【海外M/M小説で考えた】職業設定も絶妙!? クローゼットなキャラの苦悩

 11,2015 00:01
これまで読んだ翻訳海外M/M小説では、


▼主人公はほとんどが、ゲイであることをカムアウトしている
▼主人公のほとんどが“受け”



だった。


――じゃ、“攻め”は?


カムアウトしているキャラ(『狼を狩る法則』のキートン、『恋のしっぽをつかまえて』のダン)もいるけれど、最も多いのは、周囲には秘密にしている、いわゆるクローゼットなキャラ。それどころか、自分がゲイであることを認められずにいるキャラもいるくらい。


しかも彼らの職業がこれまた――というわけで、前回アップしたまとめの表に、攻め(一部受け)の職業を付け足してみた。


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ミステリー作品が多いせいか、刑事や元刑事の探偵が多いのはやむなし。あとは消防士や軍人や、職業ではないけど体育会系所属の学生など。


なんというかこう、スクエアというかマッチョというか、ホモソーシャルかつホモフォビアなイメージのものが多いなぁ!


そして単独ではなく、“組織”で動く職業、という印象も強い。組織で動くということは、上司や部下、同僚との“連帯”が要求されるということでもある。


“恋人”キャラの職業を設定してから、「うーん、それならクローゼットかも……」と決めていったのか、クローゼットゲイという設定のもとに職業を選定したのか――ちょっと気になるな。


タッカー(『フェア・ゲーム』)とマイケル(『ドント・ルック・バック』)は作中でカムアウトしているかどうかは不明なのでさておくとして、ほかのキャラたちは一様に、ゲイということで、家族や友人、職場から拒絶され、疎外されてしまうことを恐れている。


アドリアン・イングリッシュシリーズの『海賊王の死』の中では、ジェイクはアドリアンに、こう訴えている。



一体、ゲイの警察官がどんな立場に置かれるかわかってるのか?
<中略>
「世間知らずの言うことだな。この仕事は充分に厳しい仕事なんだ、その上、仲間から白い目で見られるんだぞ。今日のアロンゾを見ただろ? しかも、あいつはまだ知らない。ただ疑ってるだけで、あれだ」
(『海賊王の死』P385 ※中略、太字は管理人による)



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『ロング・ゲイン』では、マットがジャレッドにこう語りかけている。


「最後まで言わせてくれ。お前とこういう間柄になるっていうのは――正直、俺にとっては簡単なことじゃない。署の連中に、俺がゲイだと納得してもらうまで、時間がかかるだろう。……<中略>…… この何ヵ月というもの、お前のことを恋人だと疑われ、必死になって否定してきた。それが突然、否定しなくなったばかりか、一緒に住み始めた。そのことで、かなりキツい目にも遭ってる
(『ロング・ゲイン』P285 ※中略、太字は管理人による)



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ジェイクもマットも警察官なのだけど、二人のセリフから、“警察という組織の中でゲイが置かれる環境”の厳しさが窺える。しんどそうだ……。


ゲイじゃない人物から、その厳しさが語られることもある。マットの上司、ホワイト署長は


「きみとマットの間がどうなっているのかは知らない――知らないし、気にもしていない。けれども、これだけは言っておきたい。中にはそうじゃない者もいるってな。ここに赴任する前、デンバーに十五年ほど勤務していたが、そこにもゲイの警官はいた。かなり厳しい境遇に置かれていたよ
(『ロング・ゲイン』P237 ※太字は管理人による)



とジャレドに伝えるのだ。うーむ……。


また、何も知らない同僚たちの、無邪気で無神経なジョークや嫌悪が描かれていることもある。


「いい加減にしろよこのホモ野郎!」
同僚の消防士からとんだ声に、レミはぎくりとしたが、本から目は上げなかった。
(『狼の遠き目覚め』P277)



「俺は男といちゃいちゃするのはごめんだってこと。そんなのはゲイのすることだ。気色悪いぜ」
<中略>
男と男がつき合うなんて、俺は想像しただけでぞっとするよ。他人が何をしようと関係ないけど、俺はムリだな」
(『ルームメイト』P140 ※中略、太字は管理人による)



こういうセリフを耳にしたクローゼットのキャラたちは、大体、何でもない風を装いつつ、内心をざわめかせている。ざわつく気持ちを打ち明けたとしたら、先に引用した、ジェイクやマットのセリフになるんじゃないかしら。


ちなみに『狼の遠き目覚め』から引用したゲイ・ジョークについて、レミのほかの同僚がレミに「ムカつかないか?」と聞いてきた時、レミはとっさに「何か自分の表情に出て、自分がゲイだとバレたのか?」と胃が痛くなる思いをしていたのだった。


同僚は、レミにゲイの友人(チェイのこと)がいることを思いやって心配してくれていたというオチなのだけど――そういう他人の優しい気持ちにも、一瞬とはいえビクついてしまうなんて、切ない。


M/M小説といえど、ゲイに対する“周りの目”や、それに脅えるキャラクターがしっかり描かれているのは、それだけそういうことが身近なことで、無視することが難しいということかもしれないなぁ……と思う。


ま、一方では、ストーリーを展開させるための動機やトリガーとして、うまく作用するという側面もあるのかも、とも思っているのだけど。


続きます。


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Tags:  BL N/M 複数レビュー ゲイ カミングアウト クローゼット

Comment 1

2015.09.21
Mon
22:52

lucinda”Mさま拍手&コメントありがとうございます” #-

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拍手コメントRES

>06/11 02:05 Mさま

コメントもいただいたのに、3ヵ月以上放置という失礼をお許しください。
いつもありがとうございます。
ここをご覧になるかどうかはわからないですが、お変わりないでしょうか?

『ダウントンアビー』、ずーーーーーっと見損ね、結局見られないまま終わったんですよ~!
そんな設定があったなんて…!
信じている神様から「罪悪」と言い渡されてしまうのは、一神教信徒じゃない私には想像できないほどの衝撃なんだろうなぁと思います。
イギリスは同性愛を罰する法律もほんの数十年前までありましたし…。うーん、Mさまのコメントを拝見すると、見損ねたのが本当に惜しいです、ドラマ…!機会を見つけたら絶対みます…!

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