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ラブコメは会話命/「棒投げ橋で待ってて」「豹くんの異常な愛情」

 01,2007 19:06
読み終わったとたん、「面白かった!」とめちゃくちゃ満たされた気分になった本が幸運にも2冊続き、しかも偶然にもどちらもラブコメだった。

シリアスで複雑な作品の、好奇心や感動を刺激する「面白さ」もいいけど、純粋にゲラゲラ笑える「面白さ」も捨てがたいですよね。

棒投げ橋で待ってて棒投げ橋で待ってて
小林 典雅 柚名 ハルヒ

二見書房 2004-11-27
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小児科病棟勤務の堅物看護師・雨市(ういち)のもとへ、ある日突然、幼い頃に一度だけ会ったことのある、美貌の超お坊ちゃま・桜里(おうり)が押しかけてきて、人並みの常識を教えてほしいと頼み込む。雨市は桜里に庶民の暮らしぶりを教えるうちに、桜里のことを可愛く思うようになるのだが…。

突然現れたお坊ちゃま・桜里の言葉遣いが、皇族のように丁寧で、しかし話している内容は他愛なく、時に下品でひたすらおかしい。そして桜里を溺愛する両親や2人の兄の、トンチキでかみ合わない会話の応酬(もちろん丁寧な言葉遣い)も笑えるのだ。父親もお兄様ズも、可愛い桜里が、庶民でしかも男の雨市を愛していることに反対で、ライフルやらアーチェリーやらで威嚇する。母親と教育係の入船は、雨市を認めてはくれているけど、どうにもロマンチックな妄想に走りかけて頼りない。そのありえなさというかナンセンスさというかが……なんかとってもスキ。

「本来なら下賎の者などと関わるはずもなかった」桜里が9歳の時に出会ったのが、自分の知らないことを知っていて(ピングーとかウォーリーとかプーさんとか)、なおかつたくましい「活きのいい七歳の庶民」雨市。以来、桜里にとって雨市は憧れの愛しいヒーローなのだが、同時に、雨市にとっても桜里は、家柄も育ちもまったく違う美しい王子様だというのが面白い。桜里が雨市に自分の気持ちを訥々と訴えるのに、雨市は、両親が自分を置いて早逝したように、桜里もいつか目が覚めて雨市を置いて去っていくかもしれないと怯える。そんな雨市を口説く桜里が、なんだかとっても男らしく、一瞬、「もしかして、じつは桜里×雨市…?」と思ったほど。いやだって、ちょっと引いて見れば、これって、「家柄のいい金持ちの若者が貧しい庶民の娘を見初めて口説く図」だもの。まあ、雨市が桜里の家族に会いに行くところは、「ヒーローがお姫様を掻っ攫う図」といえるかもしれないけど。

同時収録されている「そして今週のふたりは…」は、桜里の二番目の冷徹美形な兄・不律と、雨市の勤務先のおちゃらけドクター・佐川の話。こちらもドタバタ&ナンセンスで笑えます。佐川が桜里に、「これが男同士のやり方」とSMゲイポルノを見せたおかげで、桜里は初めてのくせにイケイケで…というエピソードがあるのだが、不律にはそんな仕打ちはしない。愛の差なのね。

会話はもちろんだけど、キャラやシチュエーションの描写が、小ネタ満載という感じでいい。わたしが思わずフイたのは、「赤毛のアンフリーク」な桜里の母親が、「私としては、アンはギルバートよりマシューと結ばれてほしかった」というところ。えええ、マシューですかー!? なんだか母親のトンチンカンさがちょっと表れている気がする。

著者の小林典雅さんは現役ナースだということで、病棟や雨市の仕事の様子も、さすがにリアル。小林さんの商業誌、現在手に入るのはこの作品だけみたいで、新しい作品が出されないかなぁ…と、ちょっと待ち遠しい。

豹くんの異常な愛情豹くんの異常な愛情
金丸 マキ

集英社 2003-10
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ゲイの国東豹は、運命の相手との出会いを夢見ながらも、恋が長続きしないのが悩みの種。ある日、恋人だった男を追い出していた豹は、隣に住んでいる東大生・瀬良を初めて認識。しかし好みのタイプに程遠い容貌だったため、まったく気にも留めていなかったのだが…

コバルト文庫でBL――なんだか感慨深い。というより、ちょっとした違和感のようなものを感じる。昔読んでいたせいかしら……。口絵カラーイラストがなかったり、登場人物の紹介ページがあったりして、コバルトらしさをあちこちで感じるのだった。

それはさておき。素材はいいのにファッションセンス皆無で、ブランドにとことん弱いという「まったく対象外」の瀬良に、部屋の掃除はしてもらうわ、ご飯は食べさせてもらうわ、恋の相談をもちかけるわ、とにかく甘えまくりでやりたい放題の豹。でも、なんだか憎めません。それは瀬良曰く、「愛情を惜しまず素直に表現する」可愛さゆえかも。

恋をした相手の前では、ちょっと相手に合わせて自分を演じる豹だけど、瀬良の前では気取りがない分、好き勝手なことをしゃべる。瀬良も、そんな豹が気になって、だんだん好きになっていくのだけど……これがなかなか進展しない。

「青い鳥はそばにいる」(=求めるものはすぐ近くにある)と、一瞬、豹が瀬良の気持ちに気づきかけるのだけど、「おれは手近な相手になんか惚れないぞ!」と余計な決意をしたり、気持ちが通じ合ったかと思ったら、行き着けのブティックの店員の言葉「最初にいいと思ったものが結局は一番いい」に囚われて、「おれは最初、瀬良なんか眼中になかったし…」と思い悩む。「華々しい運命的出会い」を夢見るロマンチスト・豹に振り回される瀬良も大変だ。

豹と瀬良が顔を合わせるところといえば、ほとんどがお互いの部屋。シチュエーションとしても、豹が失恋したとか、瀬良が異母妹の訪問に困ったとか、わりと地味目。なんだけど、物語や2人の会話はポンポンと進んで楽しい。ほとんどエロなしだけど、読んだ後の充足感はかなりのもの。金丸マキさんの文章力は、相当高いんじゃないかと思う。山田ユギさんのイラストも、この作品の「おかしいけど、ちょっとしんみり」的な雰囲気にピッタリだと思う。

もともと、軽妙洒脱なテンポのいい文章は好きではあるのだけど、これに加えてラブコメ小説には、会話のノリのよさも欠かせないんじゃないかなと思う。だってコメディだもの。まあ、軽妙か、アップテンポか、ノリがいいかは、人それぞれの感覚ってものがあるけども、今回読んだ2冊は、どっちもわたしの感覚にビビッとハマった。しかもどっちも、またあとで読み返したくなりそうなのも、嬉しいのだった。
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Tags: 小林典雅 金丸マキ 柚名ハルヒ 山田ユギ 複数レビュー

Comment 4

2007.04.03
Tue
16:57

アラスカ #-

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この作家さん、お気に入りです

はじめまして。昨年秋ごろから日参していましたが、ついに我慢しきれずコメントさせていただきました。キレのある文章と、上手い突っ込み、素敵な先輩方との交流を楽しく拝見しています。

この2冊のお話、両方とも大好きで、作家さんも非常に上手いと思うのです!。あまりレビューで取り上げる方も少ないので、すっかりうれしくなりました。
小林さんはその後も雑誌で書いているので、そのうち新刊が出ないかしらと首を長くしています。







編集 | 返信 | 
2007.04.04
Wed
01:19

lucinda #-

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コメントありがとうございます!!

実はわたしも、アラスカさんのブログをたびたび拝見していました。
で、白状すれば、今回取り上げた「棒投げ橋…」、アラスカさんのブログを拝見して、これはすごく面白そうだと思ったのが、読んだきっかけなのです。今回、ブログで取り上げるにあたって、リンクしたいと思いつつ、でもリンクフリーじゃないかも…などとウロウロ考えて、結果、こんな形で取り上げたのですが……やはりなんらかのお知らせをするべきでしたね。本当にすみません。

でもコメントをいただけて、本当に嬉しいです。もう、小林典雅さんのこの作品、ダイスキです。金丸さんの作品もすごく気に入ってます。

こんなヘナチョコ管理人なんですが、また懲りずに遊びにいらしてください!

編集 | 返信 | 
2007.04.20
Fri
21:33

ななみ #eDwyEylU

URL

とても面白い本の紹介ありがとうございました。金丸さんは私も好きです。ユギさんのイラストも素敵ですね。
小林さんは初めて読みました。棒投げ橋~すごく良かったです。
大笑いしてしまいました。佐川×不律がまたいいです。佐川のオヤジギャグがたまんなくて(笑)魅力的な二人でした。オヤジギャグといえばスレイウ゛ァーズシリーズの早瀬さん思い出しました。
いいですよね~オヤジギャグいうオヤジ(笑)かわいいって思ってしまいます。

編集 | 返信 | 
2007.04.21
Sat
02:28

lucinda #-

URL

小林さんの作品、面白いですよねー!!
ああ、なんだか同志が増えたみたいで嬉しいです(大げさな…)。加えて金丸さんもお好きだなんて。やっぱり同志な気持ちです。

たしかに、佐川のオヤジギャグ、懲りないなぁ…という感じで、ちょっと感心したことを思い出しました。

>いいですよね~オヤジギャグいうオヤジ
現実だと、かなりキャラによるんだろうなぁ…と思いつつ。でも佐川はたしかにかわいかった(笑)。けっこう健気でしたよね、佐川。

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