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戦う時は必ホモか/BL新日本史

lucinda

日本史をボーイズラブ目線で語ったら――。



BL新日本史BL新日本史
堀 五朗

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しかし「BL」って……べつにホモでもゲイでも同性愛でもいいじゃん、と思うのだが、筆者によると、「現在の同性愛とは、本質的な精神性において、安易に比較できない」という考えから、「BL」を使ったらしい。うーむ、BLに特徴的な、いわゆるモノガミー(一夫一婦制)的雰囲気が、念契(義兄弟の契り)っぽいから? なんだかんだいって、やっぱり腐女子を狙ってるだけのような気がしないでもない。

日本史に同性愛が往々にして絡んでいるということは、けっこう知る人ぞ知る事実だと思う。この本に取り上げられているエピソードや人物も、歴史好き(&ホモネタ好き)なら、知っているものが多いんじゃなかろうか。そういえば、昔、予備校の日本史講師が「日本史の三大ホモは、空海、織田信長、徳川家光だッ!」と断言していたけど、そしてそれに「足利義満を入れた方がいいんじゃないか」などとわたしたちは突っ込みを入れていたのだが、空海も信長も家光も義満も、みんな登場している。時代としては、古代(ヤマトタケルが登場)~大正デモクラシーまで。その頃から、西洋の価値観や倫理観が浸透してきたということなのだろう。

とくにわたしが、へぇぇ!と感心したのは、院政のエピソード。「北面の武士」がイケメン集団だったことは知っていたが、白河・鳥羽・後白河の各法皇の寵童が、ここに入っていたらしいのだ。いやその前に、法皇たちは男もイケたんですね……。寵童が北面の武士を経て受領になり、院の財力と武力を支えていた、ってのがこれまたすごい。院政というと、どうもわたしは、

――鳥羽院の中宮だった待賢門院璋子は、実は鳥羽院の祖父・白河院のお手つきで、長男の崇徳天皇は、白河院との子どもだといわれ、後々の保元の乱にも影響した――

という、ドロドロの男女の愛憎劇的エピソードの印象が強かったのだけど……。濃いなあ、院政期。でもこの院政期から、政治的に男同士の関係を意識して利用するようになったんじゃないかと思った。

それから、千利休の切腹について、利休が、茶道を通じて権力を裏で操るフィクサーになったのが原因では――という解釈も面白かった。ま、これは茶道の茶碗回し飲みが、相当にセクシャルな行為であるという前提のもとに展開されているのだけど。

そのほか、感心したことや気になったことは

■倒幕・明治維新で活躍した薩摩・土佐だけでなく、白虎隊で有名な会津にも「同性契交の士風」つまり、同性愛関係を結んで武士を育成する気風が残っていた。
■嘉吉の乱・応仁の乱には、赤松家の美少年が関わっている。代々の将軍をトリコにするほどの美少年を輩出しつづける赤松家って一体。しかし、嘉吉の乱で、将軍・足利義教を殺害した赤松満佑は、不細工だったという皮肉。
■万葉集の編纂者・大伴家持の恋人には男もいて、彼らへ宛てた恋の歌がけっこう残っている。
■織田信長など、小姓との関係が取りざたされる武将は、ゲイというよりは、どちらかというとバイセクシャルといった方がいいと思う。
■西南戦争での薩摩兵士の戦いぶりは、なんだか第二次世界大戦の神風特攻隊を連想させる。

以上、こんな感じ。

読んでいて、強引なところやこじつけがましいところもあるけど(西行の超能力とか天草四郎のシャーマン性とか)、読んで損した…という感じはありません。歴史好き&ホモネタ好きなら、そこそこ楽しめると思う。それにしても、読み終わると、「戦には同性愛関係がつきものなのか…いや、同性愛関係が必要不可欠なんじゃないか…?」と、妙に納得させられるようなエピソード満載なのが、興味深い。武功の陰にホモあり。古今東西、戦争モノ・軍隊モノの作品に、だてに同性愛は絡んでいないのだ。逆に、戦が絡んでいるからこそ、「精神性」が強調され、それが追求されて「文化」となるのかもしれない。

筆者があとがきに「現代から見ると、近世の日本人は”外国人”、それ以前(古代~中世)は”宇宙人”じゃないかと感じている」と書いているけど、これはわたしも、すごく共感できる。すでに第二次世界大戦前とさえも全然違う現代、後世からは、どんな歴史的同性愛ネタが取り上げられるのかしらね――。

All About [同性愛]
で不定期連載されている「歴史の授業で習えなかった同性愛」で、松尾芭蕉、徳川家光、日本近世が、この本よりもさらに深いゲイ的視点で取り上げられています。ほかの記事もとても面白い!

#この本の参考文献として取り上げられている「武士道とエロス」(氏家幹人、講談社新書)では、戦における同性愛関係・義兄弟の契りや、明治期の学生に一般的だった同性愛的ムードについて、かなりわかりやすく面白く説明されています。腐女子のかつての人気本だったとかそうじゃないとか…。
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Comments 9

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乱菊

私のところにも先日届きましたー。
パラっとしかまだ目を通してないのですが、歴史はけっこうスキ分野なので、年末にでもじっくり読みたいと思います。
昔から御稚児さんは男色の対象だと言われてますし、新撰組などの男集団も有名ですよねー。
確かに言い古されたネタではありますけども、軽い読み物としては面白そう♪
挿絵の九州男児さんもスキなので、早く読みたいと思います~(´∇`)

lucinda

思ったよりも、読み応えがあったような、そんな感じです。
すでに知っていたネタの中でも、知らなかったこともあり…。
九州男児さんのイラスト、とくに茶道のところがお気に入りです!
乱菊さんの感想も、ぜひぜひお聞きしたいです。

  • 2006/12/18 (Mon) 02:38
  • REPLY
うがけー
お邪魔いたします~

うみりす女史のブログより流れ着いてまいりました。
アンテナに引っ掛かってしまったものでついカキコをとv
武士道の裏にあった忠義的同性愛がどこへ行ったのかを前に
漁っていたところでこんな本に出くわしましたのでご参考にとお節介ながらw

http://7andy.yahoo.co.jp/books/detail?accd=31145021

BL新日本史…。
ついに日本史もあからさまにBLマーケットのターゲットになってしまったかと
史学を専門にやってきた側としてはあまり偏った見方をされてもイヤンと
いう感じで、何ともビミョーです(笑)


過去日記を拝見していたら、無間道(I.A)がお好きとのことでvv
未翻訳の小説版は萌の宝庫でした、笑!
ハリウッド版IAの"デパーテッド"いよいよ年明け公開ですね。
どうも萌が薄そうで何なのですが…;

初コメで馴れ馴れしく失礼いたしました~;;

ようこ

読み応えあるんですね!
お稚児さんが流行ってたらしいことはうっすら~と知ってましたが、
思ったより歴史というかドラマがありますね(笑)
戦前の、大正文士たちの関係でも、
割りとあやしいというか、親密な先生たちがいるので、
衆道なノリが薄れたのって、戦後になってから…?

ショタケットの一般客は圧倒的に男性の方が多い、と聞きますし
美少年大好きDNAは確実に受け継がれている気がします…。

lucinda

>うがけーさん
どうも、コメントありがとうございます。うみりすさんのところで、コメントを読ませていただいたりしていました(笑)。

うがけーさんは、史学ご専門なんですね。うーむ、そうすると、こういう本を読むと「ちがーう!」と思われるところが、多々あるのではないでしょうか…。もしこの本を、わたしが20年くらい前に読んでいたら、丸々信じそうです。そういう意味では、このトシでよかったですよ。

インファナル・アフェア、お好きなんですね! いいですよねー。久々に香港映画の真髄を見たかんじです。小説は萌の宝庫だったなんて……読めるうがけーさんが羨ましいです。ハリウッド版はー…なんかジャック・ニコルソンが、妙にセクシャルな一面を押し出す工夫をしたとかいうニュースを読み、あーあ…と密かにうめいています。いいんです。やっぱ、トニーとアンディですって。

また遊びにいらしてくださいませ。

>ようこさん
やや、読み応え…というと、自信が…(焦)。でも、あの、久々に幅広く日本史のトピックスに触れたので、「嘉吉の乱…って、いつだっけ」とか、立ち止まることがちょこちょこあり、思っていた以上に読むのに時間がかかったかなぁという感じです(<うろたえすぎ)。

でも、「●●という美少年は、▲▲という武士とデキてたぜ~」というだけの内容ではないことは、確かです。

>ショタケットの一般客は圧倒的に男性の方が多い
そーなんですか! たしかに、美少年大好きDNAは、もう日本人の体内にガッチリ組み込まれていると思いますね。歴史ってすごい…。

  • 2006/12/19 (Tue) 01:14
  • REPLY
もと

ショタの男性比率は凄い高いですよ。
私の友達にはショタ系の人がいますけど、同人誌を買うのは殆ど男という時期もあったそうで(^^; 「私は女の人が萌える本が描きたいんだ!」って怒ってましたが(^^;
知ってるショタ作家さんにも男性いますしね。その人は普段ロリの人なんですけど、二次元に限ってショタはOKなんだそうで。
だから、BLという大きなくくりの中でも、学生~リーマン世代までは同じような作家さんなんですけど、ショタ、壮年になってくると、作家さんの層が違うことが多いですよ。
特にショタは、BL好きでも受け付けない人の多いジャンルですからね~。ショタアンソロとかになると、みたことない作家さんが多いです。内容もロリ系かなぁ?
あ、つい熱く語ってしまった(笑)

lucinda

>同人誌を買うのは殆ど男という時期もあったそうで
へぇぇぇぇ!面白い現象ですよね。ショタだと、あんまり男って感じがしないし、中性的な雰囲気が、いいんでしょうか…。
うーん、購買層にその辺、聞いてみたいところですね。

>ショタ、壮年になってくると、作家さんの層が違うことが多いですよ。
壮年? おっさんキャラってことでしょうか。少年の間違いかな?
おっさんだとすると…うーんなんだか、BLというより、ホンモノっぽいにおいが……ははは。しかし、つくづく小さくていたいけな感じのモノ、好きなんですね、男のヒト……。

  • 2006/12/19 (Tue) 14:40
  • REPLY
もと

壮年であってます。
「ショタ」「学生~リーマン世代」「壮年」と、ジャンルがある感じが私にはするんですよね。多少かぶってる人もいますけど、大体は何となく分かれてますね。(それぞれ描く人も違う。ということが言いたかったのです)
あ、更にガテンというか筋肉ジャンルもあったな。こっちはもうモロにゲイって感じで。
ショタから壮年まで、「ついてりゃいいのか!」と人にいわれるほど範囲が広い私ですが、筋肉の肉ぶつかり合う系は、あまり好きじゃないですね~(^^;(あれば読むけど。貧乏性なんで)

lucinda

はぁぁ。壮年、だったんですか!<感心してばかり。
それも、マーケットとしては、「ゲイ」ではなく「BL」というのが興味深い&面白いです。ガテン・筋肉系なんて、もろに、ゲイのイメージがありますよね。うーん、奥が深いなぁ…。

ゲイコミックスは、絵柄だけは見たことあるんですが、ちょっと個人的には、腰が引ける感じ。ある意味、「絵柄が苦手だわ」と感じるという点では、百合のあのロリっぽい絵柄への苦手感と同じところにあると思います。
でも、一応「BL」としての筋肉系、ちょっと見てみたいです…

  • 2006/12/20 (Wed) 03:37
  • REPLY