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同人誌の楽しさ・面白さ

lucinda

「同人誌」を初めて見た時、予想を裏切る装丁の美しさや凝ったデザインに、「こんなきれいなものなんだなぁ」と、やたらに感心したことを覚えている。それまでのわたしの中にあった「同人誌」のイメージは、もっと素朴で手作りっぽくて、綴じ代なんてホッチキスでパチパチ止めてある感じで、紙もワラ半紙のようなザラザラした手触りで――というような、今思えば、それは高校の文化祭のプログラム程度なんじゃないかと思うようなシロモノだったのだ。

――まったく失礼だったらありゃしない。今どき、高校の文化祭のプログラムだって、もうちょっとマシだと思う。

また、同人誌からプロが生まれることは知っていたけど、プロになっても同人活動を続ける人がいるということは、腐女子の世界に足を踏み入れるまでは知らなかった。プロ作家って、「とっても遠い世界にいる人」というイメージがあるのに、コツコツと同人誌を作って、しかも自らブースに立って販売すこともある――というのが、ひどく新鮮な気持ちがしたものだ。クリエイターと読者の距離が近くてステキだなぁ。なんだか生産者と消費者が対面販売する、産直市場みたいなイメージ――そんなことを思ったのだった。ちょっと色気のない例えだけど。

パロディとかカバーとかオリジナル作品の番外編とかやおいとか、同人誌だからこその楽しさはたくさんあるけど、下の2冊も、その「同人誌だからこそ」の楽しさが詰まった作品ではなかろうか。

連鎖反応
遠野春日さん、愁堂れなさん、榎田尤利さんの合同誌。しかもイラストは宮本佳野さん。顔ぶれも豪華だけど、作品構造も豪華。最初の物語に登場する脇役が、次の物語の主人公になり、最後の3作目の物語には、1作目の物語の主役が脇役として登場するという、ちょうどクルッと円になるような構造なのだ。映画ではこういう、「一つの設定で複数の監督がそれぞれ作品を撮影し、オムニバス作品にしたり、最終的に一つの作品にまとめたりする」という試みを時々見ることがあるけど、この作品は、まさにそれ。「オムニバス作品」と「一つの作品」の両方の要素を備えているのだ。

物語は、遠野さん、榎田さん、愁堂さんの順。当たり前かもしれないが、それぞれの物語は、それぞれの作家の持ち味や風合いがすごくよく表れていて、遠野さんは、ゴージャスで正統派な雰囲気だし、榎田さんは軽妙でコメディタッチだし、愁堂さんはミステリっぽく迫りつつ切なくしんみり路線という感じ。こんな近いところで、3人の作風の違いを味わえるというのは、同人誌の醍醐味という気がする。

最後の、3人の鼎談も、これまた面白くて…。お互いの作風への感想やら、プライベートでのつながりが垣間見えて楽しい。「遠野さんの作品のキャラは『金○』なんて言わない」「榎田さんの作品のキャラは『可愛いヤツめ』とは言わない」「れなさんなら70歳くらいのキャラでもなんとかしてくれると思った」などなど、こういう会話が、続いているわけです。読みながらニヤニヤしてしまいました。この楽しさは、この同人誌を買った人だけが、得られるものだと思うと、これも同人誌ならではの楽しさ・面白さなんじゃないかな。

冷血
和泉桂さん、木原音瀬さんの合同誌。しかも、タイトル通り、まさに冷酷非道な鬼畜モノ。愛なんてありません。ペンネームも、和泉さんは「泉桂」、木原さんは「原音瀬」にしていて、そんじょそこらの鬼畜とは違う意気込みが、伝わってくるような(ホントか?)

こちらは2つのストーリーに関連性はない。和泉さんの物語は、中国・清朝が舞台で、木原さんのは現代のアラブが舞台。まあ、どっちもホントに愛はないけど、個人的には、木原さんのとことんな鬼畜っぷりに呆然としました。奴隷も強姦も獣姦も出てきます。もう大変。だけど、因果応報を絡めるあたりが、木原さんという感じがする。かつて何の苦労も知らない大金持ちのボンボンだった主人公が、無意識に振りかざしてた「持てる者ゆえの傲慢さ」がポイント、かも。木原さんに比べたら、和泉さんは、一瞬でも、「愛があるかも!?」と思わせるあたりが……期待させちゃいやん。というか、やっぱり作家の持ち味の違いってもんでしょうかね。

どちらの作品もむなしさや悲しさがうっすら漂っていて、「ただひどいだけの鬼畜作品」という感じはしない。しないけど――やっぱりこれ、商業誌では難しいだろうなぁ。そう思うとこれは、同人誌だからこそ、できた作品なんだと思う。

こちらの同人誌でも、和泉さん、木原さんの、お互いへの思いに触れたコメントが面白い。「……これはヤバいかも」という心の内に秘めた萌えを、このお二人はわかりあえるみたい(笑)。

こういう同人誌を読むと、自分の好きな作家さんの意外な一面を知ったりできて、ますますいろいろ、読みたくなるのだと思う。どちらも、これ1回限りではない可能性が高そうなのが、楽しみ。あ、でも、「鬼畜」モノは、もう少し緩めていただいた方が、個人的には好みだけど――。
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Comments 2

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もと

あ、いいな、連鎖反応買えたんですね~!
私も欲しくて買いに行ったけど、インテでは既に売り切れてました。あれだけびっくネームが集まれば、それは売れるのも早かろうとは思ったけど、それだけじゃない面白い作りだったんですね~。今度通販でもいいから買おうかな。
同人誌は面白いです。個人的にはよしながふみさんの同人活動が好きですね。
あの話の続きが読める!という楽しさもありますけど、特に奇をてらわない、実直な本作りが、職人っぽくていいです。在庫もかなり用意されて来られてるので、結構売り切れは遅いですし。
それらの本は、純粋に書く方と読む方の疎通が取れてる気がして、益々その作家さんにほれ込む事に繋がりますね。
同人バブルだった時期、それはそれは凝ったツクリのたっかい本をちょびっと作るみたいなプロ作家さんが多くて、変に煽る商売っぽいのが嫌だなと思ってたもんで、余計にそう思います。
そういえば、私もJ庭で、豪華執筆陣のアンソロ本買ったんですけどね、表紙がありえないくらいエロくてびっくらこきました。こうくるか!みたいな(笑)
あんな事考えた人、凄いと思う。もう本気で驚きました。
あれのシリーズまた出るんだろうか。出るなら買いたいな(笑)

lucinda

「連鎖反応」を買えたのは、ひとえにvivian先輩のおかげ……。3人の作家さんの持ち味が楽しめるので、買ってソンはない本だなぁと思います。これからのイベント売りはしないんでしょうかね。

よしながさんの同人誌は、たしかにシンプルですよね。わたしもとても好きです。しかし量が多くて、追うのが大変だけど…。

>純粋に書く方と読む方の疎通が取れてる気がして
そうそう、わたしもそう思います。だから、たったの1~3日間のイベントで、すごい金額が動くことになるんじゃないかと、ふと思いました。

  • 2007/01/28 (Sun) 22:03
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