戦隊ものノスタルジー
最初は仕事の話をちらほらしていたのだが、そのうち、なぜか子ども時代に見た戦隊モノの話になだれ込んでしまった。
きっかけは、今となってはもはや思い出せないけれど、デンジマンだったと思う。「デンジマンって、けっこうカッコよかったのよねー」「歌はわたし、今でも歌えるよ」と、vivian先輩とわたし。「デン、デンジマン♪」と口ずさみはじめたのを横目で見ながら、同僚Tは眉を顰めて言った。
「わたし、デンジマンって見た記憶がないわ。ゴレンジャーも実は見た覚えがないのよね」
「あー、だってゴレンジャーは、わたしたちが小学校上がる前だもの。Tは覚えてなくて当然じゃない? ね、先輩?」
「そうそう。わたし、モモレンジャーが好きでさー。戦隊モノゴッコをする時、モモレンジャーがやりたくてやりたくて。そうしたら『モモレンジャーのポーズがマネできたらやらせてやる』って言われて、必死で覚えたのよね。モモレンジャーのポーズは、だから当時はカンペキにできたのよ!」
vivian先輩―――。
「でもアオレンジャーがカッコよくてさー。思えば、ナンバー2の立場とか、青がカッコいいと思うようになったのは、ゴレンジャーからのような気がするわ」
子どもなのに、よくそんなことを思ってましたね――わたしなんて、ゴレンジャーごっこはしてましたけど、どうしてもモモレンジャーがやりたい!とか、とくになかったんですよね。キレンジャーだけはイヤでしたけど。いえ、今ならキレンジャーの存在の意義を重く受け止めていますよ。
「ねね、ゴレンジャーのあとにあった、バトルフィーバーって覚えてる?」
と切り出したvivian先輩に、わたしは即座に「もちろん!」とうなずいた。
「バトルジャパンとー、バトルフランスとー、バトルケニアと、あとミス・アメリカだよね? あれ? 4人だっけ?」
「いや、待って? もう一人……バトルコサックっていなかったっけ?」
「あれ? 先輩、待ってください。コサックって、一人国名じゃないですよ? でも、コサックっていた気がする~!」
「でしょでしょ? 『バトルジャパン! バトルフランス! バトルケニア! ミス・アメリカ~♪』って歌があってー。あ、わたし、やっぱり青のバトルフランスが好きだったのよー!!」
またしても往年の戦隊モノの主題歌を口ずさむわたしたちを、ますます冷たい目で見る同僚T。
v「バトルフィーバーのあとは、何が始まったんだっけ?」
l「なんだろう……ウルトラマン80?」
v「それは全然系列が違うわよ! あ、でもわたし、80の長谷川初範は好きだったんだー。タロウの篠田三郎の次に好きになったね」
v「ああ、なんかどっちもインテリ系って感じですよねー!」
大盛り上がりのわたしたち。ますますますドン引きの同僚T。
「何でそんなに知ってるの? わたし、ほんと、全然覚えてないわ」
「だって、Tよりはわたしたち、年上だもん。それにTは一人っ子だけど、わたしたち、弟がいるじゃない? そうしたらそういうの、見るよねー!」
そうなのだ。年の近い男兄弟がいると、どうしても男の子向け番組には、詳しくなってしまいがちなのだ。
「わたしさー、子どものころ、タロウが本当に好きで、タロウのお嫁さんになりたかったのよね。でも子どもながらに、結婚したら、空気のない宇宙でどうやって生活すればいいんだろうって思って父親に聞いたの。そしたらさー、『vivian、結婚したらおまえがウルトラマンになればいいんだよ』って言われて、なるほど!って思ったのよねぇ。だから、タロウと結婚したら、ウルトラの母みたいに、耳の横から銀色のモノが出てくるって思ってたの!」
――子どもの先輩の妄想力もすごいけど、先輩の父上もあっぱれな受け答え。というか、わたしの周りで、本気でウルトラの一族や仮面ライダー系列の方々と結婚したいと思っている人はいなかったので、今さらながら、そのお話、新鮮です。ちなみにわたしは、ウルトラマンレオが好きだった。M78星雲とは違う、獅子座L77星の出身というのにも、アストラという一風変わった名前の弟がいることにも、強烈に惹かれていたのだ。
「あ、いいよねぇ、レオ。鎖で繋がれていた名残りの腕輪が、哀愁をそそるのよね~!」
――うーん、そこまで覚えていらっしゃいましたか、先輩。あ、ちなみにアストラは脚に鎖の跡があるんですよ。
「なんかちょっとさー、バトルフィーバーのメンバーが気になって仕方ないわ。カラオケ行こう、カラオケ! デンジマンの歌も歌いたいー!」
とわめくvivian先輩に連れられて、同僚Tとわたしは近くのカラオケボックスへ。バトルフィーバーの歌が始まってみれば、正解は、
「バトルフランス・バトルコサック・バトルケニア・ミスアメリカ・バトルジャパン」
の順番に、各国(民族)のお返事とともに取り上げられていただった。
「バトルフィーバー、5人だったんですねー、やっぱり。でも先輩、4人の戦隊モノってありませんでしたっけ? ほら、トランプの記号の形を取り入れた……」
「それってゴレンジャーじゃない?」
「えー、違いますよぉー!」
――もはや言うまでもないが、酔っ払い30半ば女2人のことを、同僚Tは、距離を置きつつ、冷めた諦観の目で見守っていた。とはいえ、デンジマンの主題歌は「聴いたことある!」と反応してくれたけれど。そうそう、デンジマンは再放送が何回かされるほど人気だったんだから、どこかでその曲を聴いていても不思議じゃないはずよ、同僚T。
その後も、「●●●って知らない?」「▲▲▲は?」と、いろいろと戦隊モノの名前を引っ張り出してくれたvivian先輩。すみません、もう酔っ払っていて、その名前を覚えていません。
でも、とてもいいサイトを見つけた。わたしが疑問出しした、「トランプの記号を使った戦隊モノ」は、どうやら「ジャッカー電撃隊」のことだったみたい。でも4人ではなく5人だった。しかも「ビッグワン」って、まったく覚えがない。なんだ、このレインボーマンのイトコみたいなヤツは?
ともあれ、
――戦隊ものや、ヒーローものは、自分の子ども時代とセットになって思い出される番組だ――
と、しみじみ思った。だけど覚えているつもりで、案外と記憶があやふやなのが、いかにも子ども時代の思い出という感じで、ちょっぴり切ない。
vivian先輩、今度また、デンジマンの主題歌でも歌いましょう。
