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『ヒトの世界の歩き方』(イーライ・イーストン )―人間に変身する犬がひたすら可愛く堪りません!

lucinda

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人間に変身できる特殊能力を身につけた元ジャーマンシェパードのローマンが、そりゃあもう最高にキュートでカワイらしくて、ジタバタと悶絶しそうになるんだよ!



ヒトの世界の歩きかた (モノクローム・ロマンス文庫)

人間に変身できる特殊能力を身につけた犬「クイック」たちが住む町・マッドクリークの正式な保安官助手となってはりきるローマン(ジャーマンシェパードのクイック)は、DEAの会議で数ヵ月前の麻薬組織摘発作戦で救出したマットと再会する。マッドクリークに派遣されたマットとローマンは休日を一緒に過ごし、互いに好感を抱き始めるが…!?不思議な町・マッドクリークで繰り広げられる犬と人間の信頼と愛情を描く、好評シリーズ第2弾!



ローマンの可愛さを叫ぶ前に、ささっと物語の設定の説明を。


“人間に変身できる特殊能力を身につけた犬”のことは、作中では「クイック(活性)」と呼ばれていて、クイックになれるイヌは、人間との強い絆を結べた犬のみ。そして、クイックの子供はクイックとして生まれ、4世代目、5世代目のクイックもいる。


クイックは自分たちの秘密がバレたりしないように、クイックたちだけが集まって、カリフォルニアの山深い町・マッドクリークで暮らしている。


さて、ローマンはK-9部隊にいた軍用犬で、アフガニスタンで爆弾探知の仕事をしていた。彼のハンドラーだったジェイムズと強い絆で結ばれていたため、ジェイムズの戦死後、ローマンはクイックに。この物語では、ローマンがクイックになって2年。人間らしくなったけど、まだうっかりすると犬っぽくなってしまう感じ。


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ジャーマンシェパード。凛々しいわ……!


――でも、それがとても、とてもカワイイのだ! 犬から人間に変身できるようになって時間が経ってないローマンだから、犬の時の記憶と人間になってからの驚きや感動が、まだまだビビッド。そこに、読んでいて引き込まれてしまう。


ローマンのカワイさが弾けていた、と個人的に思ったシーンをピックアップしてみた。


■人間のコミュニケーションの取り方に若干面倒くささを感じているシーン

「犬の本能」では、見知らぬ相手にはまずにおいを嗅げばいい。しかもローマンはさまざまなにおいを分類してしっかり覚えこんでいる(さすが軍用犬!)。でも人間になるとそうはいかない。


だからマットと再会したトイレで、先に用を足していたマットから離れた場所で用を足すようにしていたのに、それでもつい、マットの尿のにおいを嗅いで、マットを分析してしまうのだ。カワイイ。


■人間らしくない行動を我慢するシーン

ローマンは、ピックアップトラックの窓が電動で開け閉めできるのがとても気に入っているらしい。運転しながら開け閉めして遊ぶのが好きなのだが、上司のランスから「人間らしくない行動」と指摘され、マットと乗っているときは我慢している。チクショー、カワイイなぁ!


ほかにも、窓を開けて車で走っているときに森から死んだ小動物のにおいをキャッチしたものの、見に行くのを自制したり、森で小動物を追いかけたいと思ったり、不安な時に「クゥン」と鳴きたくなるのをこらえたりと、ローマンの「犬」がちょこちょこ出てくるのが微笑ましい。


■顔が赤らんだり声を出して笑うことに喜んでいるシーン

ローマンにはまだまだ経験していない身体反応があった。それが“恥ずかしくて顔が赤らむ”ことや、“大声で爆笑する”こと。どちらも感情に伴う身体反応だから、もしかしたらローマンがクイックの仲間やマットに出会うまで孤独だったせいで出てこなかったのかもしれない。でもそれを“初体験”して、ローマンは無邪気に喜ぶのだ。カワイイ。


■ハンドラーのジェイムズを折に触れて思い出し、恋しく思うシーン

ローマンが軍用犬だった時のハンドラーのジェイムズは、ローマンが子犬のときから一緒に厳しい訓練をして育て上げた。「お前は世界一の犬だよ」と言って。


折に触れてローマンはジェイムズを思い出すのだが、特にローマンの「イヌの記憶」で辿られる、ジェイムズとの別れのシーンはあまりに切ない。戦場で負傷したローマンを助けようとして被弾し亡くなったジェイムズに、心の中で「大好き!置いていかないで!」と何度も繰り返すローマンが、あまりに可哀そうで、そしていじらしく可愛い。


■性的なことに無知ゆえに、率直に質問してランスをうろたえさせるシーン

ローマンは性的なことを何も知らない。犬の時もただひたすら任務に邁進していたようで、ジェイムズが亡くなってからは、クイックになったものの生きる目的を失い、どうやらそっちの方を意識する機会がなかったようだ。


だがマットと出会って、人間としてはクイックたちの秘密がバレないように“他所者”のマットを見張りつつ、しかし犬としてはマットの人柄に強烈に惹かれていたから、思春期のようにどんどん性的な反応を経験していくのだ。そして、そんな反応を経験するたび、上司のランスに「医者に行った方がいいか」とか、「ティムとのセックスの時にあなたがまたがる方なのか?」と、率直に質問するのが、ウブくておかしくもカワイイ。


しかも質問を受けるたび、性的な話に羞恥心がありながらも、クイックになって間がないローマンを支えなければという責任感のもと、ランスは引きつったり、歯ぎしりしたり、デスクに強く手を押し付けたりなどしながら答える。その様子が、またおかしくてニヤニヤしてしまうのだ。


人間としておかしなことをしたくない、失敗したくないというローマンは大真面目だし切実なほど真剣。でもそれに答えるランスの様子を含めて、コミカルでもある。――これって、わたしの大好物な真剣トンチキなのか……!?


――ふぅぅ、まだまだあるけどとめどないので、このあたりにしておきます。


先に出されたランス編の『月への吠えかた教えます』では、ランス視点で「正直ローマンのことをいまいちつかみきれていないでいた」と評されていたが、この作品ではローマンは内気ながら、ピュアで正直で非常に魅力的なキャラクターになっている。



月への吠えかた教えます (モノクローム・ロマンス文庫)


そのローマンのピュアで正直で素直なところを、ローマンと“つがい”になるマットも感じ取って引き付けられ、とうとう厳格な父親にカミングアウトしてしまう。そりゃね、190センチ近い、いかにも軍人のように鍛えられたマッチョな男が、「自分、不器用ですから」を地で行くような男が、頭を撫でられるのが好きだなんて、可愛すぎますよね、ええ!


――いかん、またカワイイと言ってしまった……。


ところで、この“クイック”という設定は人狼に似ているところはあるけど、登場するクイックたちが人間の姿なのにイヌっぽい行動をしてしまったり(においを嗅ぎまくるとか)、コーヒーの代わりにブロス(肉汁)を好んで飲んだりと、ぐっと犬寄りな雰囲気。


特にこの作品では、クイックになってまだ2年のローマンだから、より犬っぽさが描かれていて、半人半犬みたいに思える部分もある。でも『月への吠えかた教えます』の主人公・ランスは、クイックの親から生まれたクイック4世代目ゆえ、ランスほど犬っぽくはない。クイックにもいろいろあるらしい。


また、犬種によって人間になったクイックの性格や容姿が描き分けられているのも興味深い。寡黙で体格の大きなローマンはジャーマンシェパード、群れを守る使命感と警戒心が強いランスはボーダーコリー、人懐こいデイジーはレトリバー、大柄でフレンドリーなミニーはニューファンドランド、というように。犬の姿を想像すると、二倍楽しめるような気がする。


ローマンは軍用犬という設定だが、去年このニュースを見たとき、すぐに思い出したのがこの作品『ヒトの世界の歩き方』だ。


IS指導者を追い詰めた軍用犬「コナン」、ホワイトハウスでお披露目


軍用犬の訓練の様子を紹介する動画もあった。凄い訓練だ……これも選ばれし隊員と犬なんだろうなぁ……!


【米軍最恐兵士】軍用犬K-9になるまでのハンドラーと犬の特殊訓練映像



「Good boy!」と、ローマンも何度もジェイムズからほめられたんだろうなぁ……と想像する。そしてクイックとなった今は、マットにもそう言って褒められている気がする――。
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