まるで映画を見ているような―「愛の報復」(仔犬飼ジン)「あて馬ライダー」(語シスコ)
「愛の報復」(仔犬飼ジン)と「あて馬ライダー」(語シスコ)は、まさに読み始めたとたん、かつて見た映画を連想してしまったのだった。
長いので折りたたみます。
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「愛の一滴でも、おれに与えて欲しかったよ―」美しき暗殺者・ガエルは、愛していた義兄のオリヴィエに裏切られる。数年後、復讐のために男のもとを訪れるが、実はその裏切りは誰かに仕組まれた策略だった!?渇きにも似た殺意、欲望、誰を信じ、愛すればいいのか、とまどうガエルは…。愛するがゆえに憎む義兄との初めてだが残酷な抱擁は、すべてを奪いつくすように激しく淫らで…。愛と憎しみのクライムラブ。 |
プロローグのタロットカードをめくりあうシーンといい、島でお尋ね者らしい男を見つける導入部といい、頭の中に鮮やかにイメージが立ち上がる感じ。
物語の舞台は、南ヨーロッパ。どうやら血のつながりはないらしい、いわくありげな“兄弟”たち。義父殺害の容疑者・義兄のオリヴィエ(オリ)を追いかける主人公・ガエル。ガエルとオリ、同じく義兄・ダビとの複雑な思惑がからむやりとり。ガエルの子ども時代の事件。オリへのせつない思い。そして義兄弟たちに深く関わる神父。
もうわたしの頭の中では勝手に、ビビッドな色があふれているペドロ・アルモドバル作品が、ウロ覚えのBGMとともに流れまくっていた!
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アルモドバル作品がいろいろ入っているみたい
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最近の作品でいかにもアルモドバルらしい感じがした作品
ガエルたちキャラクターはみんな、わたしの脳内ではグルングルンと巻き舌を駆使しながら前のめり気味にしゃべっていたとも。や、もちろん本からインプットされる言語は日本語なんだけどもね。
義父を殺したのは本当にオリなのか? オリでなければ誰が殺したのか? なぜ義父は殺されたのか?
ストーリーの展開が見えるようで、何もかもがはっきりと明らかになるまで結構焦らされる。ジリジリしつつ、最後まで一気に読めた。
長年の想いが叶ったガエルだけど、自分の幸せに慣れない様子がカワイイ。そんなガエルをみつめるオリが、オヤジらしい余裕とエロさに満ちているような気がするのは、わたしの気のせいかしら?
二人が幸せになったのは本当によかったと思うけど――自業自得とはいえ、ダビの哀れさも忘れられない。
いきなり引き込まれた物語の出だしはもちろん、風景や町の描写がヨーロピアンなムード。わたしの脳内が、アルモドバルチックだと感心しっぱなしだったせいかもしれないけれど、キャラたちの会話も、映画の字幕のようにムダをそぎ落としている感じがいい。
そしてこの作品、海外を舞台にしたBLとしては珍しく、日本人キャラがまったく出てこない。これも、この作品のヨーロピアンムードを強めたのかも。
仔犬養ジンさん、デビュー作もサンフランシスコを舞台にしたミステリー風な作品だったけど、外国の空気を表現するのがお上手だなぁと思った。寡作の人だけど……次回作もきっと読む!
次は待望のカタルンの新作。
裏表紙のあらすじを読んだだけでワクワクしたけのだけど、読み進むうちに、「これは……!」とドキドキしてきた。
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その恋はサプライズなSEXから始まった!! しょーもないづくしの男がキメる運命の一発! 元AV男優、しがないイケメンチンピラ・芹沢ジョー。しかしその日常は、とびきり淫乱なデリヘルボーイ・和希と出会った事で、ドラマティックかつエロティックに大転換…! |
いつも冷めていて、なにごとも達観(諦観?)しているちょっとニヒルな主人公・ジョー。彼と彼がほれてしまった和希をとりまく大勢のクセのある登場人物たち。たたみかけるように展開するストーリー。
――これって……クエンティン・タランティーノの映画みたい!
と読みながら大興奮してしまった。
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クセのある登場人物がたくさん登場。傑作
子どものころ親に虐待されていた、元AV男優で現在チンピラというジョーのハチャメチャな設定も、考えてみればタランティーノ作品っぽい。
ジョーが和希と衝撃的な出会いを果たし(ヤクザの西島に和希をヤれと命じらたジョーが、和希の美貌と体に持っていかれてしまった)、二人がつきあい始めたころまでは、ストーリーはまだわりと、まったりとした感じで進んでいく。
ところが和希をタテに強請られ、それを何とかしようとジョーが知恵を絞り始めるあたりから、ストーリーは徐々にスピードを上げてゆく。クセのあるキャラクターがゾロゾロと登場し始め、こうなったらもう、途中で読むのをやめられない。
ジョーが、和希の元同級生でずっと和希を思い続けている17歳の天才陶芸家・英殿(これがまた「超天国」の主人公みたいなオタクっぽくてよろし)に、名陶芸家の作品のニセモノを作らせ、西島のところに持っていって一世一代ともいうべき大芝居をうつシーンがクライマックス。もうアクセル全開。
でも事態は思わぬ展開を見せ――西島が、「戦国武将が小姓と肉体関係を結んで絆を強めたように、お前とも絆を強めたい」と、ジョーに迫る姿に、思わずフキ出しちゃったよ。
息もつかせぬ、まるで走り抜けるようなスピード感あふれるストーリー展開と、どこかおかしい滑稽なテイスト。そこに、大勢のキャラたちがムダなくストーリーにハマっていくのがすごい。そして、ちょっとシニカルなラストに「やられた!」と脱帽した。もう、物語の世界観が最初から最後まで、破綻なくカッチリと作られている感じ。
語作品ではいつも、キャラのセリフやモノローグにハッと胸を衝かれることがあるのだけど、今回も同じ。ジョーのモノローグ
この業界の奴等はやたらとてめえの身の上話をしたがる奴が多い。…<中略>…人は過去を語ることによって、現在の自分を肯定してもらいたがってるのだろうか? ある意味免罪? それともくだらねー過去でもいい思い出だって変換しちまってるんだろうか? (句読点、中略は管理人) |
に、ズューンときた。そうだよね、ほんと。
同時収録作品も良作。とくに英殿くん、恋がいつか実を結ぶよう、お姉さんは祈ってやみません。
ところで、映画みたい――というつながりで、この動画。Lady Gagaの新作PV「Telephone - feat. Beyonce」。ショートムービーのような傑作!……と思っている、ここ最近のお気に入り動画。
こちらは“Official Clean Version”ということで、放送禁止用語にはピー音が入っている。ピー音が入っていないバージョンは、You Tubeにログインするか、ビデオの解説が興味深いこちらをどうぞ。
刑務所に収監されたガガが釈放された後、迎えに来たビヨンセとともにレストランで事件を起こし逃亡する、というストーリー。
ガガとビヨンセはレズビアンカップルという設定で、ガガは収監された刑務所でも、アニキみたいなレズビアンにモーションをかける(かけられてもいるかも)。
このビデオのハチャメチャさ加減もタランティーノ作品っぽいのかもしれないけれど、わたしはどちらかというと、「テルマ&ルイーズ」や「バウンド」を連想してしまった。主役がレズビアンカップルだからかしら!?
反社会的な行為をして逃亡しながら、どこか爽やか。ちょっと80年代っぽい疾走感あふれる歌とロードムービー的なストーリーがピッタリ合っていると思う。
ビデオの中では、衣装やメイク、車などに黄色がとても印象的に使われている。黄色って、キリスト教文化圏では“裏切り”を表すともいわれているらしいのだけど(一方で肯定的な意味もある)、何かの暗喩なのかなぁと深読みしてしまった。
タバコてんこ盛りなサングラスやカーラー代わりに巻いている空き缶、電話型の髪型、やりすぎなメイクなど、ガガたんのセンスも相変わらず楽しい。
空き缶巻いてます
厨房でのダンスシーン、バックダンサーのお兄さんたちの濃ゆさと妖艶さがたまりません。
バックダンサーの兄さん(ネエさん?)たちから目が離せないったら!
もちろん、レディー・ガガとビヨンセという、いつも全力なパフォーマンスを見せてくれる二人のダンスも見ごたえがある。
今回のダンスも力いっぱい
この二人でまた何かやってくれたらいいのになぁ……。