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戸惑いの流行―オメガバースについて考えてみた[3]

lucinda

タイトルでお気づきの方もいらっしゃると思いますが、今回のエントリーは“オメガバース”に批判的な内容を含みます。なにとぞご了承ください。


二次創作でのオメガバースには萌えを感じない――と実感したわたしだが、“オメガバースが人気”という現象は、とても興味深いことだなぁと思っている。


二次のオメガバース設定作品をいくつか読んだだけだけど、[2]で書いた“男女の生理的な関係を持ちこみ、子供の存在を押し付けているんじゃないの?”という抵抗感のほかに、思わず考えずにはいられなかったことをまとめてみた。


■受け入れるしかない運命と本能

オメガバースの“性”――アルファ・ベータ・オメガは、“そういう性として生まれた”のだから、その性としての運命は覆せない。
その他大勢的なベータ(人狼モノでは副官ポジションのようだけど)はともかく、アルファは生まれつきのエリートでリーダー的気質を持ち、地位も高くて人々から崇められるような存在。それに対してオメガは子供を生み育てるが、地位が低く差別される存在だ。


ここに「え、なんで? ボンクラなアルファがいるんじゃないの?」とか「なんでオメガは差別されなきゃいけないの?」とかいった疑問の差し挟まれる余地はない。作家の設定アレンジによって、仮にボンクラなアルファや、差別されないオメガが登場する作品があったとしても、それは今のところ、あくまでも作家によるバリエーションにすぎない。


虐げられ、辛い思いをするのも「そういう性に生まれついた運命だから」、リーダーとして嘱望されつつ、実は苦しんでいたとしても「そういう性に生まれついた運命だから」仕方ないじゃない! と、甘んじて受け入れるしかない。


また、発情期のオメガに引き寄せられて、アルファやベータがオメガを襲ってしまうのも、“本能”ゆえ抗えないから仕方ないということになっている。


こうした設定が、努力でどうにかなるものではなく、学習などによってコントロールできるものでもなく、“人知を超えた、どうにもならないデフォルト設定”であるのが、わたしのオメガバースへのモヤモヤ感の素だと思うのだけど――。


もしかしたら、ここ数年の「謎の存在によって不条理な暴力や差別にさらされるのも、運命だから受け入れるしかない」というような、救いのなさそうな設定のマンガや小説が人気な風潮と、ちょっぴり関係があるのかもしれないと思う。そしてそんなマンガや小説が人気なのは、閉塞感漂う社会的な雰囲気とも関係あるのかなぁ……とも思ったりしたのだが――はてさて。


■エロティック、かつロマンスの王道な設定

アルファとオメガが“つがい”になるという設定は、要するに“運命の人と結ばれる”ということで、ロマンスの設定としては実に王道、ド直球だよなぁ……と思う。


しかも、“つがい”は死ぬまで解除されないという強固で確かな関係性らしく、“つがい”になったらアルファもオメガも、基本的に自分の“つがい”としかセ●クスしないという。なんという乙女の夢と希望を強力に支える設定なんでしょう!


また、発情期にフェロモンを発してアルファやベータを引き寄せるオメガは、言わば“魔性の受け”。相手の理性を狂わせるほどの存在は、エロティックな展開には好都合。というか、そもそも発情期があり、その時はセ●クス以外何もできなくなるという設定は、思いっきりエロ重視で展開できる設定だと思う。


ところでわたしが読んだ作品は、攻め×受けは大抵、アルファ×オメガとして描かれているものがほとんどだったのだけど、1作だけ、攻めがベータとして描かれているものがあった。


つまり、この攻めと受けは惹かれあっているのに、攻めがベータなばかりに、どんなに性交しても“つがい”にはなれないという悲恋設定というわけ。こういう捻りのある設定も作れるのか……とちょっぴり感心。


■女性のドリームの投影か?

社会的な地位が低く冷遇されたり蔑ろにされたりするオメガだけど、“つがい”設定のことを考えると、社会的の地位の高いアルファとつがいになれば、アルファとの関係は死ぬまで安泰であり、アルファに愛され保護される、ということになる。


しかも“つがい”が周囲から認められたカップルであると考えると――オメガは、ある種の“女性の理想”に重なるような気がする。ついでにいえば、アルファもオメガも全人口の中では“少数派”という、“選ばれし者”。中二病的ではあるけど、キャラクターや“つがい”の特別感は強まる。


妊娠したオメガをアルファが労わる作品を読みながらむず痒いような気持ちになったのは、「これは作者の理想なんだろうなぁ」と思ったからなんだけど、オメガバース作品はとりわけ、女性のドリームを感じることが多いように思う。エロ重視や、妊娠・育児設定があるからかしら、と思っていたら。


ピクシブ事典の『オメガバース』項目でも参照先として紹介されている、『シ●ー●ック』の海外スラッシュや二次創作が紹介されているサイトで、「オメガバースは女性が男性社会で蒙ってきた不利益や差別も描き込まれている」と説明されていて、なるほど! と腑に落ちる思いがした。


確かに、アルファの子を生むのはオメガだというのに、オメガの社会的地位が低く差別対象であるという理不尽な設定や、発情期のオメガが襲われる恐怖などは、現実の女性が受けたことのあるものだと考えると、ちょっと納得。


とすると、わたしがオメガバース作品に女性のドリームをより強く感じるのも、的外れではないのかも……。


――そんなに小難しく考えなくてもいいじゃね? と自分で自分にツッコミを入れながらも、あれこれ考えずにはいられなかったオメガバース。侮りがたし。


そうそう、pixivを見る限り、オメガバースは圧倒的に小説が多いのも印象的だった。小説の方がオメガバース妄想は捗るのかな。


ところで先日、腐女子の友人たちとスカイプで話をしたのだけど、その時、オメガバースに萌えるのか聞いてみた。すると――


「うーん……。差別意識が強いのが、ちょっと……」


と、みなさん一様に後ろ向き。やっぱりそこ、引っ掛かりますよねぇ……。


「あれは原作崩壊というか、まるっきり別モノじゃん。そこも気になるんだよね」


――それは完全に同意だなぁ。ただオメガバースって、カップリング萌えやキャラ萌えの極みの一つなのかなとも思っているのだけど。


ほとんどが消極的な中、一人だけ「イケるオメガバースと、ダメなオメガバースがある」と、わりと前向きな方がいたので、じゃあどんなオメガバースならイケるのか、聞いてみた。


「なんというか、オメガの苦しみを助けるために、アルファがオメガに手を出すっていう感じなら悪くないなって。“運命の相手”という感じなら読めるかな」


――なるほど。“愛”が感じられるかどうかってところなんでしょうかね。


「樋口美沙緒さんの虫シリーズも、ハイクラスとロウクラスって身分が分かれているけど、オメガバースみたいに、ハイクラスは必ずロウクラスとくっつかないといけないって設定じゃないんだよねぇ」


――樋口美沙緒さんの虫シリーズ! わたしが読みそびれまくっているシリーズだわ……!


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ハイクラス種オオスズメバチ出身の篤郎は、過去に深く傷つけた義理の兄・郁への罪悪感から立ち直れず、幸せになってはいけないと自分を責め続けて生きていた。そんなある日、以前の篤郎を知り尽くしたヘラクレスオオカブト出身の兜と再会する。今は有名政治家の秘書をしているという博愛主義の兜。こちらを軽蔑しているはずなのに、なぜかつきまとわれ優しくされて、篤郎の頑なな心は次第にほどけていく。そんな時、篤郎の体に重大な変化があらわれ!?愛と許しの擬人化チックファンタジー登場!!


先月新刊が出ましたよね。そうか、虫シリーズって、そんな身分が設定されているんですね。オメガバースと比べる意味でも、ちょっと読んでみようかな。


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Comments 9

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lucinda※Mさますみません!
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>10/17 23:59 Mさま

うわわわ、こんなに前にコメントをいただいていたのに、気づかないままで…いつも本当にすみません…!

ビックリですよねぇ、このジャンル。まさか子を生むとは思っていなかったので、私ものけぞりました(^_^;)
現実で十分…そのお言葉、よくわかります。現実が少しラクになると、オメガバースも変化するんでしょうかね…気になります。

  • 2014/10/31 (Fri) 15:32
  • REPLY
lucinda※Rさますみません!
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>10/18 15:11のRさま

こんなに前にコメントをいただいていたのに、そのままになっていて、本当に申し訳ございません。
そして、よくご覧いただいているようで…ありがとうございます!

百合でオメガバース設定は、それほど流行ってはいないのでしょうか?

百合業界はそんなことに…(@_@)
でもBLも同じです。たまたま、最新のエントリーが「商業BLヤバいんじゃないの?」な内容ですが、商業BLもある意味、成熟してきたということなのかもしれません。
しかし、廃刊は淋しいですよね…。

またお時間ある時に遊びにいらしてください!
ありがとうございました!

  • 2014/10/31 (Fri) 15:37
  • REPLY
lucinda
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>06/06 15:31の方

コメントありがとうございました!
オメガバースのこの記事、結構いろいろ考えながら書いたので、コメントいただけて嬉しいです。
「昔のやおいがこんな感じ」という一文に、なるほどなぁと思ったことです。この記事を書いた時ほどじゃないですが、オメガバースは定着した様子……。
たまに面白い作品もあるので、今後、いろいろアレンジされたりして、自分好みの作品が出てくる……かも!? という淡い期待をしています。

  • 2016/06/07 (Tue) 23:33
  • REPLY
-

オメガバースに女性の願望やカップルは子を持つべきという価値観が見えるとありますが、逆に記事を書いた方の女性という性への戸惑いや、子供を持つことへのコンプレックスが透けて見えました。
やおい自体が自己投影なのだから、仕方ないと思います。

  • 2016/07/16 (Sat) 20:05
  • REPLY
lucinda
コメントありがとうございました

そうかもしれないですねぇ……。

  • 2016/07/19 (Tue) 04:44
  • REPLY
lucinda
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> 07/29 17:19の方

コメントありがとうございました! 
スッキリしてくださったようで…嬉しいです。
女体化はイケるんですねぇ…そのあたりの違いを探りたい…と、このエントリーをアップしたころは思ってたっけね……(遠い目。

  • 2016/08/04 (Thu) 22:32
  • REPLY
-

検索でたどり着きました。面白い考察ですね。

オメガバースはなかなか面白い流行だと思います。
大体同意なんですけど、少し追加考察を。

・受け(女性役)の側の性的欲求をそういうシステムであると
いうexecuseを使うことでかなり露骨に表現できる

今の時代でも女性の性的な欲求は表現が微妙な問題だと思います。
従来のBLでは行為の描写自体はあっても、受けの性的欲求と
いうのは責めに求められるという以外の形では積極的に
描写されているものは少ないように思います。
オメガバースはこのあたりの微妙な問題をうまく回避できる
世界観だと思います。

・受け(女性役)の側の社会の中での不平等感、
男女関係の中での不平等感を、わかるわかるという程度に
表現できる
かつ
・伝統的な女性の幸せがきちんと叶えられる仕組みがある

女性の大半は男性に不平等感を感じている一方で、
一流大学に行って一流企業に努めて管理職になって家族を
養って・・とか、そういうことが幸福だとは思っていないもの
だと思うんです。
一日9時間10時間、場合によってはそれ以上の
時間をストレスフルな職場で過ごして満員電車に
揺られて通勤している現代女性が、逆に、
伝統的な役割分担の中でもう少しゆったりと誰かに守られて
暮らしたいと思うのも正直なところだと思うんですよ。
オメガバースはそういう女性のホンネの部分をうまく
表しているように思います。

現実のもつ理不尽さや女性にとってのご都合主義を
投影させやすい世界観がオメガバースなんじゃないでしょうか

  • 2016/09/25 (Sun) 14:05
  • REPLY
lucinda
コメントありがとうございます

>2016.09.25 14:05 の方

面白く読んでいただけて、光栄です。
コメント、ありがとうございます!

おっしゃるように、オメガバースは、
「現実のもつ理不尽さや女性にとってのご都合主義を投影させやすい世界観」だと思います。
「ご都合主義」な部分を感じたから、私はモヤモヤ感を感じたのかもしれないなぁと思うところもありますし…。

私自身は、二次でのオメガバースはイマイチ食指が動きませんが、オリジナルでなら、そのあたりのモヤモヤ感(“そのあたり”以外もあるかもですが)をどの程度感じるかどうかがポイントかも、と思いました。

  • 2016/09/27 (Tue) 07:29
  • REPLY
ルンルン
深いですね

オメガバースを調べていたら辿り着きました。
私もpixivで二次小説を書くのですが書く側の意見としては考察されているのが申し訳ないほど女性差別がとか子供がとかそんなに深く考えて書いてないですね〜。単純に設定が面白い、エロをがっつり描写出来るので使用しているだけです。
オメガに対する差別描写・高確率で妊娠・子供を産む(オメガは発情期に強く子供を望むといった設定も人によってはあるようです)と言ったことはオメガバースのそもそもの設定ですのでそのまま使ってるだけですね。ただ、オメガの差別描写ですが書く時代によりますね。差別されている時代なのか、差別が解消されむしろ大切にされている時代なのか。
妊娠したオメガを労わるアルファの描写ですが、自分の好きなキャラですからお互いを労わりあう描写にしますよ。好きなキャラが好きなキャラを虐げているところなんて見たくないし書きたくないです。
受けが攻めを甲斐甲斐しく世話をするというのはキャラの性格に寄るところが大きいかなと思います。攻めでも受けでも尽くしそうな性格・家事スキルで変わってきますね。

価値観は人それぞれなので何とも言えませんが別にカップルには子供が居て当然と考えて書いてる訳ではないのですがね。子供がいるパターンも表現出来るってだけなんですが......。ちょっと悲しいです。

長々と失礼致しました。

  • 2017/09/13 (Wed) 19:20
  • REPLY