『蜜惑オメガは恋を知らない』(ナツ之えだまめ)―このオメガバースはイケました

 27,2016 23:55
どうしたわけかわからないけれど、数ヶ月前からありがたいことに、下記のエントリーに、コメントや拍手コメントをポツポツといただく状態が続いている。


 >>戸惑いの流行―オメガバースについて考えてみた [1] [2] [3]


2014年にアップしたから、もう2年前のエントリー。タイトルどおり、当時、ワーッと盛り上がっていたオメガバースについて、自分なりにいろいろと、批判的なことも含め、感じたり考えたりしたことをまとめたエントリーだった。


コメントには、共感してくださる方もいれば、批判される方もいる。でもとにかく、2年前のエントリーに反応があるということは、“オメガバース”がそれだけ今も変わらず人気で、すでにBLでも定着した設定ということなんだろうと思う。


二次界隈には疎いけど、商業BLでも、オメガバース設定の作品はちらほら見かけるものね。確かオメガバースのアンソロもあったような。


B's-LOVEY アンソロジー オメガバース (B`s-LOVEY COMICS)
そうそう、見かけたのはこれでした……

さて、わたし個人は、オリジナル作品でのオメガバースなら拒絶感は薄いとはいうものの、さりとて積極的にオメガバースものを読みたいというわけでもない(『虫シリーズ』も結局積んでいる)――という感じなのだが、先日、書店であらすじを読んだ時、


――これは読めるかも……というか、ちょっと読みたい――


と直感した作品があった。


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ナツ之 えだまめ のあ子

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突如オメガ変転した智宏は9歳にしてヒート=激しい発情を覚えてしまう。その後周囲から性的な好奇の目を向けられ傷つき悩むが、高校に入学してアルファの恒星と出会い「高校生活、楽しいほうがいいじゃん」と屈託なく笑う彼に惹かれていく。アルファとオメガであったら誰でも“つがう”ことが出来るのに、二人は無二の親友の道を選ぶが―。



「アルファとオメガであったら誰でも“つがう”ことが出来るのに、二人は無二の親友の道を選ぶ」という一文に、ヒネリを感じて興味をそそられたのです。ふむふむ、アルファとオメガなのに、なぜかすぐにひっつこうとしないのね!?


というわけで、早速読んでみたのだけど――ところどころ「ん?」と思うことはあったものの、最後まで一気に読んじゃったのだった。


この作品のオメガバース社会では、この作品ならではらしい特徴がいくつかある。


・オメガはオメガとして生まれるわけではなく、ベータからオメガに変転する。変転の要因は、自分の運命の相手のアルファに出会うこと。

・しかしながら、特に運命の相手に出会っていないのに、20歳前後でオメガ変転する人もいる。そういうオメガは“はぐれオメガ”と呼ばれている。

アルファとオメガの関係に、“つがい”と“伴侶”がある。運命の相手同士の組み合わせなら“伴侶”。ただアルファとオメガだからひっついただけ、という場合は“つがい”。つまり、「伴侶>つがい」

・どうやらアルファはベータとひっつくこともあるようだが、たとえ二人の間に子供が生まれても、その子供は“ベータ”としてしか生まれない。



あくまでも、この『蜜惑オメガは恋を知らない』の作品世界での設定です(多分)。念のため。


そしてあらすじから予想したとおり、ジレジレと膠着してましたよ、オメガ・智宏とアルファ・恒星は! 


智宏がわけもわからず9歳でオメガに変転してしまい、自分は“はぐれオメガ”だと思い込んでいるのが、「ま、あの状況じゃ仕方ないか」と同情しつつも、あまりに頑なでじれったい。


恒星は、どうやら智宏のことを「自分の伴侶(運命の相手)」だと確信しているようなのに、智宏の頑なさや、智宏自身のオメガ性への潔癖さに理解を示しすぎて思い切った行動ができないのが、じれったい。


恒星が智宏に迫るシーンもあるけど、結局二人がひっついたのは、智宏が「自分の伴侶は恒星だ」と確信して、恒星に迫ったからだもんなぁ……。


智宏も智宏で、オメガの保護施設で高校進学を考えながらネットサーフィンをしている時に、“なぜか”恒星に惹きつけられ、高校生活でも“なぜか”いつもそばにいる恒星にドキドキしているのに、「ひょっとしたら恒星は伴侶なのかも」と思うことすらしない。


ああ、じれったい!!!


アルファとしての恒星は、完璧で自信たっぷりのエリート然とした様子ではなく、智宏の前ではちょっとヘタレ気味、というのもよかった。とはいえ、ヘタレではあるものの、陰になり日向になって智宏を助けるし、智宏の前でなければ、“何でもできるスゴい人”のようだけど。


読んでいて引っ掛かったのは、智宏が自身のオメガ性に嫌悪感を抱き、抑制剤を飲み続けて、誰とも“つがい”にならないようにしている割に、発情期にアルファとわかっている人物に近づくなど、どうも脇が甘いところかなぁ……。


でもまあ、「抑制剤を飲み続けて、発情期の恐ろしさを忘れていた」と解釈できなくもないし、それで読後の満足感が激減するほどでもなかった、と付け足しておこう。


さて、作品のあとがきではナツ之先生が、


「(オメガバースの)社会の仕組みを考えるのに多大な時間と手間をかけました」

(※カッコ内は管理人による補足)


と、書かれていたのが印象的だった。思い描くストーリーがより盛り上がるように、齟齬や矛盾が発生してストーリーの魅力が損なわれないように、オメガバース設定を練られたのかなぁ……と想像すると、その面倒くさそうな大変さに、急激に肩が凝りそう。


オメガバース設定とストーリーをすり合わせて考えるのは、ファンタジーやSFの世界を構築することと、似ているかもしれないなぁ……と思った。


でも、そのご苦労のおかげで、アルファ&オメガのいる世界に「なるほどね」と感心したり、主人公以外のアルファ×オメガカップルのエピソードを楽しんだりできた。


恒星は“アルファの名門一家”(!)で、祖父も父も姉も全員アルファとか(ってことは、伴侶はみんなオメガってことよね!?)。警察キャリアの姉は、部下のオメガ男性を伴侶にし、子供も3人いるとか(もちろんオメガ男性が生んでいる)。オメガの保護施設での友人・類(男)の伴侶は、世話になった人の仇(男)だったとか。やはり保護施設での友人・カナコ(女)は“はぐれオメガ”で、伴侶がいないため、三度も“つがい婚”をして子供を生んでいるとか。


――BLだからって、カップルは必ずしも男×男だけじゃないということも、設定に厚みが出ているように感じられたかも。


これをきっかけに、オメガバースものを読みまくる……ということにはならないだろうけど、好きなオメガバース作品が新たにできて、ちょっと嬉しいなぁと思ったのだった。

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Tags: ナツ之えだまめ のあ子 オメガバース

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