M/M小説の活気がまばゆいような――トークセッション「ぼくらの共犯同盟」3ヵ月遅れの参加レビュー

 18,2016 23:29
前エントリの最後に書いた、「『幽霊狩り』を手にする直前、M/M小説に関連した、とあるイベント」。それは、こんなイベントでした。


ぼくらの共犯同盟
冬斗亜紀 × 三浦しをん

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“満員御礼”ですよ! 申し込みが間に合ってよかった!


“共犯同盟”とは、『アドリアン・イングリッシュシリーズ』で、主人公のアドリアンが主宰しているミステリーファンのファンミーティングのこと。


そう、このイベントは、『アドリアン・イングリッシュシリーズ』の完結編、『瞑き流れ』の翻訳刊行を記念して開催されたものなのです。


「アドリアン・イングリッシュシリーズ」のファンであることはもちろん、ナマの三浦しをん先生のトークを聞いてみたい! ――と反射的に思い、告知を目にするや参加を申し込んだ次第。


――でも、このトークイベントが開催されたのって、昨年の12月15日だったんですけどね……。しかもブログを見返すと、今年最初のエントリで、イベントのことに触れてたし。グダグダすぎる……。


もう3ヵ月くらい前のことだけど、自己満足でもやっぱり記録しておこうと思います。


さて、トークの中では当然、シリーズや、著者のジョシュ・ラニヨン氏についての話が多め――ではあったものの、海外のBL、つまりM/M小説についてのお話も多かったのが印象的。メモしていた言葉とともに、振り返ります。



■毎月100冊出版……だと……!?


M/M小説は、毎月100冊ぐらい出版されているらしいのです。えー、日本のBL小説はどうなの!?


――と思って、ラノベの杜 (BL分室)を参考にしてチクチク数えてみました。


2016年2月は、出版数55冊。
2016年1月は、出版数47冊。
2015年12月は出版数60冊。



大体50冊前後ってところですかね。


もちろん、マンガを含めればもっと多いけれど、小説に限定するなら、M/M小説よりも出版数は少なそうだなぁ……。


個人的に、5年前あるいは10年前と比べて、BL小説の出版数は減っている気はするんだけど……と思っていたら、あやめさんがここ5年の2月の出版数を調べていました。さすがあやめさん。


BL小説を最近買ってない、という感覚に対してのデータ  (オトコの腐ったようなやつ)


2012年2月は80冊も出版していたのか! このくらいの数があると、M/M小説の出版数と“よい勝負”なレベルといえなくもないだろうけど、とはいえ、この数の違いにはびっくり。


M/M小説も数年前までは、冬斗先生が新刊を全て読めるくらい、出版数は少なかったらしいのです。でも“100冊”となると、結構気合いを入れて読まないと、全部は読めそうにないですねぇ……。


M/M小説の出版数が今後、減っていくのか、増えていくのか、現状維持なのか――ちょっと興味深い。



■作家は女性多し


M/M小説の作家も、女性が多いんだそうです。BL小説と同じですね!


あちらでも、“M/M小説はゲイ小説とは違う”という見解があり、一時は「LGBT以外が書いた作品は候補外」と規定したゲイ文学の賞もあったとか(その後取り下げられたらしい)。


……日本の事情とオーバーラップしてるなぁ……。


「M/M小説はロマンス重視だけど、ま、いいんじゃない?」くらいに割り切られているのかと思いきや、案外、そうでもないんですね。このあたりの感覚は、国や文化の違いなど関係ないのかしらどうかしら。



■カウボーイもの@M/M≒ヤクザもの@BL


以前、“BLにおいて、テキサスはアラブと同じようなファンタジーランドじゃなかろうか”と思い付き、特集までやってしまったわたくし。


“テキサス”といえば、すなわち“カウボーイ”が自動的に想像され、これは“アラブ”といえば、即座に“王族”が想像されるのと似ているなぁ……などと思っていたからなのですが。


まだまだわたしのヨミは甘かった。冬斗先生による、


「M/Mのカウボーイものって、BLのヤクザものみたいなポジション」


というコメントに、ハッとしました。言われてみればなるほど……!


圧倒的な男社会で、男同士の強い絆が結ばれているイメージ。
さらに、アウトローで硬派で男気のある男たちがそこかしこにいるイメージ。
「いや、そんなヤクザ/カウボーイは実際にはいないんだよ」と頭の片隅ではわかっていても、どこか妄想が膨らんでしまうアナザー・ワールド感。


まさに! 


BLのアラブものは、アナザー・ワールド感はあるけど、“男の絆”やら“男気”のイメージはあんまりないもんね。


ところで、イベント当日に配布された、M/M小説についての冬斗先生謹製の資料が、もう本当に素晴らしいものでしてね――。


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A4紙5枚にわたる力作。写真では4枚に見えるけど5枚なんです! 永久保存版資料だな


アメリカのみならず、フランスやオランダなどヨーロッパで出版された『アドリアン・イングリッシュシリーズ』の表紙ギャラリーとか、M/M小説のヒストリー、ジャンルといった、“今押えておきたいM/M小説の情報”がギッシリ、ギュッと満載。


人狼ものって、“シフター”ってジャンルなのかー……狼だけじゃなくて、馬とかフクロウとか、ゾンビまであるとな!? アメリカ人は本当にゾンビが好きだなぁ……。“Gay For You”とは、“オレは男が好きなんじゃない。オマエだから好きなんだ”というジャンルらしい。あ、これ、BLではおなじみですね。海外でもこのジャンル、賛否両論らしく、これまた国や文化が違っても、共通の感覚なのかなぁと思ったり。警察官や消防官にはアイルランド系が非常に多く、2000年代のNYの警官の5/6がアイルランド系って、マジで!?


――いかんいかん。この資料を読んで思ったことや考えたことを書きだすと、どんどん長くなりそうだな。というわけで、これは別の機会にまとめましょうかね。



■“NSFW”は世界共通!?


NSFWとは、“Not suitable for Work”あるいは“Not safe for Work”の略で、つまり“背後注意!”って意味の注意書きなのだとか。


――うんうん。あるある。わかるわかる!


日本の腐界隈ならではの、“NSFW”に相当する注意書き、個人的に咄嗟に浮かんだのは“肌色注意”なんだけど――あれ? M/Mって小説がメインでも、背後注意なの? 挿絵があるのかしら? 


いやいや、挿絵の有無に関わらず、仕事を忘れて読み耽るなってことですかね。それにしても“肌色注意”って、改めてみると、ビジュアル寄りだなぁ……。



■“ロマンス小説作家のリア充自慢”に微苦笑


「どういうわけか、M/Mも含めて向うのロマンス小説の作家さんって、本の著者紹介などでリア充っぷりを自慢する傾向にありますね」


という冬斗先生のコメントに、言われてみれば……と得心しました。『狼を狩る法則』など人狼モノが多く翻訳されているJ.L.ラングレー先生の紹介にも、「現在、四人の男――そのうち“一人”はジャーマンシェパードだが――に囲まれて暮らしている」とか書かれていて、そんな情報イラナイわ、と思ったっけね。


冬斗先生によると、ラングレー先生に限らず、恋人のことに触れてみたり、ステキ日常生活を紹介してみたりするロマンス作家が少なくないのだとか。


――なんでしょう。「アタシはこういうの書いてるけど、モテないわけじゃないから! イケてないナードとは違うんだからね!?」という、必死のアピールなんでしょうか……。


以前ラジオで耳にした、「アメリカに住んでると、心を筋トレしていないといけない」というコメントを思い出しちゃいました。



――うーむ、3ヵ月経っていても、書いているといろいろ思い出すものだなぁ! まとまった記憶ではなく、“断片”ならまだまだ思い出すことはあるけれど、とりあえずここまでにしておきましょうか。


モノクローム・ロマンス文庫は、これまでの9割くらいを冬斗先生が翻訳されているけれど、常々、「読みやすくてムリのない、良い翻訳だな」と思っていました。海外の書籍は、原書で理解できるのではない限り、翻訳者の言葉の選び方、文章運びのリズムといったさまざまなセンスが作品の印象を大きく左右すると確信していますが、その点、冬斗先生の翻訳は、作品の雰囲気がしっかり伝わる素晴らしい翻訳だと、個人的には思います。


トークでは、1冊の翻訳が完成するのに大体3ヵ月くらいかかるとおっしゃっていました。うん、でも出版時期によっては、同時進行で複数冊を翻訳されていることもあるはず。しかも、しをん先生が「今度出た『幽霊狩り』の翻訳の雰囲気は、アドリアンシリーズとは違いますよね?」と指摘されていたように、作品によって、言葉や文体を変えられているご苦労を思うと――ありがたやありがたや……!


「好きなものを翻訳している幸せ」を、冬斗先生は話していらっしゃったけど、先生の翻訳のおかげで、日本のBLには見られないような作品を読める幸運を、しみじみと噛み締めました。はい。


しをん先生は緊張されていたのか、最初こそ萌えの語りが控えめだったけど、終盤は、これまで読んだことのあるエッセイを彷彿とさせるような熱い語り口に、ファンとしては大満足。


あっという間に終わってしまって、もっともっと、お二方のトークを聞きたかったなぁ……と思ったほど、楽しく充実したトークイベントでした。


今月も、モノクローム・ロマンス文庫の新刊『マイ・ディア・マスター』が出ていたし――楽しみにして読もうっと!

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Tags: イベント 腐女子 M/M BL ゲイ LGBT

Comment 1

2016.04.23
Sat
16:32

lucinda #-

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拍手コメントありがとうございます

>4/2 Nさま
今頃のレスポンスですみません。
N様も参加されていたんですね! そうだ、あのころ春画展もやってましたねぇ…N様、充実された一日を過ごされたようで、何よりでございます。
本当に、ああいうイベント、またやってくれないかなぁと思います。
今月もM/M小説、新刊が出ましたね。
これからも楽しみです!

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