『ハワイ』 ―想像の余地が広すぎて戸惑った件

 23,2014 23:21
東京国際レズビアン&ゲイ映画祭、2作目はいつもの青山スパイラルホールで見てきた。


この日は、映画祭初参加のあやめさんと一緒だったのだけど、会場を見渡してからあやめさんが言った


「いろんなタイプの人がいるねぇ」


という感想に、言われてみればそうだな、と今さらながらに気が付いた。趣味や馴染みのお店などによって、ファッションやら雰囲気やら、大体似たようなタイプが集まっちゃうことが多いですからね。


そして映画が始まる前にトイレに行ったあやめさんが、帰ってきてから


「いやぁ、“縮図”だった~!!」


と感慨深げに言った言葉に、思わず「ええ!?」と身を乗り出しちゃったよ! あやめさん曰く、トイレもやはり、というか男性だけゆえロビー以上に、さまざまな雰囲気の人が集まっている! という感じだったのだとか。


確かに女性に比べて男性の方が、ファッションはバラエティに富んでました。ハーフパンツ率は異様に高かったけど、全身超カラフルなファッションの人もいれば、着物の人や袴姿の人もいたし。


女性の方は、ビシッとキメている若い娘さんはいたけど、全般的にどこでも見られる感じと変わらないというか――わたしが今のLシーンをよく知らないから、気付いていないだけかもしれないけれど。


さて、1作目が個人的にイマイチ消化不良だったため、「次こそは!」とワクワクしながら臨んだ2作目。


ハワイ
原題:Hawaii
監督:マルコ・ベルヘール 2013年 アルゼンチン


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身寄りを亡くしたマルティンは、幼い頃を過ごした街で偶然幼なじみのエウヘニオと出会い、家の修理を手伝うことになる。夏を共に過ごしながら、まるで子供に戻ったかのように射的や川での水遊びに興じる二人。マルティンが野宿していることを知ったエウヘニオは部屋を貸すことになり、二人はさらに互いを意識するようになる。輝く太陽の下で徐々に変化する幼なじみ同士の関係を、濃密かつ丁寧に描き出したエロティックな一作。(TILGFF公式サイトより)


こちらも、内容紹介から受けるイメージとは違う印象の作品で――


全般的に淡々としすぎていた


といいましょうか。


長いので折りたたみます。

いえ、個人的にね、内容紹介の「濃密かつ丁寧に描き出したエロティックな」の部分から、


――さぞかし二人のイチャイチャ&くんずほぐれずなシーンが、しっかりばっちり入っているんだろうなぁ――


と思っていたのです。だって、アルゼンチンだし! ラテンだし! これまで見たラテン系の作品はそんな感じだったし。


しかし、“濃密かつ丁寧に描き出”されていたのは、マルティンとエウヘニオの、お互いを見つめる視線や、示唆的なふれあいの数々。ことに、エウヘニオの視線はねっとり丁寧に追われていたけれど、でもさぁ……。


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多くを語ることなく、マルティンを追うエウヘニオの視線が熱かった……!


ベッドシーンなんて直截的過ぎデショ、ノンノン! ――とサラッとかわされたような気分。肉汁たっぷりのビーフステーキが出てくると思いきや、見た目にもあっさりとした白身魚の酒蒸しが出てきた感じといいましょうか。


おまけに酒蒸しは超薄味だった。つまり、映画は淡々と、ひたすら淡々と、大きく上がるでも下がるでもなく、マルティンとエウヘニオの、“お互いに意識しつつ様子を窺う日常”が描かれる。


しかもマルティンとエウヘニオは、ステレオタイプの“陽気で積極的なラティーノ”像を見事に裏切って、もどかしいほど内気そのもの。マルティンなんて、痛々しいぐらいに何事にも遠慮がちで、「もっと厚かましくてもいいんじゃないの!?」と、内心ヤジを飛ばしていたほど。


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謙虚で控えめなマルティン。とってもピュアな感じでいいコなのだけど、ちょっと幸薄そうだった。でも後半は幸せそうに見えて何より。


さらにセリフが少なめな上に、編集段階でいろいろなシーンをカットしているらしく、見ているこちらの想像力に委ねられているようでもあった。


――うーむ、まさかラテン映画で小●安二郎みたいな作品を見ることになろうとは……!――


マルティンとエウヘニオは、このまま何も進展せずに物語が終わるのかなぁ……と思っていたら、ある日、エウヘニオが描いた男性のヌードのスケッチをマルティンが偶然に見たことで、小さな変化が訪れる。


エウヘニオにキスをするマルティン。焦ってマルティンを拒否してしまうエウヘニオ。ショックを受けて出ていってしまうマルティン。マルティンを探しながら何やら気持ちを決めたらしいエウヘニオ。やがてマルティンが帰ってきて、仲直りのキス。ジ・エンド。


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ラストの仲直りのシーン。恐らく二人はこれから、良い関係を築いて仲良く暮らすんじゃないかなぁ……と思わせて終わる


しかし一見、ドラマチックに展開したように思えるこの一連のシーンさえも、若干ピッチと温度が上がったかな? 程度で、やはり静かに進行して終わったのだった。


――これはちょっと、ディテールをあやめさんと確認し合わないとスッキリしなーい! 


映画を見終わった後にすぐさまそう思ったわたしだったが、どうやらあやめさんも同じだったらしく、


「なんかさぁ……わかんないとこが多すぎじゃない!?」


と二人して唸った。


「結構、こっちにいろいろ想像させる作りなのかなぁとは思うの。余白が多いというか」


でも、あれはちょっと余白が多すぎですよ! 説明足りなさすぎ! こっちがいろいろと想像したり解釈したりするにも、もう少し情報が欲しいって思いませんでした!?」


――そ、そうね……!


「エウヘニオはあんなにマルティンをロックオンしてたくせに、どうしてあれほどためらってたんだろ」


「確かに。うーん、もしかしたらエウヘニオはマルティンを雇っている側なので、立場的にはマルティンは弱いじゃない? だからエウヘニオはマルティンになかなか言い寄れなかったのかなぁと思ったんだけど」


「なるほどね。しかし直接迫らなかったにしても、わりとわかりやすいアプローチでしたよね。すぐに上半身裸になるし


そう。季節は夏とはいえ、意味もなく車の中でシャツを脱いだりして、ほぼ上半身裸だったのだ、彼らは。


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これは川で泳いだ後のシーンかな。ちょくちょく泳ぐシーンが差し挟まれていた。……サービスショット?<違


「エウヘニオがマルティンを探してる時、マルティンが持ってた本のなかに写真が挟まれてたのを見つけるでしょ? あそこでエウヘニオは、マルティンもゲイだとわかったのかなって思うんだけど


「あ、そっか! うーん、じゃあほんと、ますますお互い気にしてるんだけど遠慮し合ってたってことか」


疑問だったことが少しずつ解明されていくなぁ! これは一人で見ていたら、自宅でネットで調べまくるまで、ずっとモヤモヤしていたに違いない。ありがたや。


だがしかし、次の2点だけは、どうにも結論が出なかったのだった。


その1
「2つのパイナップル」の写真の謎



作中、「パイナップル」という言葉が印象的に用いられるシーンがある。それは、エウヘニオの家で働くようになったマルティンが、エウヘニオに話をしていたシーン。


マルティンは楽しそうにいろいろ話しているのだが、観客に音声は聞こえてこない。なぜなら、エウヘニオが何やら考え事か妄想に浸って、マルティンの話を聞いていないから。


しかし、話の最後にマルティンが言った「二つのパイナップル」というところでエウヘニオは我に返り、何を思ったのか何やらパソコンに書き始める。


後にマルティンが家を出ていった時、彼を探していたエウヘニオは、不意に、マルティンが言った言葉「二つのパイナップル」を思い出し、倉庫を探って、「二つのパイナップル」が映し出されている古いフィルムを見つけ出す。エウヘニオはマルティンがねぐらにしていると思われる空き地にそれを置き、マルティンはそれがきっかけでエウヘニオの元に戻ってくるのだが。


唐突に耳に飛び込んでくる「二つのパイナップル」という言葉が何を暗示しているのか、イマイチはっきりとわからない。


「マルティンが一生懸命話してるのに、エウヘニオが上の空だから、どういう経緯か全然わかんないよね。あのフィルムは、二人が昔ハワイに行ったってことじゃないよね?」


「それは違うんじゃないかなぁ。だってさ、マルティンはどう見ても貧しい家の子って感じだったじゃない?」


「そうすると、昔、マルティンがエウヘニオの家に遊びに行った時、一緒にフィルムを見て、そこに二つのパイナップルの写真があったね、っていう思い出話を、エウヘニオがボンヤリしている間にマルティンはしてたのかな」


「あ、それだよ、きっと! よく二人で昔の思い出話をしてたし」


「そうか……。なんかパイナップルに意味があるのかなと思ったんだけど……。なさそうだよね……」


「うん……。単にパイナップルの写真があったってだけだったのかな……」


そしてパイナップルの写真が、曲がりなりにもマルティンとエウエニオの仲を結ぶきっかけになったので、映画のタイトルは『ハワイ』なんだろうか? ――わからない……!


その2
途中登場した男の謎



「エウヘニオのスケッチがマルティンに見られる前に、男性がやってきたでしょ? あれって、エウヘニオのおじだよね?


「え、そうなの!? わたし、エウヘニオの元カレかと思ってた!


――そう、ほぼ登場人物は二人だけという作品の中に、突然、謎の中年男性がつかの間現れるのだ。「マルティンが好きなんだろ? 彼と寝ないのか? ゲイだって言わないのか?」とエウヘニオを煽り、エウヘニオは不機嫌そうに男の言葉を遮る。


しかし、次のシーンでは、すでにその男性は消えているのだ。いつ帰ったんだ!?


「エウヘニオが、『両親が亡くなって、おじが自分には家を残してくれた』って話してたでしょう? あれって、エウヘニオがゲイだと知ってるから、おじが彼のために家を残してくれたのかなって思ったんだよね。で、結構あからさまにエウヘニオをからかってたのかなと


「なるほど。わたしは、エウヘニオがあの男性に、『子供も連れてくればよかったのに』って皮肉そうに言ってたから、てっきり女性と結婚したらしい元カレかと


エウヘニオは物語の前半あたり、マルティンと再会してから、持ち物を整理し、元カレの結婚式のアルバムやら本やらを処分したのだが、マルティンはアルバムと本(海底二万哩)をこっそり持ち帰り、本のしおり代わりに、アルバムの中の写真を使っていた。


――その写真、元カレの写真かと思ったんだけど、そうじゃなくてエウヘニオの写真だったんだろうか……!? チラッとしか映ってなかったからなぁ……これがDVDなら絶対巻き戻して確認してたよ! そういえばあの男性は、名前さえあたえられてなかったなぁ……。


おじ説、元カレ説、それぞれ違うと断定できないほど作品の余白が多いので、結局真相は藪の中。結論が出ずにモヤモヤするから、酒も進むってもんですよ!


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何時間話しても結論は出なかったのだった――オー・マイ・グッドネス!


「大体、『海底二万哩』も何か意味があるのかなって思ってたんだけど、全然思いつかないでしょ? 別に意味はないのかもしれないけど、いろいろ思わせぶりなんですよね」


――おっしゃるとおり。ちょっとわたしたちの手に余る作品だったってことかなぁ……。しかしあやめさんはよほど消化不良だったらしく


「来年も見に行くから! リベンジしますッ!」


と、早々に来年の映画祭行きの決意表明をしていた。うんうん、行きましょう行きましょう。来年は観賞後スッキリできる作品がいいよね!


ところで、このレビューを書くためにいろいろ見ていたら、オンラインデータベースにて、あの謎の中年男性は「Eugenio's Brother」となっていた。ブラザー!? え、おじでも元カレでもないの!? “uncle”を“brother”と書き間違えたとかじゃなくて!?


――また何がなんだかわかんなくなっちゃったよ……!



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Tags: ゲイ クィア映画 LGBT

Comment 1

2014.08.11
Mon
11:48

lucinda(M様すみません!) #-

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>07/26 01:31 Mさま

すみません、かなり前にコメントをくださったのに、見落としておりました…。本当に申し訳ありません!!

アンケートへのご参加、ありがとうございます!
そしてゲイカップルのお話。結構すごい誤解をしていたりすること、ありますよね。でもMさまは今はそれが誤解や偏見だったと気づかれたわけで、それは誰もがそうできることではないので、素晴らしいことだと思います。

いつもコメントをありがとうございます!
Mさまも、酷暑が続きますので、どうぞお体にお気を付けください!

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