【海外M/M小説で考えた】ぶつけられる嫌悪、そして拒絶

 03,2015 07:34
これまで読んだM/M小説の中で、ゲイであることに拒絶感や嫌悪感を直接ぶつけられた印象のある主人公は、チェイトン(『狼を狩る法則』)とジャレド(『ロング・ゲイン』)だ。


チェイトンは、親しい友人・レミ(『狼の遠き目覚め』)から、ジャレドは勉強を教えている高校生たちの保護者の一部やマットの同僚から、それぞれ嫌悪感を示され、心ない言葉をぶつけられる。


でも実は、“読んでいて辛い”ほど追いつめられるのは主人公自身ではなく、大抵、主人公の恋人か、主人公の周辺にいる人物。


同性を恋人にした友人に無礼な態度を取っていたレミは、シリーズ作品『狼を狩る法則』で、ゲイということで過去、父親から酷い暴力を受け抑圧されていたことが明らかになる。


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人狼の私立探偵・ジェイクの伴侶、レミは父親・ダークの暴力によって支配されていた。普版段は鼻っ柱の強い彼が、父親の前では萎縮して何も言えなくなってしまう。メイトのそんな姿にジェイクの胸は締め付けられる。レミの心を自由に解き放ちたい。その一方でジェイクはレミの存在に狂おしいほどの支配欲をかきたてられてゆく。そんなジェイクの思いに包まれたレミは、勇気を出して封印していた記憶と向き合う。それは目を背けたくなるような悪夢のような記憶だった―。



もともと暴力的だった父親だが、レミにボーイフレンドがいると知るや、こっそりと逢瀬を楽しんでいたレミとボーイフレンドをめった打ちにし、ボーイフレンドを殺害してしまうのだ。


レミもひどい重症を負い、ボーイフレンドを失ったショックで事件の記憶を封印してしまい、ジェイクと恋人になることでようやくそのことを思い出す。


『狼を狩る法則』ではイケ好かない、感じ悪いヤツだったレミだけど、『狼の遠き目覚め』を読むと、あんなひどい父親のもと、よくがんばって生きてきたよね……! と、一気に抱きしめてあげたいキャラになってしまう。


そして、これまでのところ最も辛いなぁ……と思ったのは、アドリアン・イングリッシュシリーズの第一作『天使の影』で、主人公・アドリアンの周辺で殺人を繰り返していたブルースの過去。


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LAでミステリ専門の書店を営みながら小説を書くアドリアン・イングリッシュの元をふたりの刑事が訪れる。従業員であり友人のロバートが惨殺されたのだ。前日レストランで口論して別れたアドリアンに、殺人課の刑事・リオーダンは疑いの眼差しを向ける。調査に乗り出したアドリアンだったが、犯人の深い憎悪と狂気はやがてアドリアンに向かう。彼の危機に飛び込んで来たのは―!?それぞれの運命と向き合う男たちを描き上げたM/Mロマンスの金字塔、ついに刊行。



雑誌記者として現れたブルースは、実はアドリアンの高校時代の同級生で、同じチェスクラブのメンバー・グラントだった。注目してもらいたくて空回りしてしまうタイプの少年だったグラントは、チェスの大会でイカサマを試みて失敗し、チェスクラブのメンバーたちから酷いリンチを受ける。毛をそられ、女物の服を着させられて化粧された写真を学校中にバラ撒かれるというリンチを。


ちなみにこの一連の事件の時、アドリアンは病気で休学していたので、何にも関わっておらず、事件のことを知らなかった。


その後グラントは転校し、自殺を図り、精神病院に入れられる。しかも両親からは、世間的に死んだことにされるというとどめを刺されて。


物語の終盤、アドリアンは、グラントが両親からゲイであることを受け入れてもらえなかったことを知る。


同級生たちが、グラントがゲイだと知っていたのかどうかはわからないが、チェスクラブの顧問だった教師は、「子供というものは残酷なものだ」と、グラントが受けた暴力について語る。


まあ、たとえ知らなかったとしても、“侮辱の形”として“男に女物の服を着せ化粧をして嘲笑う”ことが成り立つということに、薄ら寒さを感じるけれど。


グラントは恐ろしい殺人犯だけど、彼の過去が明らかになると、ただの“不気味で憎々しい犯罪者”ではなくなり、憐れみと同情、というか気の毒さを感じずにはいられない。そりゃグラントは、ちょっとウザい感じの子供だったかもしれないけど、あれほどまで痛めつけられなければいけなかったかというと……どんより。


ゲイ(男同士・女同士関わらず)だということを、周りに受けれてもらえないことは、辛い。


別に“そうなろう”と思ってなったわけではなく、ナチュラルボーンでどうにもならないことを拒絶されたり嫌悪されたりしたら――そればかりか、法や神の名の下で罰せられたり、矯正しようとされたりしたら――。


恐怖と絶望で、身動きが取れなくなりそうだよ、わたしだったら。


だから、M/M小説でクローゼット・ゲイであるキャラたちを、というか世間のカムアウトしていないゲイたちを、一概に批判する気になれない。


というわけで、次はクローゼットに閉じこもっている主人公の恋人たち(一部除く)をピックアップ。


続きます。


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Tags: BL N/M 複数レビュー ゲイ カミングアウト

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