FC2ブログ

カポーティ

 03,2007 01:07
カポーティの代表作「冷血」の執筆にクローズアップした作品。映画が終わって席を立つ時、頭の中がジンジン痺れるような感じがした。


カポーティ コレクターズ・エディション [DVD]カポーティ コレクターズ・エディション [DVD]

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2009-12-23
売り上げランキング : 76398

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

1959年、カンザス州の田舎町で、農家の一家4人が殺害された。この事件を報じた新聞記事に、作家・カポーティは興味を示す。「ノンフィクションの新たな地平を切り拓く」という野望を胸に、カポーティは事件が発生した町を訪れ、刑事や被害者の友人、さらには犯人に接触。とくに、犯人2人のうちの一人、ペリー・スミスに、カポーティは創作意欲を刺激されるのだったが――。


1959年、カンザス州の田舎町で、農家の一家4人が殺害された。この事件を報じた新聞記事に、作家・カポーティは興味を示す。「ノンフィクションの新たな地平を切り拓く」という野望を胸に、カポーティは事件が発生した町を訪れ、刑事や被害者の友人、さらには犯人に接触。とくに、犯人2人のうちの一人、ペリー・スミスに、カポーティは創作意欲を刺激されるのだったが――。


「ティファニーで朝食を」の原作者で有名なカポーティは、自家用機で世界を飛び回るセレブリティ「ジェットセット」の元祖であり、当時としては珍しく、ゲイであることを公表していた作家だった。


わたしのイメージとしては、シニカルだけどスノビッシュ――なのだけど、映画の中のカポーティは、そのイメージは軽く超えていて、執筆のためには何事も辞さないほど自分本位で、なんというか、得たいが知れない感じだった


事件の犯人たちを取材するため、最初の裁判で出た死刑判決を延期させようと、優秀な弁護士を彼らにつける。おかげで、当初は判決から6週間後には死刑執行だったのに、最高裁まで進んでしまうのだが、そうなると、今度は、いつまでたっても小説の結末が書けないと苦悩する。


作品への手応えは感じていて、どうにか完成させたい。そのためには、ペリーら犯人の最終的な判決が欲しい。願わくば死刑が……。しかしカポーティは、不幸な生い立ちを持ち、それゆえ孤独でナイーブなペリーに惹かれ、ペリーを失うことも恐れるのだ


執筆のため、カポーティはペリーに、いろいろな質問をする。ペリーが口をつぐみそうになると、なんとか話を聞きだそうと口説くのだが、それがまるで、愛の告白そのもの。


「君のことをもっと知りたい」などといいながら、熱っぽくペリーを見つめるカポーティ。そんなカポーティに、少しずつ心を開くペリー。ペリーの縋るような視線、カポーティの庇護するようなまなざしが、官能的でドキドキしてしまった。


c1.jpg


そんな濃厚な視線を交わしながらも、カポーティが欲しいのは、小説を完成させるための、事件当日の記憶。ペリーの死刑決定にホッとした顔をするくせに、執行日にはベッドから起き上がれないほど打ちのめされ、ペリーと会話を交わして涙を流す、カポーティの「得体の知れなさ」。


「作品のタイトルは『冷血』にしようと思う」と打ち明けたカポーティに、事件の担当刑事・デューイは「それは事件のことか? それとも犯人に接触するあんた自身のことか?」と切り返す。このセリフ、カポーティその人をズバリと言い表したセリフだ。


カポーティを演じたフィリップ・シーモア・ホフマン。もうほとんど、カポーティその人。カポーティの写真を見ると、外見もそっくり。過去の音源やビデオ、カポーティを知る人に取材して作り上げた「カポーティ」は、生前のカポーティを知らない人から見れば、そのまんま脳に刷り込まれそうなほど。


c2.jpg



しゃなりしゃなりと歩くカポーティ。甲高い声でしゃべり、パーティでみんなの注目を集めるカポーティ。NYの華やかな社交界では誰からももてはやされているけど、カンザスの田舎では浮いてしまう。それが、ものすごく一目瞭然。


「僕は子どもの頃から変わっているといわれていた。外見や話し方で――」と、事件被害者の友人に話すのだけど、カポーティが生まれ育ったアメリカ南部――保守的で男性優位的な町――でなら、それもそうだろうと思う


カポーティの取材に同行する幼馴染の女流作家・ネル・ハーパー・リーを演じたキャサリン・キーナーもいい。カポーティとはまるで正反対の堅実で落ち着いた印象。気まぐれで自分本位なカポーティを、我慢強くサポートする。


我慢強いといえば、カポーティのパートナー・ジャック(ブルース・グリーンウッド)も相当我慢強い。カポーティとジャックが散歩をするシーン、恋人同士の雰囲気が滲み出ていて、けっこう好き。作品中、彼らがそういう関係であることは、あからさまには説明されない。のだけど、それがわかる。


ペリーを演じたクリフトン・コリンズJr.の内向的な雰囲気もよかったなぁ……唇がセクシー。それになんといっても、あの目の表情……「おれのそばにいてくれ」と訴えてまくっているようで、たまりません<妄想


もちろん、刑事・デューイを演じたクリス・クーパーもカッコよかった。クリス・クーパーがカッコいいのは当然なんだけども。


なぜ4人を殺害したのか、どうしてそこを狙ったのか――事件の核心は、カポーティがペリーから聞きだすまで、映画を見ているわたしたちもわからない。


常に曇天のカンザスの町と、重苦しい刑務所の中、そして夜のNYの社交会と、暗く、陰鬱な映画のムードが、映画を見ていると伝染しそうで――でも、目が離せない。


カポーティは、「冷血」発表後、一作も作品を完成させなかったらしいが、こういうことだったのか――と、納得させられそうなほど、妙にリアルな作品だった。


関連記事

Tags: クィア映画 ゲイ カポーティ

Comment 0

Latest Posts