちろんわかっているつもりだけど……でも、「男性より女性の方が抑圧ポイントが多い」という指摘には、思わず大きく肯いてしまったのだった。

■やおいの定義

「志を同じくはしないけれど助け合うこともある」「最後まで平行線をたどりながら、たまに交わることもある」「価値観の違う者同士、でも相手を認めてはいる関係」――これが、よしながさんのいう「やおい」。そしてその定義からすると、やおいは男同士に限らず、男女でも女同士でもありうる。男女設定の例として挙げられているのは、TVドラマ「ケイゾク」の柴田と真山や、「トリック」の山田と上田。女同士の例としては、TVドラマ「きらきらひかる」の刑事(松雪泰子)と監察医(鈴木京香)が挙げられている。

三浦さんが、「百合って対立する構造が絶対条件ではないですよね」「性別でなく、人間関係の在り方がポイントってことですよね」とコメントしていて、たしかに、と納得。

そうか――わたしが百合にトライとかいいながら、なんとなく今ひとつノリきれないのは、そこだったのかもしれない――などと思った。結局、やおい的人間関係の在り方がわたし好みだということなんだな、きっと。

■二次創作作品≒学説
「私は、そのカップリングが成立するまでを原作のエピソードを上手に盛り込んで描いているものを『学説』と呼びます(笑)。そのジャンルの中で、よりカップリングの根拠が強い学説のほうが勝って多数説になっていくわけです」とよしながさん。「学説」のその表現もウマい。日ごろ、どうしてあるオリジナル作品から、圧倒的多数を占めるカップリングが生まれるのか不思議に思っていたけど――なるほど、説得力のある「学説」の影響もあるのかもしれない。

ほかにも、「好きな人には好きと思ってもらえて、気に入らない人には無視されるようなものを描こうと思いました」とか、「つい嫌な人を面白く描いてしまうんです」(例として「フラワー・オブ・ライフ」の真島)など、興味深いコメントがいっぱい。三浦さんと「BLレーベルを出している出版社が共同出資して、ケーブルテレビの1チャンネルを買い取ってBLTVを作ってほしい。大金が入ったらそれにお金を払いたい!」と盛り上がっているところは、微笑ましかった。というか、わたしも「BLTV」、ステキな構想だと思う。

「BLをたくさん知っている人が、BLについて発言しなくては」というコメント、たしかにBLがどういうものなのか、ただのエロではないんだ、というところをアピールするためには必要ではあると思うけど――いっぽうで、趣味なんだから興味のない人に関わらないで欲しい、という気持ちにも共感できるのだ。その中間地点にあるのが、こういうブログなのかもしれないと、ふと思った。

この対談も収録されたよしながさんの対談集(仮タイトル「よしながふみのここだけのおしゃべり」)が、太田出版から刊行されるらしい。対談相手はほかにも、羽海野チカさんや志村貴子さん、やまだないとさんなど、かなり豪華。対談集が出たら、絶対買わなくちゃ――と胸に誓ったのだった。


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Tags: よしながふみ 三浦しをん 腐女子 やおい ジェンダー フェミ?

Comment 6

2007.04.10
Tue
21:30

ぽーちゅらか #6Y5jgf3c

URL

こんにちはlucindaさま。
このお二方は現役バリバリで萌えを体験されているので、読み甲斐があって面白そうですねー。この本はいつもすごく豪華な執筆人なのですが、書名がモロで買いづらかったので(BL雑誌は恥を忍んで買えるのに・・)、こちらで概要が読めて嬉しいです。
その人の抑圧ポイントが萌えに繋がるというのは、その通りですね。でも少し怖い。。。腐女子に長女が多いのもそのせいでしょうか。(私も長女。)あと、男女間のやおいの定義も解ります!このドラマ両方萌えました。そういえば、アンケートの好きな漫画で”あしたのジョー”を入れ忘れてガーッツ!でしたが、白木葉子と矢吹ジョーも私にはそんな感じがしています。学説の話もすごく面白いし、刊行予定の対談集は絶対買います!

編集 | 返信 | 
2007.04.11
Wed
00:11

lucinda #-

URL

「マンガエロティクスf」……買ってみて、久々にヘテロいや、男女の恋愛・セックス描写を読んで、ちょっとクラクラしているわたしです。自分の中で、作家さんの新規開拓ができたような気が、ちょっとしてます(笑)。

わたしも、抑圧ポイントのところを読みながら、ちらっと、第一子長女のことを考えました。第一子長女って、第一子長男とは違った期待とプレッシャーがありますよね。
わたしは、例として挙げられていたドラマは、チョビチョビでしか見ていないのですが、周りでは結構人気でしたねー。オタクが多い証拠かしら(笑)。
「あしたのジョー」も、名作ですよね。きちんと全部見ていないので、いつか読みたいです。ローカル局でアニメを放映していて、「あおい輝彦だったのか…」とヘンなところで感心しながら、それでも見入ってしまいましたっけね……。

編集 | 返信 | 
2007.04.11
Wed
00:54

ようこ #onVA9wqc

URL

やおいは関係性って言うのを聞きますが、そういう意味で言ったら、男女の関係でも『やおいな関係』ってあるんだなあと興味深いですよね。
そういえば昔、JUNEで竹宮恵子さんの漫画道場の講評で、男同士だからという理由ではなく、『こういう場面における言動がJUNE的だ』みたいに書かれてあって、へぇ、と思ったことが。
そう思うと、大前提だと思っていた男同士っていうのは、意外と二次的な問題だったりするのかもしれませんね。

編集 | 返信 | 
2007.04.11
Wed
01:42

lucinda #-

URL

>大前提だと思っていた男同士っていうのは、意外と二次的な問題
わたしも、これは新鮮な発見でしたね。
ただ、必要以上にキャラにわが身を投影させてしまう恐れがない、あるいは客観性を保てるのは、男同士だろうなとは思いますけど……。ここらへん、BL好きな人の間では、よく話されるところでもありますよね。

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2007.04.14
Sat
01:35

もと #4pDgvQA2

URL

そうか~、関係性ね~って、妙に納得しましたね。
そして、昔から私はそういう関係性萌えだったかもしれないと思った。
既に古典に近い「パタリロ」なんかも、思えば何だかんだ言いつつ、バンコランとマライヒは仕事のパートナーとして信頼しあってた感あったからな~。ただ守る・・・じゃなかったなと。
そして、最近ハマったドラマには、かなりの率で「平行線だけど時々交わる」関係のキャラがいたなと。
かなり最近だと「アンフェア」の雪平と安藤とか萌えだったなぁ~。もしこの二人が映画に出てたら、間違いなく見に行ってたでしょう。
そういや、私、いよいよ腐った?と初めてドラマ見て自覚したのは、「HERO」の特別版の時ですかね。
あの時のキムタク演じる検事と、堤真一演じる事務官に萌え過ぎて、途中からドラマを普通に見てるんだか、腐視点で見てるんだか、わかんなくなりましたから(笑)

編集 | 返信 | 
2007.04.16
Mon
11:25

lucinda #-

URL

そうそう、そうなんですよ、わたしもやおい的な関係性に萌えるんだと思います。
バンコランとマライヒも、たしかにそうですよね。「エロイカより愛をこめて」の大佐と伯爵とかもね。
「HERO」は見ていなかったけど、「アンフェア」、あれもそういえば、そうですねー。雪平は、ほかの刑事との絡みも「平行線だけど時々交わる」感じだったような気もします。そうか「HERO」の特別版はそんなことに……。

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