『楽園暮らしはどうですか?』(夕映月子) 『ネオンサイン・アンバー』(おげれつ たなか)[2]
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最近読んだ、作家によるゲイ(セクシャルマイノリティ)への“誠実な想像力”が感じられる作品といえば、これも外せない。ネオンサイン・アンバー (ディアプラス・コミックス)おげれつたなか 新書館 2016-12-29売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools床ごと鼓動しているようなクラブで緒方(おがた)は、客のひとり、サヤと出会った。サヤはいつも違う女を連れた、アンバー色の肌をしたギャル男。正直、苦手なタイプだ...
『楽園暮らしはどうですか?』(夕映月子) 『ネオンサイン・アンバー』(おげれつ たなか)[1]
ここ数年、実際のセクシャルマイノリティの存在を意識した商業BL作品が増えたなぁ……と感じている。いや、もっと前から、この本で述べられているところの“誠実な想像力”が感じられる作品が少しずつ増えてきてはいたけれども、ここ3年くらいは特に、増えてきている気がするのだ。週末に読んだこの作品も、まさにそんな風に感じられたもので、ハッとするような、とても繊細な表現がそこかしこに散りばめられていた。楽園暮らしはどう...
マイ・フェイバリットな“攻め×攻め”の条件は―「友人と寝てはいけない」(鳩村衣杏)、「饒舌に夜を騙れ」(かわい有美子)、「子連れオオカミ」(井上佐藤)
“攻め×攻め”は、わたしが非常に惹きつけられる設定の一つです。どっちが主導権を握るのかにワクワクするとか、互いのプライドのせめぎあいを見守るのが楽しいとか、“ライバル関係”を最も堪能できる気がするとか、リバの期待に胸が高鳴るとか――大体、こんな理由で“攻め×攻め”に惹かれているんだけど、しかし。――どうも、“攻め×攻め”と謳われている作品を読んでも、ピンとこないことが多いのよねぇ……。なんだかモヤモヤしていたとこ...
ハッピー or ビターは馬次第? ― 「純潔契約」(砂床あい) 「G1トライアングル」(いつき朔夜)
庭前日のランチオフの後、ゾロゾロ買い出しに行った書店で、「lucindaさん、これ読んだ? これ、馬モノだよ?」とかりんこさんに教えていただいて買った本。馬モノなら、読まないわけにはいかないですからね、ええ!純潔契約 (ビーボーイノベルズ)砂床 あい 陸裕 千景子 リブレ出版 2012-09-19売り上げランキング : 3210Amazonで詳しく見る by G-Tools「おまえでないといけない。おまえに惚れたからだ」レース中の事故から競技を...
ほがらかなおしゃべりは“変態攻め”の十分条件か?― 「CHERRY」(月村奎)、「たとえばこんな恋のはじまり」(小林典雅)
昨年からガシガシと読み始めた月村奎作品(でも高校生が主人公の作品は除く)。“朝チュンの作家さん”というイメージが強くて、シリアス寄りの正統派ラブロマンスな作風なのかなと勝手に想像していた。でも実際に読んでみると、どことなく文章にユーモラスな味わいがあって、わたし好み。そりゃ、ねっとりと抜き差しするエロシーンはないかもしれないけれど、だからといって物足りなさなんて感じない。そんなわけで、新刊のみならず...
切ない幼なじみ―「それが愛だとするならば」(ひのもとうみ)、「ぼうや、もっと鏡みて」(樋口美沙緒)
幼なじみってだけで、どうしてこう切ない物語に仕上がるんだろう……!それが愛だとするならば (ショコラ文庫)ひのもと うみ 小椋 ムク 心交社 2011-08-10売り上げランキング : 2509Amazonで詳しく見る by G-Tools顔もよく仕事も優秀、常に人の中心にいる大崎哲也は、同期の中でも出世頭のエリートコースを歩んでいた。そんな哲也のもとへ、転職のため上京してきたふたつ歳下の幼馴染、野田透が居候する事に。頭が悪く頼りない透を...
変人を娶らば才たけて、みめ麗しく…?「今宵、月の裏側で」(安曇ひかる)、「猫の遊ぶ庭」「猫の遊ぶ庭~気まぐれ者達の楽園~」(かわい有美子)、「街の灯ひとつ」(一穂ミチ)
これまで、自分の近くにいた「変人」と言われていた人たちのことを、思い返してみたけれど、誰もが振り返るような“美人”の変人は、残念ながらいなかったなぁ……などとしんみり感じた作品を、立て続けに読んだ。最初に読んだのは、安曇ひかるさんの法医学者の物語。今宵、月の裏側で (幻冬舎ルチル文庫)安曇 ひかる 麻々原 絵里依 幻冬舎コミックス 2010-04-15売り上げランキング : 20237Amazonで詳しく見る by G-Tools天見悠月は法...
それはオトナの証?-「白雨」(真崎ひかる)、「水に眠る恋」(可南さらさ)
あれは2月のオフ会のこと。「アラフォー以上だからこそしみじみじんわりクるBL」として挙がった作品の一つが、「白雨」(真崎ひかる)だった。白雨 (幻冬舎ルチル文庫)陵 クミコ 幻冬舎コミックス 2008-01-18売り上げランキング : 233498おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools水沢那智の焼菓子店を、夜ひとり訪れる男の子。閉店間際にやってきては必ず「全部」買っていくその子の保護者として現れたのは、水沢のかつての恋...
ディテール比較で作品を楽しむ
前エントリで取り上げたこの2作品。征服者は貴公子に跪く (新書館ディアプラス文庫)金 ひかる 新書館 2009-07-10売り上げランキング : 126637おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools両親、そして財産を失い、先祖代々の居城を手放すことになったパウル。ところが、契約書にサインを済ませたとき、売却先である日本のホテルチェーンから来た牟田は、かすかな笑みを浮かべて告げたのだ。「あなたも込みで買ったのですよ」と。...
イラつきの境界線―「シンプルライン」(杉原理生)、「堕天使の背骨」(鳩村衣杏)
BLを読んでいると、「ん? この設定(or展開orシチュ)はどっかで読んだことあるぞ?」と思うことがたまにある。まあ、テンプレと揶揄されるBLの、その中でもより多くの読者に支持されそうなストーリーが書店に並んでいるだろうことを考えると、バリエーションにも自ずと制限ができてくるものなのかもしれないけれど。さて、部屋を片付けていて掘り起こした作品の一つ、杉原理生さんの「シンプルライン」。杉原作品は概ね心の中に...