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恋はむしろ中盤からが勝負/許可証をください!シリーズ、放蕩長屋の猫

 20,2006 23:59
「ゲイ&腐男子のBL読書ブログ」や「グラス・エイジ」で紹介されていて、激しく興味を抱いていたこのシリーズ。読みましたよ。

君にもわかるISO~許可証をください!5~君にもわかるISO~許可証をください!5~
烏城 あきら 文月 あつよ

二見書房 2006-11-28
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これは、最新刊の第5巻。中小化学薬品製造業・喜美津化学の品証部に所属する理系大卒のホープ・阿久津と、製造部の若頭・前原を主人公にした、工場が舞台のガテン系作品。わたしが好きな、働くガテン系。

異物混入だとか、渇水だとか、工場廃水の汚染だとか、各巻ごとに、なにかとトラブルが発生するのだけど、阿久津と前原は真正面からそれに取り組んでいく。もちろん、2人だけがトラブルを解決しているわけではない。上司や後輩などがうまーくからんで、時には言い争いながら、時には助けあって、解決していく。そこが、とてもとてもとても! 「仕事の現場」という雰囲気満点で、イイのだ。BLでリーマンというと、誰もがスーツを着て働いているオフィスが舞台なことが多いと思う。その中で、作業着を着て安全靴を履いて、ヘルメットをかぶっている「工場」は、たしかに異色。でも働く場所はビルの中とは限らないし、格好もスーツばかりじゃないもんね。日本経済の一端を支えてきた工業を舞台に選ぶ、というのは、かなり目の付けどころがユニークなんじゃないだろうか。

最新刊は、ISO取得(というかその前段階)がテーマなのだが、製造業の大変さや、中小企業ゆえの苦労が、すごくリアルに伝わってくる。ISOは、言葉は知っていたけど、いざ取得となると、こういう苦労があるのか……。勉強になりました。

阿久津と前原の馴れ初めは――まあ、読んでみれば、お互いにお互いの仕事振りを意識していて、いい意味で刺激しあっていたという伏線があり、前原が強引にコトを進めてしまった――という感じなんだけど。しかしこの作品の魅力は、そこからの2人の関係性だと思う。大抵のBL作品なら、

――お互いに好きになりました・セックスしました・幸せが続く予感を感じさせつつHAPPY END――

な展開だけど、この作品、シリーズ化されていることもあるせいか、2人が恋人になってからの苦悩や焦りがうまく描かれているところが、面白い。

「同性とつきあっていることを親や会社に知られるのはマズい」という気持ちがある一方で、「だからといって相手と別れられない」と、相手と一緒にいるために、阿久津も前原もあれこれ考える。「なんで同じ男を好きになったんだ」と思いながらも、お互いにのめりこんでいく。その葛藤さ加減に、いやぁ…引き込まれていくんですよ、いつのまにか。

仕事上でお互いに「相手に負けたくない」という気持ちを抱きつつも、相手のすごさを心から賞賛する。かなりさわやか。根っこはスポ根ぽいかもしれない。

ここまで読むと、シリアスで緊迫した状況が続く作品なのかと思われるかもしれないが、さにあらず。ムードとしてはほのぼのしていて、どこかコミカル。それもこれも、阿久津のボケっぷりのおかげかもしれない。焦るあまりに口にする言葉で、どんどん墓穴を掘る男・阿久津。わたしの中では、受けの王道をいってます。対する前原は、前進と実行あるのみの、ちょっと強引な職人肌の男。ステキ。

いろいろなレビューにある通り、脇役のキャラクターもとても魅力的で、おっとりな品証部の部長や、ガンコで親分肌の製造部の部長、色事師の製造部OB、飄々としてくえない営業部課長代理の上司をはじめ、かわいい後輩たちも多数登場。エロシーンも濃いめだけど、働くシーンも負けてません(なんだこの比較)。

この5巻が、ひとつの区切りのようだけど、まだシリーズは続きそう。これからも見逃せない。

「恋人になってからの関係」を描いた作品をもうひとつ。
放蕩長屋の猫放蕩長屋の猫
榎田 尤利

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東京の下町、根津の通称「放蕩長屋」に暮らす、イラストレイターのまひろと、恋人の遊真が主人公。作者の榎田尤利さんがあとがきで、「通常、ボーイズラブと呼ばれるジャンルでは『出会ってから恋の成就まで』を追う物語が多いと思うのですが、たまには『すでに成就して数年経っているカップル』などというのもよろしいのではと思い」と書かれているように、この2人は、つきあってからすでに3年半が経過している。

遊真はバイセクシャルで浮気性。まひろのことが好きなのに、まひろに隠れて浮気を繰り返す。この長屋には、まひろの幼馴染・春彦も暮らしているが、実は春彦は、10代のころからまひろのことを想っている。

まひろは遊真の浮気に勘付いていながら、遊真をギリギリまで責めない。惚れた弱みもあるだろうし、遊真を失う恐れもある。一方で遊真は、悪いと思いつつ、浮気をやめられない。つきあっている関係性やまひろに甘えているのだ。このあたりの機微が、なかなか……。わりとあっさりめに描かれているような気もするけど、さすが榎田さん、という感じ。

春彦も、ずっとまひろを想っているのに、まひろを傷つけたくなくて、浅はかな行動に出られない。忍耐の人なのだ。でも我慢している素振りは少しも見せない。粋でカッコいい。茶道のお師匠さんだもんね。着物だって着ちゃうもんね。おまけに男前だもんね。そりゃレビューで、春彦が人気なわけだよ。

ここでよくある設定としては、浮気性でガキっぽい遊真より、誠実でオトナな春彦とうまくいく――というものかもしれない。でもまひろは結局、遊真を選ぶ。春彦の気持ちはよくわかっているけど、それでも遊真でなければダメなのだ。このあたり、「理屈じゃない恋の不思議さ」がうまく表されているところだと思う。

春彦は、この作品の姉妹編「猫はいつでも甘やかされる」で、新しい恋に出会い、ハッピーになっている。きっと、春彦を幸せにしてやってくれという要望が多かったんだろうなぁ。こちらは、BLの定番「出会い~恋の成就」がストーリーの根幹。春彦ぐらいのオトナなら、むしろ出会いからつきあうまでが、一番の難関ということじゃないでしょうか。

童話などで、「お姫様は王子様に助けられて、二人は末永く幸せに暮らしました」で終わったその後のことを、「じつはこうなってるんじゃない?」と想像して作られた小説や映画がいくつかある。「その後、結局どーなのよ?」という好奇心を、うまく利用していると思う。「幸せになりました」といわれても、生きている限りいろいろあるだろ、と、年を取れば突っ込みたくなることもあり――。そういう「その後」を、ドキドキしながら楽しめる作品が、BLにもあるというのは、興味深いところじゃないでしょうか。ま、BLらしく、多少甘めで、やっぱりハッピーエンドだけども。

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「許可証をください!」シリーズのレビューも掲載されている、ヒトコさんのブロググラス・エイジにリンクを貼ってます。BL作品はもちろん、やおい・オタクに関する評論などへのレビューや考察も、とても面白いですよ。

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Tags: 烏城あきら 榎田尤利 文月あつよ 紺野けい子 ガテン系BL 感じる攻め 複数レビュー

Comment 2

2007.09.28
Fri
08:27

あくび #-

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「許可証を下さい」うん持ってる。うんうん
lucindaさんの説明うまいなぁ~私には無理だねぇ。
「放蕩長屋」は知っていたが、買う気しなかったがlucindaさんの説明見て、えーそうだったぁ。買う~という気持ちなりました・・・もうlucindaさんは罪罪な人~~でも世界広がって感謝ですv-10

編集 | 返信 | 
2007.09.29
Sat
13:47

lucinda #-

URL

自分の好きな作品を、「読んでみたい」と思ってもらえると、やっぱり嬉しいです。読んで気に入っていただけたらいいんですけども……。

編集 | 返信 | 

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