華なるもの (西つるみ)

 10,2013 23:41
書店をブラブラ見回っていて発見した作品。どうみてもわたしの激萌え・院政期が舞台じゃないですか!


書店に行かなかったら、多分発見できなかっただろうと思うと――リアル書店を見まわる楽しみってこういうことだよなぁ……と改めて思う。


華なるもの (Feelコミックス オンブルー)華なるもの (Feelコミックス オンブルー)
西 つるみ

祥伝社 2013-04-25
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「私がすがるなど」 時は平安末期。武家の三男と卑しい出自でありながら、権力者たちの寝所を渡り歩き、上皇の寵人となった高前(たかさき)。美しい成り上がり者として畏怖と羨望の視線を集める高前だったが、有力貴族の御曹司・智実(ともざね)からは素直な好意を寄せられ、その余裕を不愉快に感じる。しかしある日、二人の関係が決定的に変わる事件が起こり───。引けぬ意地と激情が絡み合う切なく底深い大人の恋愛劇、“数年後”を描く掌編を描き下ろし。


表紙の色合いや雰囲気、絵柄がほんわかとしているので、あのドロドロ院政期がどんな風に描かれているのかしら? もしかして、舞台は院生期の貴族社会らしいけど、ドロドロしていないほのぼのストーリーなのかしら?――という懸念は、若干あった。


ま、なにしろわたしが初めて読んだ院政期モノのマンガが、これですからね。


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伝記マンガだけどね! 仲村計さんの絵柄が妖美だわ、内容が愛憎入り乱れまくりだわで、ローティーンのわたしには刺激が強かったわ……!


でもそんな不安を吹き飛ばすかのように、ストーリーはドロッとしていて、ワタシ大歓喜。


いえ、院政期だからといって、何もドロドロしていないといけないってわけじゃありませんよ? ただ、古代から中世へ、貴族支配から武士支配へと時代が大きく転換する時だし、当時の朝廷周辺の入り組んだ人間関係を想像すると、ドラマチックさを期待しちゃうんです、個人的に。戦国時代や幕末にドラマチックさを期待するのに似た感じなんです。


閑話休題。


ストーリーは、美貌の武士の三男・高前と、由緒正しい貴族の御曹司・智実を中心に進む。


高前は自らの美貌を武器にして上皇や有力貴族と関係を持ち、北面武士にまで成り上がる。望みの地位を得るためには、邪魔者ならたとえ自分を愛してくれた有力貴族でも蹴落とす、エゴイスティックで冷徹な男。


対して有力貴族の御曹司ながら、自らすすんで北面武士となった智実は、その家柄と血筋とで当然のごとく将来の地位を約束されている。しかも素直でおおらかで人好きのする男。


出自も性格も対照的な二人。それはストーリーの中で、上皇が高前に向けたセリフでもはっきりと語られる。高前は“犬”で、智実は“太陽”、という比喩で。上皇様ったら、まったくミもフタもないおっしゃりようですこと。


しかし夜伽に随行にと、高前を寵愛していたはずの上皇のこのセリフのおかげで、それまで可愛気のないイヤな男だと思っていた高前のことが、急に哀れに思えてしまう。


智実が高前に好意を寄せていた頃は、高前は疎ましそうな態度を取ったりして、どちらかというと高前の方が優位な立場だったのだけど、智実の幼なじみが高前の計略によって命を失ってからは、心理的にも政治勢力的にも智実が高前を圧倒し、とうとう高前は佐渡に流されることになる。


もともと智実は良家の子息なので、卑しい出自の高前を失脚させるのはわけもないこと。


――というようなことも、上皇が言ってたなぁ……。プライドの高い高前の無念さや、智実に感じていたと思われる特別な感情が想像できるだけに、高前に同情してしまった。高前、ある意味不器用で度の過ぎたツンデレ(デレてなかったけど)だったんだよ、きっと。


まあ、幼なじみを失ってからの智実も、それまでの大らかさが一転して意地を張りまくっていたけどね。


だからこそ、晩年の智実の死に際を描いた掌編が印象深い。


――うむ、なかなか良いドロドロだった! 院政期の複雑な雰囲気が、なんとなくふわっと漂ってるんじゃないかと思うな! 


物語の舞台として、平安時代の雅な貴族社会はともかく、院政期が設定されているものはなかなか見かけない。だからもう、“それらしい雰囲気”の院政期モノBLを読めただけで、幸せ。そりゃまあ、キャラの前髪にモニョモニョするし、智実の佐渡への訪いに「そんなにちょくちょく行けたもんなの?」と疑問に思わないでもないけども。


カバー下のあとがきによると、著者の西つるみさんは雑誌に掲載する作品を考えるために男色文化を調べていて、“悪左府”藤原頼長にクラクラきて、インスピレーションがわいたらしい。


とすると高前は、残念な魔性の受け(勝手に命名)藤原成親あたりが、ちょっとモデルになっているのかしら……と考えるのも楽しい。


できればまたいつか、西さんが描かれた平安もの、院政期ものを読んでみたいなぁと思った。収録されていた雅楽師のような話でもいいので、ぜひとも……!


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Tags: 西つるみ 歴史/時代BL

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