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それは「犯罪」ではあるけれど

 06,2006 16:10
最近、ちょっと注目している3人の作家さんたち。読んで、「結構イイ!」と思ったものが、たまたま「…それって、犯罪っすよね?」という要素を共通して含んでいたので、まとめてレビュー。

僕のねむりを醒ます人僕のねむりを醒ます人
沙野 風結子 奈良 千春

茜新社 2005-12-03
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刑事の瀬口雪弥は、連続暴行事件をきっかけに、幼馴染の葛城燿と再会する。雪弥は、燿が連続暴行事件の犯人だと知るが、同時に、燿に監禁されてしまう。

うーん、こう書くと、ただただ「ヤリたいだけ」のストーリーみたいなんだけど、そういうわけでもない。いや、エロシーンはけっこう過激なのだが、なぜ燿が犯罪を犯したのか? なぜ燿は雪弥を監禁したのか? というあたり、巧い加減でロマンチックに、ある程度は納得できるように書かれているので、読後はけっこうサワヤカ。

現実的には、連続暴行事件を働いた燿は逮捕されるべきだし、雪弥は刑事という立場上、燿を逮捕しなくてはいけない。逮捕がムリなら通報とか。でもしない。それは結局のところ「失いたくないほど愛しているから」という、まあ、ちょっと酒でも飲まないと言えないような理由なんだけれど、読んでいて、「カーッ、フザけんな! 読んでられないぜ!」と思わせないのは、素晴らしいと思う。

燿の二重人格の直接的理由が、両親の心中よりも、雪弥を無理矢理犯してしまったというあたりが、まあその、BL的ではないでしょうか。ロマンだね。

沙野風結子さんの作品を初めて読んだのは「蜘蛛の褥」なのだけど、けっこうエロ強めだと思う。しかもわりとワイルド。わたしがダメな要素のひとつとしては、レイプがあり、沙野さんの作品には「無理矢理」というシチュがちょこちょこあるのだけど、嫌悪感を抱かせない程度の強引さで展開しているところが、いいんじゃないでしょうか。

跪いて、永遠の愛を誓う。跪いて、永遠の愛を誓う。
夜光 花 奈良 千春

竹書房 2006-07-22
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橘グループの御曹司、雄太は堕落した生活を送っていたが、ある日、友人たちと、「殺人」という最悪な事件を犯してしまう。彼の従兄であり、父親の秘書である孝彰は、事件をもみ消す代わりに、彼に自分に服従するように言い渡す。

この本を買う前に読んだレビューでは「SMモノ」とか、「ちょっとイタい」とか書かれていたのだが、いやいや、わたしはけっこう好きですよ、これ。これまで読んだ夜光花さんの作品の中では、一番好き。

雄太のわがままぶりが一転、オドオドとした態度になり、孝彰に振り回される。そのあたりがこの作品の面白いところで読みどころだと思う。SMというけれど、やたらに痛みを伴うのかというと、そうでもない。はっきりいって、まあ、その「調教」も、結局のところは、雄太を橘グループの一人前の後継者にするためのもので、そういう意味では、この作品、「ワガママでどうしようもないお坊ちゃま・雄太くんの成長物語」なのだ。

読み進めると、雄太が犯した「殺人」はなかったことがわかるのだが、それまでは、「……いくらなんでも、人を殺したんなら警察に行け」と思うほどの悪行を働いていた雄太。いや、孝彰が事件を隠蔽した時から、それが殺人ではないんだろうなぁ…ということはうすうす気づいていたけれど、それでもねぇ……。

作品紹介では「愛と下克上の物語」とあるのだが、「下克上」は、二重に作用している。

わがままな雄太を克する孝彰。
弱みを握って雄太を翻弄する孝彰を克する雄太。

下克上の下克上で、結局関係性としては元に戻っているのだが、戻った時には濃密な愛が生まれているのだ。だってBLだもん。おかしかったのが、自分を犬扱いした孝彰を揶揄する雄太に、「至福の時でした…」とうっとりと答える孝彰。うーん、この先も、仕事では雄太が孝彰を支配しても、ベッドでは孝彰が雄太を支配するんだろうなぁ。

虜 -とりこ- キャラ文庫虜 -とりこ- キャラ文庫
秀 香穂里 山田 ユギ

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麻薬取締官の藍原は、新種ドラッグを追うなかで、喫茶店で働く神堂と出会う。弟の死と同僚の裏切りに見舞われた藍原は、神堂に慰められ、関係を持つ。しかし神堂は、藍原が追う新種ドラッグのディーラーだった。

リーマンとか、働く男が多数出てくる秀香穂里さんの作品。秀さんの作品も、エロはけっこう多いというか、強めだと思うのだけど、これはそれほどでもない。でも面白い。

藍原と神堂の生い立ちが似通っていて、しかもどちらも悲惨なのだが、それが淡々と語られ、ストーリーに絡まるところがいい。最初に藍原と神堂がセックスをする時、神堂がものすごくやさしく接するのだけど、それがねぇ、二人の生い立ちに照らし合わせると、お互いの傷をいたわり慰めあう感じで、けっこうジーンとくる。BL作品では、「相手を思ってやさしくするセックス」がよく出てくるけど、この作品ほど、そうする理由が納得できるものは、あんまりないんじゃないかな。

ドラッグのディーラーの神堂は、藍原の同僚に裏切られ、その同じ同僚に、藍原も裏切られているわけだが、新種のドラッグの流通が止められたあと、藍原は神堂を告発しない。そりゃ、神堂は藍原の弟にドラッグを売ったわけではないだろうが、流通に関わっていたことは確かなので、告発した方がいいんでないかい?――とは思うのだが。まあ、ちょっと二人の今後に期待っていうところで、よしとするか、と。そんな気持ちになるのだった。

「犯罪」も、ストーリーを面白くするエッセンスとして機能することは承知しているけど、後味が悪いと感じさせられては、やっぱり面白くない。いくらフィクションっていっても、そこに「割り切れなさ」を感じたくないのよ。

そういう意味では、上の3作品、どれも最後は納まりよく、作品の余韻を楽しめる。あ、もちろん、個人的にだけど。わたしは納得できても、人によっては、「……納得できん!」と思う人もいると思う。

ところで、「僕のねむりを醒ます人」と「跪いて、永遠の愛を誓う」の挿絵は奈良千春さんなのだが、えーっと、どっちも表紙から飛ばしてます。とくに「跪いて…」は書店で、レジまで持っていく度胸を試される本だと思う。わたしはネットで買いましたけどね。ええ。

そして、「虜―とりこ―」の挿絵は山田ユギさんなのだが、久しぶりにユギさんの挿絵を見たとき(なにしろ奈良絵に夢中だったので)、なんともいえない華やかさを感じてしまった。それにこの作品の表紙の絵も好き。藍原と神堂の関係性が、ものすごくよく表現されていると思う。奈良絵は艶やかで、ユギ絵は華やか――という印象を、自分の中に勝手に植えつけたわたしなのだった。

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Tags: 沙野風結子 夜光花 秀香穂里 奈良千春 山田ユギ 警検麻ヤ 複数レビュー

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