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まさかの百合と弱気な晴明にドキリ―『陰陽師 蒼猴ノ巻』(夢枕獏)

 01,2016 23:33
晴明の、博雅へのあのセリフ、「おまえはよい漢(おとこ)だな……」を読めて、幸せ! ああ、今回も素敵な良い“イチャイチャ”を堪能したなぁ……!


読んでいる最中から、頬が緩みっぱなしだった『陰陽師 蒼猴ノ巻』(夢枕獏)。


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夢枕獏

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美しきかはひらことなり、飛び去った財宝。困惑した屋敷の主は、晴明に使いを出すが―。安倍晴明と源博雅が活躍する人気シリーズ最新刊。「幽玄」と「あはれ」の全十編。



なんとなく、前作よりも晴明と博雅の親密ぶりが濃いような。なにしろ、1話目の『鬼市』でのやりとりですでに、わたし、速攻で萌え悶えましたからね。


例のごとく晴明の屋敷で、夜桜を愛でながら酒を飲んでいる晴明と博雅。博雅はいつもの調子で「おい、晴明よ」と呼びかけ、桜について、「花びらの一枚一枚が、仏のように見えてきてしまう」と、うっとりと語り始める。


「してみれば、あの桜の花びらのひとつずつが仏に見えたとしても、それはあながち、おれが今、酒に酔うているためばかりではないと言うてもかまわぬのではないか。おれは、そういうことを言っているのだよ、晴明――」
「美しいな……」
 晴明は、つぶやいて、宙で止めていた杯を紅い唇にあてて、中の酒を乾した。
「美しい?」
「うむ」
「何がだ」
「おまえが今口にした言葉がさ」
(P12より)


晴明の、このてらいのない、ストレートな称賛がニクい。しかしもちろん、二人のやり取りはこれで終わりではなく、晴明が、これまたいつもの“呪(しゅ)”を持ち出して、博雅を慌てさせるのだ。


「おい、やめてくれ。晴明、呪の話をされると、おれは頭の中がこんがらがって、何の話をしているのか、されているのか、わからなくなってしまうからな――」
「いや、これはおまえが思うほどややこしい話ではないのだ」
(P13より)


「呪」について滔々と語る晴明にポカンとしながらも、必死で話を止めさせようとする博雅。ほのぼのとして萌えるわ……! 晴明は、博雅が慌てたり困ったりする様子を見たくて「呪」を持ち出しているよね、半分くらいは。


今作では、珍しく、判断に悩む弱気な晴明の姿が見られたのも印象的だった。


4話の『蛇の道行』は、恋人に裏切られた女が三度の転生を経て蛇となり、探していた男が鼠になっているのを知って、その鼠を食らおうとする話。晴明は、それを止めるべきか否か、迷う。


結局、晴明は蛇が鼠を食らうに任せるのだが、よほど割り切れないのか、心配して声をかけた博雅に、「これで、よかったのかな、博雅よ……」とつぶやくのだ。


「呪をもってしても、自然のことには手を出しようがないと、おまえは言っていたではないか……」
「ああ……」
「あれもまた、自然のひとつのありようではないか……」
 博雅は言った。
「博雅よ――」
 晴明は、博雅を見た。
「おまえは、よい漢だな……」
 低い、小さな声で晴明は言った。
(P114より)


――ここで、あのおなじみのセリフ、「おまえはよい漢だな」が出てくるのか……! 


これまでは、酒を飲みながら、あるいは怪奇事件が解決した後、博雅にはわからない“何か”を了解しているらしい晴明が、そのことで感嘆し、感慨深げに言うことが多かった気がするのだ。


ところがこの話の晴明は、いつも動じない、冷静沈着な晴明とは違って、ちょっと傷ついているようにさえ見える。そんな時に、博雅は静かにそっと、晴明に寄り添うのだ。それも、晴明が言った言葉を引用し、自分も同じ考えだと暗に告げながら。


博雅、本当に心優しい、よい漢だなぁ……! 


恐ろしい、怪しい事件が起きるたび、いつも慌てず騒がず対峙する晴明のことを博雅は頼りにしているけれど、実は晴明こそが、心の深い部分で博雅を頼りにしているということが察せられるシーンだよなぁ……としみじみ感じ入った。


ところで今作には、ほんのり百合展開な話が収録されていて、思わず前のめりになってしまった。その話とは、5話の『月の路』。


晴明と博雅、そして盲目の琵琶の名人・蝉丸法師は、夏の夜に琵琶湖で月見がてら船遊びをしていたら、急に強い風が吹き始め、3人は岸辺に流れ着く。


そこに祀られている水神・泣沢女神(なきさわめのかみ)が、年に一度の満月の夜の逢瀬を邪魔されているので、助けてほしいという展開なのだけど――。


この“逢瀬”の相手が、竹生島の弁財天なのだった!


――あれ? 弁財天って、女神だったよね? 男神として描かれることって、あったっけ? 


いやいやそんなことはなかったはず――と思いながら調べてみると、弁財天は女神で間違いなかった。ということは、やはり――。


まさか『陰陽師』で百合を読めるとは思わなかったなぁ……!


そして『陰陽師』らしく、泣沢女神と弁財天の関係は、あからさまにありありと説明されるなんて野暮なことはされておらず、ごく簡潔に表現されているがゆえに、より艶やかさを感じるのだ。それこそ、晴明と博雅の行間を読まずにはいられない関係性のように。


蝉丸法師が琵琶を、弁財天に渡してほしいと泣沢女神に託したシーン、うっとりしたわ……。


泣沢女神と弁財天の逢瀬を邪魔していたのは、泣沢女神に横恋慕している青い大きな猿だった。今作の『陰陽師』のサブタイトル『蒼猴ノ巻』の“蒼猴”は“そうこう”とルビがふられているのだけど、“猴”とは猿のことだそうな――つまり“青い猿”ということ。


そう、サブタイトルの蒼猴とは、この泣沢女神に懸想していた、この青い猿のことなのだった。この猿は6話にも登場していたし、何やらこれから、ちょいちょい晴明&博雅に絡んできそうな予感。


晴明のライバル、芦屋道満がシブくカッコよく活躍している話もあって(『仙桃奇譚』)、大満足。個人的には、博雅とはまた違うテイストで晴明との関係を妄想想像させられる、賀茂保憲がまた登場してくれると、よりいっそう嬉しいかな。


今作もごちそうさまでした!

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Tags: 陰陽師 夢枕獏 百合 行間を読む ほんのりBL的

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