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猫たちの大江戸人情劇に染み入る――『きゃっつ 四畳半ぶらぶら節』(羽生山へび子)

 27,2016 23:01
読んでいると、思わず「ヨッ! 清二!」と掛け声を掛けたくなる……かも。


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羽生山 へび子

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其処は大江戸、柳町。煩い大家の長屋の一角に住まうは、仕事もせずぷらぷら過ごし、隙あらば色仕掛けしてくる居候・弥源治と、そんな弥源治を養う人気魚売りの清二だ。けれどある日、弥源治が子猫を拾ってきて?
羽生山へび子が描く えどかわいい 猫びーえる物語!!



へび子さんの作品だし、表紙絵の色使いや質感に惹きつけられながらも、猫でBLで時代モノかー……――と、しばらく積んでいたこの作品。


ところが読み始めたとたん、あっという間に、へび子ワールドに引きずり込まれました。というより、江戸時代の下町らしきところが舞台なので、“へび子ワールド”というより、“へび子劇場”という感じかも?


160606_cats.jpg
帯の紹介も、フォントを含めていい味出してます


そっくりそのまま江戸時代の世界で、泣いたり笑ったりしているのは、二足歩行する猫たち。擬獣化? まあそうなんだけど、表情豊かで、猫種や毛色等でキャラが巧みに描き分けられるなど、非常に濃やか、かつ、すみずみまで練り上げられた猫たちの物語を読んでいると、パラレルでこういう世界があるような気がしてきます。


というわけで、しみじみ感じ入ったポイントをピックアップしてみました。


■キャラたちの言葉遣いで江戸ムードが盛り上がる


粋でイナセな魚屋の清二と、彼と同居している色っぽくて男好きな弥源治など、柳町の住民たちが喋る言葉は、まさに下町の江戸言葉。テンポよくポンポンとやりとりされる会話が、読んでいて非常に心地よい。


しかも、キャラクターの設定ごとに、言葉遣いも変えられているのが、またニクい。


浪人である手習い所の先生・源右衛門は、もちろん武士風の言葉遣い。猫たちのものを盗んでいく狸たちは、武家風な、ちょっと文語調な言葉遣い(なのかな?) そして大店の奥様は山の手言葉風な言葉遣い――。


それぞれの言葉遣いが正確かどうかはわからないけれど、こうした言葉を喋るキャラたちが、イキイキとして見え、物語を盛り上げているのは間違いありません。


かと思えば、ちょこちょこ差し挟まれる、「アポ」とか「DM」とか「イケメン」とか、現代の言葉が差し挟まれるさじ加減も良い!


もう、本当に、この言葉遣いだけでも脱帽なのです。


■浮世絵を思わせる構図にウットリ


しかし、言葉遣いの素敵さが際立つのはやはり、素晴らしい絵があるからこそ、ってもんでしょう。


これまでのへび子作品も、細かいところまで描き込みがされていたけど、この作品はその描き込み故に、江戸のムードがよりしっかりと漂っていると思うのです。


江戸時代ってことで、ネコたちの頭にチョコンと載っているまげや前髪もカワイイ。清二は白黒はち割れ猫なのだけど、その毛色が彫り物のように見えるのも、清二の“いなせ”な感じを強調しています。


そして、時々差し挟まれる、浮世絵の役者絵を思わせる絵のステキさときたら!


先日、歌川国芳と歌川国貞の展覧会に行ってきたせいか、猫たちのしぐさや表情、構図などに、ちょこちょこと、浮世絵などの江戸の絵が思い出されて、クーッ!! と身を捩っていました。


20160528a.jpg
「俺たちの国芳 わたしの国貞展」のエントランスにいた国芳の猫。あ、なんだか国芳の猫の絵から繋がっているような気もするなぁ……!


『幕間 弥源治、縛られる』の清二と弥源治の絵なんて、色付けされたものをぜひ見てみたい!


■笑えて、時に切ないストーリは健在


もちろん、これまでのへび子作品と同様、読ませてくれるストーリー展開です。


収録された全6話、全て魅力的なのだけど、特に印象に残っているのは、狸盗賊団の中のドンくさい子狸・まるが、猫たちが通う手習い所に入門するまでのお話、『まる、ひかりをみる』。


“ものを作るヤツ=猫がいるなら、自分たち=狸はものを作る必要などない、猫からものを奪えばよい”という狸たちの中にあって、“なぜわれらはものを作らないのだろう?”と考えてしまう、まる。


そんなまるが、自分の属する狸世界から、猫世界へ足を踏み入れる様子が、ハラハラするほどいじらしく、切ない。まるの母親はまるを持て余していたようだけど、「猫たちの手習い所に行きたい。猫になってもいい!」と言い切ったまるに、無事に手習い所に通えるように知恵を授ける様子に、ホロリときます。


仕事の紹介先に行ったのに門前払いをされ、しょんぼり帰ってきた弥源治のお話『弥源治、身から出た錆を食う』も、日常の不運なことと幸運なこととの折り重なりがサラリと描かれていて、よかったなぁ。


弥源治が拾った子猫・ぼんが通う手習い所の先生・源右衛門が、弟子のために頭を下げる『ぼん、手習いへ行く』も良い。ここで登場する三吉が、後々のお話でも、常にボワーッとした薄幸そうな表情でぼんの傍らにいるのが、個人的にはツボ。


大店の呉服屋の丁稚だった定吉が、盗人の真似をする『清二、盗人に惚れられる』も読んでいてジンワリくるし――まあ、つまり、全部良いってことです! 


どうやら捨て子だったらしい清二、来歴が不明な弥源治、ぼんを捨てた親など、主要キャラの謎を残したまま終わりかと思いきや、Webでお話は続いている模様。そういえば、この作品の中ではBL要素はほのかに漂っている程度だったので、その点でも今後に期待でしょうか。


これまでのへび子作品と同様、人情に篤いキャラたちが、喜怒哀楽とともに東へ西へ駆けずり回る様子が、とりわけ江戸時代という設定にピタリとハマっている感じがするこの作品。


2巻はもちろん心待ちにしているけれど、当面はWebの更新を楽しみにしていようっと!
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Tags: 羽生山へび子 時代モノ 萌え

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