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【勝手に祭り】勝手に烏城あきら祭り

 17,2007 11:44
先日、「金の鳥の秘密」を読み終わって、烏城あきらさんの商業作品はめでたくコンプした――感慨深い。誰かの作品をコンプするなんて、BLでは初めてじゃなかろうか。
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大急ぎの仕事が一段落ついて、ちょっと気持ちが浮かれている今、この勢いに乗って、年末、怒涛のように読みまくった烏城あきら作品への思いを、自分勝手にあつ(苦し)く語る「烏城あきら祭り」を、開催することに決定。浮ついているので、ムダに長い文章にご注意ください。

烏城あきらさんの作品で一番最初に読んだものは「許可証をください!」シリーズ。以前レビューをアップしたように、このシリーズの舞台は、中小化学薬品製造業・喜美津化学の工場。BL作品の舞台としては、異色だと思う。
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この作品以外も、「スパイは秘書に落とされる」の舞台は精密機器メーカー、「発明家に手を出すな」は特許事務所と発明家の自宅、と、業務内容がわりと明確で、しかもどれも理系っぽい。烏城さんご本人が理系出身の人かどうかはわからないけど、HPを拝見すると、製造業にお勤めされているらしいので、そのあたりのご経験が作品に生かされているのだと思う。
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リーマンものも含め、キャラクターたちが何らかの仕事をしているという設定だと、「仕事シーン」は、その作品が好きになるかどうかを左右する、けっこう大きなポイントになるんじゃないだろうか。べつにどうしても仕事シーンがなければならないわけじゃないが、あった方がリアリティがあるし、印象に残りやすい。まあ、あっても、「電話・メール・来客対応」というような、どこでやっても同じような内容だと、印象には残らないけど。

その点、烏城さんの作品は、仕事シーンがハンパ無くリアル。上司や部下も当然登場するし、しかもしっかり、存在感を強調している。作品中、仕事でアクシデントが発生すると、登場人物たちと一緒にその行方にハラハラすることもあるくらいだ。とくに「許可証をください!」シリーズや「発明家に手を出すな」は、読みながら

――異物混入や水質汚染などが発生すると、工場はこんなに大変なのか!
――ISOって、こんなに面倒くさいのか。そりゃ取得したところは自慢したくなるって!
――弁理士って、そういう仕事内容だったんですね!

と感心することしきり。「金の鳥…」を読んで、「プラント設計」にフリーランスの世界があると、初めて知ったよ。いや、たんにわたしが物知らずで、メーカー勤務の経験がなければ、理系にヨワい、というだけなのかもしれないんですけど……。

「スパイは…」は、秘書室が舞台なので、現場の仕事風景はほとんど出てこないけど、その代わり、大企業の裏にひそむ、一種お家騒動的な、一族間の力関係が描かれていて、これはこれで面白い。どんな企業にも、こういうキナ臭い部分ってあるんだろうなぁ…と思ってしまう。

さて、烏城さんの作品、どれもエッチシーンが濃いめだと思うんだけど、ふと思ったのは、受けだけでなく、攻めが「感じている」様子も描写されていることが、多いんじゃないか、ということ。

いやいや、ほかの作家さんの作品も、攻めはイロイロ囁いたり、最後の瞬間に「…クッ」とか言ったりはしているけど、烏城さんの場合、それ以上な感じ。喘いだり呻いたりする声が多めなのか…?と思って読み返してみたけど、それだけじゃない。「受けから見た」攻めの表情とか様子が、結構書かれているような。そこがまた、リアルな感じがするのだけど……。

「許可証…」シリーズを読んだ時にハッとしたのだけど、主人公の、大卒で品証部に所属する阿久津(受)と、製造部に所属する前原(攻)は、仕事でもお互いの存在に刺激され、張り合っているが、ベッドでも同じで、2巻で阿久津は、前原に「負けたくないから、もう寝ない!」と啖呵を切る。

この「あいつに負けたくない」という気持ち、相手と対等でいたいという気持ち、これって、BLの真髄だよなぁ…としみじみ思う。同時に、わたしの萌えツボでもあり、もしかしたら、わたしが「リバも平気」な理由のひとつなんじゃないかと、ひそかに思った次第(作品にリバはありません)

「発明家に手を出すな」でも、弁理士の平井(受)と発明家の原田(攻)が、寝ぼけてお互いのモノを擦りあって達するシーンがあるのだが、なんか「やられたからやり返した」(平井視点)みたいな雰囲気で、ちょっと笑える。「男にやられっぱなしになんか、ならないぞ!」と、胸をそらしているみたいな、そんな感じ。

さらに、烏城さんの作品には、ゲイはもちろんだが、レズビアンとか、ストレートだけど女装マニアの男性など、いわゆるセクシャルマイノリティな人がちょこちょこ登場するのだが、彼らが、自分自身の性癖について話すセリフが、けっこう面白くてわたしは好きだ。

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「Lins」で、主人公の宗方が女友達の里村に、恋人未満の美容師・石蕗との関係を話した時、里村は自分がレズビアンであることを告白し、

「人間は食物連鎖から外れて、淘汰も受けないのよ? 生き物としては完全に異端でしょ? なのにどうして生殖だけまっとうしようとするのかな」

と疑問を投げかける。そして、

「人間て、大きくなりすぎた大脳皮質のせいで本能だけでは生きていけないんだから、“楽で気持ちいい”を選ぶべきだと思うの」

と続ける。なるほどねぇ…。

「金の鳥…」に登場する、女装マニアの中沢のセリフもいいのだけど、そこだけ引用したらワケがわからないし、その良さがわからないので、引用はやめておきます……。

あとは、「許可証…」シリーズで、押して押して押しまくる前原のセリフが、なかなかカッコいいと言っておきましょう。「許可証…」シリーズは、前原と阿久津の「男同士の関係」を、家族や会社と、どう折り合いをつけて続けていくか、といったところに言及してきていて、この点も目が離せない。

とにかく、登場人物たちの言葉は、イコール烏城さん自身の考えなんだろうなぁ。社会的に少数な立場である者の気持ちや考えが、まっすぐやわらかい言葉で語られていて、なんだかいいなぁ…と思うのだった。

烏城作品の特徴として最後に挙げたいのは、一癖ある、味のあるお年寄りの存在。「金の鳥…」「許可証…」シリーズ、「発明家に…」の3作に、ものすごい存在感で登場してます。

そしてそういうお年寄りとともにはずせないのが、烏城さんの、リズム感ある軽妙洒脱な文章。わたし、どうも軽妙洒脱でコミカルな文章に弱いみたい。

「許可証…」シリーズの、阿久津の大ボケっぷりや、勝手に人やモノにニックネームをつけて周りを混乱させるサマもかなりおかしいし、焦ってロクなことを口にしない阿久津の描写も笑える。「発明家…」の冒頭、原田が増毛剤の実験をして登場するところは、声に出して笑ってしまった。このテンポのいい文章で、多少馴染みのない事柄も楽しく読める。ステキです。

烏城さんは会社員をしながら執筆をされているということで、作品が出版される頻度はそれほど多くない。でも、出れば、読まずにはいられない。雑誌で発表されている作品、早く文庫やノベルズにならないかなぁ…。そして、「許可証…」シリーズの今後も早く読みたい。

だけど、二束のわらじで倒れてしまわれないように、心から願うばかりです。
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Tags: 勝手に祭り 烏城あきら ガテン系BL セクマイ ジェンダー すがはら竜 文月あつよ 羽根田実 長門サイチ ふさ十次

Comment 9

2007.01.17
Wed
20:40

乱菊 #pMXl.iIs

URL

私も遅まきながら許可証シリーズを読もうかなあと思い、取り寄せている最中です。
なかなか評判良さそうなので・・・。
なのでいま全然読んでない状態なのですが、lucindaさんのレビューを読んでいたら他のも気になってきました~。

>受けだけでなく、攻めが「感じている」様子も描写されている
ほうほう、なるほど。
文章ではあまり気にしたことないのですが、声では同じような事を思ってます。
ああいう手のモノは受けちゃん大絶叫(=昇天)がメインなので、あまり攻め様の声って重要視されていないように思うのですが、私は攻め様の色っぽいため息などを聴くと、その作品の(濡れ場シーンの)評価がぐんとあがるタチです。
攻め声がダイコンだと萎えるんだい!
・・・と、ちょっと話題がずれつつこの辺で~(´∀`*)ノサヨナラ!

編集 | 返信 | 
2007.01.17
Wed
22:30

ようこ #cXVds/aM

URL

許可証シリーズ、私も読んでますが、壮年とか老年の男の人がインパクトがあっていいですよね。
金の鳥も読みましたが、インパクトがありました~。
許可証、若人の恋の行方よりも、辻本さんの若かりし頃の恋の話が気になって仕方ないです(笑)

烏城さんといえば、『こづみ 那巳』名義でビーンズ文庫も書かれてますよね。
読んだことないのですが、FTではどういう作風なのか気になります。
漫画家さんは、名前違っても絵でわかりますが、作家さんだと、PN変えたらわからないですよね。
メジャー(?)どころだと、秋月こおさんとか。

編集 | 返信 | 
2007.01.17
Wed
22:48

lucinda #-

URL

>乱菊さん
大絶叫、の言葉に吹き出してしまいました。スミマセン。
ああ、でも声だと、攻めの色っぽい声が聞こえた方が興奮するかもなぁ…とちょっと思いました。

烏城さんの、攻めの「感じている様子」は、ほかの作家さんより若干多め…な感覚なんですが、余裕のない感じが、けっこう◎ですよ。個人的には、許可証シリーズ、発明家、Linsが、ベスト3って感じです。

>ようこさん
脇キャラの個性の強さも、魅力のひとつですよねー。わたしも、辻本さんの若かりし頃が知りたいです。番外編とかで、ないですかねぇ。もう食いまくりかしら…(笑)

そうそう、烏城さんは別ネームでFTを書かれているんですよね。わたしはFTは、あまり読まないジャンルなので、手を出すかどうかは未定ですが…。

たしかに、作家さんだと、PN変えるとわからないことが多いかもしれません。なんですかね、字面に、惑わされちゃうんですかねぇ。

編集 | 返信 | 
2007.01.18
Thu
08:39

もと #4pDgvQA2

URL

何? 罠? これはまた罠なのですか~!?
あ~、気になるじゃないですか! また蔵書が増えてしまうぅ~~~(;´Д`)
でも、人気なんでしょうね、古本屋でこの方の著書をあまり見ることがありません。今度またチェックしてみよう。<結局読むのかよ

編集 | 返信 | 
2007.01.18
Thu
13:20

lucinda #-

URL

蔵書が増えても、引っ掛かっていただきたいほど、オススメです。多分、お好きじゃないかと<洋服屋の店員か。
わたしにとっては、読んでソンはない作家さんの一人ですよー。

編集 | 返信 | 
2011.01.08
Sat
19:23

月読 #-

URL

大変御無沙汰しております。
月読です。覚えていてくださいますでしょうか・・。
遅ればせながら新年のご挨拶に参りました。
どうぞ今年もよろしくお願いいたします。

偶然ですが、今朝、許可書読みなおしてました(爆)
おっしゃるとーり、攻の快感をここまで書けるのは「烏城」だけでございましょうねえ。
BLの官能はどうしても受が主役になってしまいますから。
このシリーズはすべての意味で女子の大好きな「平等」を感じまする♪

うふふ♪

編集 | 返信 | 
2011.01.13
Thu
00:11

lucinda #-

URL

ありがとうございます!!

月読さん、こちらこそ、ご無沙汰しっぱなしですみません!
今年もどうぞよろしくお願いいたします~。

許可証、そういえば読み直したくなる作品の一つですね。攻めが感じているのって、読んでいると、ムフフ、みたいな気持ちになります。
烏城さんの新作、読みたいですね~!

編集 | 返信 | 
2011.02.07
Mon
00:57

さきち #f1sexrE2

URL

40にして、やおいにハマる

はじめまして、タイトル通り40にして、やおいにハマってしまいつつあります

偶然、許可証シリーズを「発見!」してしまいました


二人は出会い、幸せに暮らしましたとさ、じゃないもろもろといい、まともと言っては失礼すぎる仕事描写といい、もう素敵すぎます

30にして、のタイトルに惹かれて、ついついメールしてしまいました


この方の他の本も、読んでみるつもりです

素敵な解説、ありがとうございました

編集 | 返信 | 
2011.02.07
Mon
22:18

lucinda #-

URL

ありがとうございます~

>さきちさん
はじめまして。コメントありがとうございます!
40にしてハマられましたかw いつなんどき、ビビッとくるかわかんないもんですよね。でも、すでに許可証シリーズを読んでらっしゃるなんて、お目が高いです。

烏城さんは、キャラ同士の「対等感」をすごくうまく出せる人だなーと、思います。この「祭り」のあとに出た作品も、どれも良いです。ぜひ! そしてまた遊びにいらしてくださーい!

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