ジャンルの確立が終わりの始まりか?

 11,2014 23:55
「ああ……BLを読む人は、どんどん少なくなっていくんですかねぇ……!」


ある日、調査員2号が机に突っ伏して、悄然と呟いた。


「二次ジャンルは年齢に関係なく、若い子だってたくさん買ってるし、描(書)いてるじゃないですか? けどそこから商業BLの方に流れてこないもんなんでしょうか?


“若い子”などと言っているが、調査員2号も20代、某アンケートに倣えば“ヤング腐女子”である。しかし2号は、以前から「若者の商業BL離れ」を人一倍、憂えていた。若手ながら、誰よりも商業BLの行く末を案じているといってもいいだろう。


二次が好きだからって、オリジナルのBLが好きになるとは限らないからねぇ


と答えるのは、調査員1号。腐界に堕ちて幾星霜、ある時は同人誌を作り、ある時は商業作品のレビューを書き――と、腐に関わるあらゆることを経験してきた、名うてのベテラン調査員だ。


二次畑の人で、商業BLは全然興味ないって人もいるからね。やおい妄想した二次が好きなことと、商業BLを好むことって、必ずしもイコールじゃないと思うな」


などと、一聞すると一瞬混乱しそうなことを呟く1号に続けて、


「そうね……。商業BLとしてジャンルが確立する前は、一般の少女マンガ雑誌の連載の中に何となくゲイゲイしい感じの作品があったじゃない? 例えば『ポーの一族』とか『風と木の詩』とか『日出づる処の天子』とか」


と、調査員3号が話し出す。3号も1号と同様、調査員としての経歴は長い。


「『BANANA FISH』もそうだよね。『絶愛』もあったなぁ」


「そうそう。で、雑誌に載ってたそういう作品をたまたま読んでピンときたら、そこからいろいろ探っていくうちにBLに……っていう流れがあったと思うの」


調査員3号は腕を組み、考えながら慎重に話を続ける。


「でもBL誌ができてから、“BLっぽいもの”はそっちに掲載されるようになって、棲み分けされるようになっちゃったのかなと思うのよね」


「ああ、“BL”というジャンルができる前までは、少女マンガ誌でBLっぽい作品に興味を持つ機会があったのに、ジャンルができてからそれが減ったってことか!」


調査員1号がひらめいたように言うと、調査員3号はうなずく。


「そう。恐らく、BLというジャンルができた背景には、『もっと男同士のアレコレがある作品を読みたい、描(書)きたい!』という欲求があったと思うんだけど、それが逆に、今は孤立化・縮小化を招いているのかもね。皮肉なことだけど」


なるほど……と、全員が調査員3号の鋭い分析に唸った。


ゲイゲイしい作品を読みたい、と自覚している人は最初からBLを読むだろうけど、自覚のない人はBLに触れようがないよね。そもそもそういう作品に萌えるかどうか、触れてみなければわかんないだろうし」


調査員1号のため息交じりの言葉に、その場の雰囲気はさらに重くなる。確かにジャンルが細分化されると、ターゲットも絞り込まれるのは当然か――。


「そういえば」と、ふと思い出したように調査員2号が沈黙を破る。


「電子書籍とかWebでBLを読む若い子は多いって聞いたことがあるんですけど、どうなんですかね?」


すると、それまで黙ってみんなの話を聞いていた調査員4号が勢い込んで言った。


それって、エロさえ読めればいい、って感じらしいですよ! 若い子はとにかく、ストーリーより何より、エロさを求めてるようです!」


――補足しておくと、“若い子”などと言っている調査員4号もまた、まだまだ20代の若手調査員である。


「あー……確かに、Webの作品って、肌色率が高いよね」


「Webだけじゃなくて、リアルの書店で働いている知人から、若い子が買う本はエロ重視だと聞いたことがあります


「そういえば、ネットで読める男女モノも、エロ重視って聞くよね。そういう人たちは、とにかくエロ作品が読みたいわけで、ストーリーとかどうでもいいみたい


と調査員3号が言うと、


「知り合いの、WebでBLを描いているマンガ家も、ストーリーとかキャラ設定とか、王道モノしか描かせてもらえないっていってたなぁ。もちろんエロは必須でね」


調査員1号も、うんうんとうなずきながら付け加える。


「別に私たちだって、エロはいらないとは思わないけど、エロだけじゃなくて、“面白い物語”“読み応えのある物語”を読みたい、という気持ちが強いと思うんだよね。ストーリーがつまらなかったら本を壁に投げたくなったり、するじゃない?」


「わかります! だからいかにもテンプレって感じだと、ガッカリしちゃいますし」


「でもエロ重視の若い子にしてみれば、ストーリーなんかはそこまで重要じゃない。しかも電子書籍とかWebなら、エロ作品を買ったり読んだりするのに人目を気にしなくていい。だから……」


――商業BL作品を読む若年層が減っている(ような気がする)のかも……!


誰もが同じ結論を頭に思い浮かべ、その場にはますます、沈黙が重くのしかかるのだった。



――妙な設定つきまとめで失礼しました。これは4月末にスカイプで腐女子8人と一晩中話した中の、とても印象的だった話題の記録です。


なんとか記録しておきたいと思いつつ、まとめあぐねるうち時間が経ってしまい、発言の詳細の記憶が怪しくなってきたため(自業自得)、発言者は全員“調査員”としてまとめてみました。


ここ最近、周りの腐女子たちと話す中で、よく持ち上がる話題の一つに「商業BLって、この先大丈夫なの?」があり、このブログでも以前、取り上げたことがあるのですが――


いやぁ、ホント、どうなんでしょうね?


停滞、衰退、閉塞感などなど、とにかく“将来への危機感”を感じているのはわたしの周りだけなのか否か――作家さんや版元にしてみれば、「思い過ごし」「余計なお世話」かもしれませんが。


BLから、一般ジャンルに進出していく作家が多くなり、「BLをバカにしてたアンタたち、描/書いてる作家さんの才能にひれ伏せばいい!」と内心、下剋上を果たしたキャラクターのような気分で書店の平台を見る一方(別にわたしが威張ることじゃない)「もうBLでは描/書かれないのかしら」と寂しく思いつつ、「BLは先細っていくのかなぁ」と心配してしまう――


――ここまで書いて気が付きました。


これ、若者の減少と人口の流出を嘆き、過疎地域になる可能性に焦る地方自治体の危機感とめちゃくちゃ似てる、と。


わたしたちの危機感は、根が深そうだわ……!


関連記事

Tags: 腐女子 腐友 オフ

Comment 1

2014.06.20
Fri
14:25

lucinda #-

URL

拍手コメントRES

>06/12 16:13 Tさま

コメントをありがとうございました!
お礼が遅くなってしまって本当にすみません。

なるほど、TLのレーベルって増えてるんですね。確かに、BLじゃない男女モノの方に作家さんが流れているような気配は、私もそこはかとなく感じていました…淋しいですねぇ…。
オリジナルBL人口、友人たちとは結構ヤバいんじゃないかと話しているんですが、実際はどうなんでしょうね。
オリジナルBLがなくなってしまうのは淋しすぎますよね…。

編集 | 返信 | 

Latest Posts